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「弊社社員」以外の顔を持つのが当たり前の社会に #はたらくを自由に

 私が勤める会社は、いまだに年功序列で、副業も禁止。生涯を「我が社だけに滅私奉公する」働き方が当たり前。

 仕事と家庭との両立という意味では、社員が複数の顔を持つのはもちろん認められている。例えばAさんには、弊社の係長としての顔だけではなく、子どもの母としての顔がある。子育てと仕事を両立している社員は多い。

 しかし、家庭生活以外の活動は、本業に支障のない範囲でやることが前提。趣味と仕事を両立するために、残業せずに早く帰ったり、休暇を取ることは好ましくないと思われている。

 私は、学生の頃から、老人ホームでのボランティア活動を続けている。誰かから偉いとほめてもらいたいとか、いつか収入に結び付けたいとか、そんな思いは全然ない。私は昔から、人間の老いに興味があるので、「老い」の現場を見ていたいという、私の趣味なのだ。

 これまで20年近く会社員生活を続けてきて、同僚や上司とボランティア活動について話したことはほとんどないし、休暇を取る時に、「ボランティアに行くんです」などと話せるような雰囲気ではない。

 別会社に勤める友達や、自営業の友達と話すと、我が社とは違って、すごく自由な雰囲気だと感じる。友達のNちゃんは、地元の小さい企業で働いている。社長自ら、「うちの会社はいつ潰れるか分からないから、みんないつでも転職できるように、いろいろやっておいてね」と言うような会社。

 実際にNちゃんは、東日本大震災の直後から、岩手県にボランティアに行っていた。現地の方とすっかり仲良くなった今では、何かお手伝いに行くというより、仲間に会いにいく感覚で、今でも時々岩手に行っている。仕事のスケジュールを調整すれば、「ボランティアに行きますので」と、3日程度の休みは自由に取れる。

 メインの勤務先の会社での仕事以外の活動にも、社員が自分の時間やエネルギーを遠慮なく使えたらいい。社員個人の人生が豊かになるだけでなく、広い意味では会社の経営にもプラスが多いと思うのだ。

 「Nちゃんのつてで、岩手に販路が広がる」というような、短期的な効果はないだろう。でも、Nちゃんはこれまで、災害からの復興の足取りを9年間定点観測してきた。その経験から得た知見は、Nちゃんの精神的な成長に役立っているし、Nちゃんの働き方にもプラスになっているはず。

 フリーランスで働けば、本業をメインの一つに絞らずに、パラレルワークが可能。しかし、本業一社のみで働く会社員は、今の社会ではまだ多いのではないかと思う。

 「私にはいろんな顔があります。どれが「本業」で「副業」か、どれが「仕事」で「趣味」かはっきりしません。」そんな自由で柔軟な「はたらきかた」が当たり前になっていくといい。