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『僕』を見た。

もし、目の前に、幼い僕が居たなら……。

そう考えたことがある。
それが夢に出てきた。

「ねぇねぇ、みて!わたし、たくさんおえかきしたの!じょうずでしょ?ほめてほめてっ!」

そう言って、今の僕から見たら黒歴史になってしまうイラストを見せてきた。
不器用ながらも、一生懸命描いたのが分かる線画だった。

でも、僕は褒めなかった。
だからと言って、悪くは言わなかった。

──────ただ。

「ごめんね……っ。」

と言って、小さな僕を泣きながら抱きしめたことがある。
小さな僕はきょとんとしていた。

「ねぇ、どうして、あやまるの?わるいこと、しちゃったの?」

純粋な僕には、何も分からないんだ、と僕は分かっていたがそれでも抱きしめて泣いていた。

どんな感情で泣いていたのか、分からない。ただ『悲しかった』『悔しかった』『寂しかった』『苦しかった』『辛かった』……この気持ちが強かったのかもしれない。

「ごめんねっ……。僕のせいで……ごめんね……っ、ごめんね……っ。」

「ねぇ、どうして、ぼく、なの?おんなのこは、わたしってままがいってたよ?」

僕はそれを聞いて、一気に親からあーだこーだ言われた記憶を呼び起こした。

「子供は大人しく言う事を聞きなさい。」
「女の子でしょ、私って言いなさい。」
「勉強しなさい。」
「お行儀が悪い。」
「口出しをするな、言う事を聞け。」

そればかり言われて自由を束縛されていた僕からすると、小さな僕が言った言葉は酷く悲しいものに聞こえた。

「……僕は、僕なんだよ。……それとごめんね……。未来の君が『僕』で……。」

「……?どういうことー???」

何も分からない小さな僕はそう言う。
此処で本当の事を言ったら貴方の夢を壊すかもしれない。
でも、伝えとけば、今のうちに何か行動が出来るかもしれない。
でも……僕は何も言わなかった。

