ワーレン
○ アウグスト ・ ザムエル ・ ワーレン ( August Samuel wahlen )
地名姓。
ノルトライン = ヴェストファーレン州、ザールラント州、ヘッセン州にある、" Wahlen " という町の名前が由来。
あまり一般的でないのか、この苗字を持つ人はドイツには少なく、情報も全くと言っていいほどない。地名由来の名前らしいが、その地名の由来が分からない。" Wahlen " の 単語の意味は「選挙」だが……
恐らく関係があるであろう、" wählen " について書いておく。
" wählen " は 選帝侯 という意味。
選帝侯とは、神聖ローマ帝国の皇帝及び国王を選帝する選挙権を持つ聖職者や封建領主のこと。
由来は、ゲルマン祖語 " *waljaną " 「選ぶ」と、古サクソン語の " willian " 。古英語の " wilja" , 古ノルド語の " villa " , ゴシック " 𐍅𐌹𐌻𐌾𐌰𐌽 " 、印欧祖語 " *welh " の合併。
選帝侯の侯とは侯爵のことではなく、皇帝に従う封建領主「諸侯」のことだったが、時代につれ領主の称号のように扱われるようになった。
調べてみれば " Wahlen " という町のあるヘッセン州には、ヘッセン=カッセル方伯という選帝侯がいた。
ヘッセン=カッセル方伯は、1803年のドイツ領邦の陪臣化に伴い選帝権を獲得し、自らの領土を「ヘッセン選帝侯領 " Kurfürstentum Hessen " 」と改名した。その中でも特に侯に関する場所が、" Wahlen " として地名に残っているのかもしれない。
このように他の地にも選帝侯がいて、彼らの統治する領土に、" Wahlen "という地名が残っているのかもしれない。
追記
中世後期、ノルトライン = ヴェストファーレン州にあるミュンスターで、ミュンヘンとオスナブリュックの自治組織であるライシャフトが市参事会の選挙を行う" Kurherr " を指名するという重要な役割を担ったらしい。