少女と幸せと…

「此処は何処だろう?」

一人の少女は、真っ黒な空間の中を歩いていた。
寒くて、でも、暑いような、良く分からない空間の中だった。
少女は、そのまま歩き続ける。
暫くすると、水が垂れるような音がした。
何処からだろう。
少女は、そう思いながら、音の方へ進んでいく。
音の方へ進む度、何故か、寒気がより強くなったような気がした。
少女は、顔を顰めながら歩く。
そこで見たのは……。

『少女に良く似た"幼い少女"』だった。

その少女は、無表情だった。
あたかも、全てに失望してるかのような、死んでるような顔だった。
幼い少女は、少女に気付く事なく、何も無い真っ黒な空間の先を見ている。
少女は不思議に思い、声をかけてみた。
「ねぇ、君は誰?」
幼い少女は、声でようやく、少女が居た事に気が付いた。
「……おねえちゃん、だれ?」
幼い少女は、無表情でそう答えた。
声が少女と似ていた。
幼い少女は、小さな足で、少女の元へ歩き出した。
少女は、幼い少女を静かに見守った。
幼い少女は、少女をじーっと見つめる。
すると、幼い少女は突然、こんな質問をしてきた。

「ねぇ、いま『しあわせ』なの?」

少女は、その質問を聞いて固まった。
「…………『幸せ』?」
「ねぇ、『しあわせ』なの?」
幼い少女は、無表情で聞いてくる。
少女は、なんと答えれば良いのか、全く分からなかった。

『幸せ』なんて、知らないから。
『幸せって何』……?

少女は、幼い少女をじっと見る事しか出来なかった。
すると、幼い少女は、無表情な顔を少し変えて、悲しそうにした。

「そうか……。『しあわせ』じゃないのかな……。ねぇ、『みらいのぼく』は、どうして、『しあわせ』になれないの?」

『未来の僕』という単語を聞いて、少女は驚きの顔を見せた。
どういう事なのだろう。
少女は、またその質問に答えられず、静かに幼い少女を見ていた。
「……いつか、わかるよ。いまは、しらなかったとしても、ぼくは、いつか、『しあわせ』になれる。」
「…………。」
幼い少女は、それだけを言うと、泡となって消えてしまった。

「……『幸せになんてなれるわけが無い』……。」

少女は、一人残った空間の中で、小さく呟いた。
その瞬間……。

少女は、夢から覚めた。

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