「……おねえちゃん?」

「ごめんね……。」

可愛らしい昔の僕は、もうどこにも居ないんだ。
純粋な僕なんて、もうこの世に存在しないんだ。

僕は『嘘つき』だ。
僕は『フェイクスマイル』の持ち主だ。
僕は『人間不信』だ。
僕は『"私"を失った』んだ。

たまに、違う自分になると、その時の記憶が消える時がある。
僕は多重人格者なのか?
と考えたが、まだ分からないから放置している。

そんな僕だ。
そんな僕が、『その時は"夢を見ていた"自分』に、本当の事なんて言えない。
現実を見せてあげたくない。
守ってあげたかった。

未来の僕がこんな人で、ごめんなさい。

出来るなら、これを伝えたかったが、その前に僕は目が覚めてしまった。

──────

別の日、また夢を見た。

「また嘘ついてるの?」

聞いた事ある声だった。
『僕』だった。

でも違う。
髪は真っ白で瞳も真っ白、服は清純な白色でズボンの男の子っぽい見た目の女の子だった。

僕はその子に酷く見覚えがあった。
僕の『分身のキャラ』だった。

「……え、命生(めい)……???」

「命生は君だろう?僕に名前はない。……それより、また嘘をついているのかい?」

「……嘘ってなに?僕はいつも通りに生きているだけだよ……。」

真っ白な僕は、酷く恐ろしい笑顔を浮かべて、くすっ、と笑った。

「その『いつも通り』が『嘘』なのさ。家族にも友達にもネットの世界のお友達にも、唯一の親友にも、伝えてない事はあるだろう?」

「……何を言ってるの?」

真っ白な僕は笑顔でこう言った。

「この『嘘つき』……。」

僕は黙り込んだ。
それと同時に否定したい僕が居て、涙が溢れてきた。

「___残念だね。失望したよ。可哀想な現実の僕。いつまで『仮面』を被るつもりなんだい???」

僕は少し心が割れたような気がした。

「は???『仮面』……?お前は何を言ってるんだ?」

僕は涙しながら、笑いながら口調を変えて話し出した。
真っ白な僕はそれを見て、くすくすと笑い出した。

「あれ?割れてきた???あはっ、『本性』を表しなよ?君がどれだけ『嘘をついてきた』のか分かるから。」

真っ白な僕は今にでも僕と口付けそうな所までの距離でそう言った。
そして変わらずの笑顔だった。

「___お前は誰だ……?」

僕はそう言った。
真っ白な僕は笑うと小さく僕に口付ける。

「僕に名前はない。さっきも言っただろう?でもこれなら言えるよ。僕は『最低で最悪な君』なんだよ。」

僕の頬を愛撫しながら、愛しげに笑っているが怖く見えた。

「僕が教えてあげる。君がどれだけ『罪を犯した』のか、そしてどれだけ『嘘をついてきた』のか。そして『僕の在り方』を教えてやろう。」

「は?君は、何を言って……。」

「ふふ、さてと、また近いうちに会いに行くよ。その時は『僕』という君の分身を『キャラ』の存在にしておくれ。そして何か物語を創りなさい。その時に逢いに来てやろう。」

そう言って、真っ白な僕は微笑むと、僕は真っ白な光に視界を奪われた。

気が付けば目を覚ましていた。
その時の僕は風邪を引いていて寝込んでいた。
長い夢だった。
目が覚めた瞬間、咳が酷く、熱のせいで頭が痛かった。


──────


今に至って、熱はなくなり、咳き込むだけになったけど、あの時の僕の事は忘れられない。

僕の中で勝手に、『僕の全て』が『真っ白な僕』になったと思い込んでいる。
僕の創作で例える『偽者(にせもの)』だ。

あれから僕は信用出来るネットの世界のお友達と自分をメインに出す創作を創り出した。

あの『最低で最悪な僕』が主役だ。

もう一人の僕が見えてしまった。
そう思ってしまった瞬間だった。

今度、お前に会ったら『僕』だから、『嘘つき』なのは分かってるから黙れって言ってこよう。
そして、呪ってやろう。

僕は、誰も要らない。

本当ならお友達なんて要らないって思っていた僕が、友達を求めて生きるようになり、誰かが居なければ寂しいと思える体になったから、僕ばかりを殺そうとするお前を殺してやる。

僕は孤独は嫌いだからね。

未来の僕、見てるかな。
これは昔、君に起きたことなんだ。

これだけを言わせて。

『貴方を呪いました』

そして、今度『偽者』の僕に会ったらこう告げてやろう。

『それでも、これは『僕の人生』だ。』

と──────。

そして、こんな僕がこの世界に生まれてきてごめんなさい、と──────。


P.S.

最近は、もう一人の自分が出てくるとか、そんな話を聞いた。
悪いけど、コメントさせないでもらったよ。
何故かって?
僕はね、こういうのには、コメントしないって決めてるから。
余計な事言えば、壊れるだろう?
わざわざ光に進むとか、大袈裟な表現は、僕は好まないんだ。
「前へ進む」の方が個人的に好む。
「どうして生きる?」とかは言われたことがあるけど、光に進む、それって、未来へ歩むって言いたいんだと思う。
表現は分かる。
別に悪口を言ってる訳では無いよ。

ただ、僕のせいで壊したら、僕が犯罪者になるから、何も言わないでいるだけだ。

それに関してはごめんなさい。

でももう一人の自分はそんな軽々しく出てない、ってことだけは伝えておくよ。
経験者は語るってやつだね。

それと、その子と無事、向き合えることを祈っているよ。

そして、もう一人の君へ。

壊せるなら壊してごらん???
良いよ、僕を壊しても。
後悔するよ。

僕は『壊れすぎてもう壊れるところがない』ってことを、実感しろ。

それでも壊せたら褒めてあげる。
僕を壊して《殺して》くれてありがとう、ってね。

そう、呪ってからね。
綺麗に呪い殺してからそう言って褒めてあげるよ。

なんでかって?
僕や君の本当の気持ちを裏切ることになるからね。

教えてあげる。

闇の存在って、本当の気持ちには欠かせないものなんだ。
引き摺り殺してみなよ。
それでも、本当の気持ちって揺るがないんだ。
気持ちは動かないだけで、行動が変わることだってある。

闇って表現もそもそも魔法以外は大っ嫌いなんだけどね。
でも良いよ、好みは人それぞれだ。

それでも、本当の気持ちを変えようとしたり、僕を壊すと言う勇気は君にあるかい?

同じ人だからね。
残念だけど、君には無理だと僕は断言してやろう。
同じ人って、そんな行動は変わらないはずだよ。
それにもう一人の自分なんて相当出ないし、軽々しく出るものじゃない。
ほら、馬鹿みたいじゃないか。

もし壊したら、精々後悔するといいよ。

それが、君の選択肢ならね。

──────さて、他の人には関係のない事を書いたね。
いつもこんな内容のものだけど、読んでくれてありがとう。

僕の言葉が少しでも君達に届きますように。
さようなら。

2023.08.26の僕より。

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