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雪溶けのキラキラにさよならを

過去は2度と戻ってこないから。
だから愛おしく感じるんだ。

一度しかないもの。
だから特別に思ってしまう。

その瞬間を共有したあなたと、
そして私と。

ただその瞬間は
後にも先にも2人だけの時間。

暑苦しくて不器用で不完全で美しい。

想像を遥かに超えた
これがしあわせの塊なんだとおもった。

燃えた。
燃え上がった。

瞬きをする間に燃え広がったその炎が
わたしの瞳をオレンジ色に照らした。

無知で純朴な私は目が眩んだ。
そして無我夢中でしがみついた。

右も左もわからない大海に
1人で投げ出されたみたいだった。

暗い海のなかで
目をつぶったまま手足を動かしてもがいた。

真っ暗で重たくて苦しくて
このままどこかへ消えてしまう気がした。

重力が重くのしかかってきた。

もう呼吸がもたない。

そのとき、
ふいに手の先にあたたかいものが触れた。
ぬるく淡く光っていた。

それはわたしを導いてくれた。
あたたかい日差しの差し込む海面へ。


真っ暗だから。
苦しいから。
光があたたかいんだ。

一度きりだから。
同じ「いま」は二度とないから。
しあわせなんだ。

そして二度と来ないその瞬間が
他でもない「いま」なんだ。

魂はこうして燃えるんだ。

さようなら、わたしの青春。

いつまでも心に残る雪に、
暖かい日差しを降らせて溶かしていこう。

日差しに溶ける雪は
キラキラと輝いて眩しいね。

また吸い込まれそうに美しいから、
ありがとうって叫んで振り向かずに進むんだ。


#エッセイ


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