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4〜6人用フリー台本『歩行者天国の悪魔』

<はじめに>

ようこそ初めまして、鳴尾です。
こちら、以前ボイコネで投稿していたシナリオになります。

30分、6人用(男4、女2)フリー台本です。
演者様の性別は問いません。兼ね役も頑張れば可能です。
セリフは、多少であれば言いやすいように変えていただいて構いませんが、なるべくそのままだと嬉しいです。
お芝居としての趣味、商業利用、ご自由に使ってくださってください。
その際、鳴尾の名前添えていただけると嬉しいです。
無断転載や自作発言は悲しくなるのでやめていただけますと幸いです。

もし使用後にこちらのコメントかTwitter等で教えていただければ、できる範囲で聴きに行きたいと思いますので、よかったら教えてください。

<あらすじ>

私立探偵、岩井は親友の広常和佐からストーカー被害の相談を受けていた。

話を聞くため広常の自宅を訪れた岩井は広常の留守を不審に思い、宏恒に電話をかける。すると電話に出たのは広常ではなく、警視庁捜査一課の平塚だった。

<登場人物>

  • 岩井(いわい)

私立探偵。岩井探偵事務所の所長(所員はひとり)。

  • 平塚(ひらつか)

警視庁捜査一課巡査部長。

  • 武 妃花(たけ きっか)

救急外来で働く看護師。和佐の担当看護もしている。

  • 武 姫花(たけ ひめか)

喘息で入院中の少女。頭がよく、事件の犯人に気づいている。

  • 広常 和佐(ひろつね かずさ)

岩井の友人。被害者。セリフはひと言だけです。

  • 医師

姫花の担当医。セリフはひと言だけです。


『歩行者天国の悪魔』


ー歩行者天国ー

ー人混み、人々の話し声、その中を歩くひとつの足音ー


妃花:シミュレーションはばっちり。練習だって何度もした。
妃花:どこにでもある安いナイフを忍ばせて、すれ違いざまに喉を一突き。歩行者天国の人混みの中で止まる人影。滴る鮮血。ゆっくり引き抜いて後ろ手に持ち替え、背中へトドメにもうひと突き。
妃花:呻き声はたくさんの話し声に消える。人の波に流される身体。誰かが異変に気づく頃には、もう手遅れ。


ー悲鳴、救急車の音ー


ー病院 病室ー

ー廊下を走る人、扉の開く音、心電図の音、扉を閉める音ー


岩井:和佐(かずさ)!
妃花:病院ではお静かに。
岩井:すみません。和佐っ、じゃない・・・広常(ひろつね)は?
妃花:一命は取り留めました。

ーため息を吐く岩井ー

妃花:広常さんの親族の方ですか?
岩井:いえ、私は・・・。


ー扉を叩く音、扉の開く音、閉まる音ー

平塚:失礼します。警視庁捜査一課の平塚(ひらつか)です。あなたは、広常和佐さんのご家族ですか?
岩井:いえ、私は彼の友人で、岩井(いわい)といいます。広常に家族はいません。
平塚:またか。
岩井:また、って?
平塚:それは・・・。
岩井:・・・?
妃花:面会は十五分です。何かありましたら、ナースコールをお願いします。
平塚:感謝します。


ー歩く音、扉の開く音、閉まる音ー


岩井:・・・それで、またって?
平塚:実は、広常さんで二十一人目なんです。
岩井:二十一?
平塚:ここ三ヶ月で起きた連続殺人事件の被害者の数です。皆人通りの多い歩行者天国でナイフを刺され、殺された。
岩井:そんな人通りの多いところでの犯行なんて、すぐに犯人が見つかりそうなもんですけど・・・。
平塚:その人の多さが発見を遅らせているんですよ、皮肉なことに。犯人はまず、喉にナイフを突き刺しているんです。それから背中にもう一突き。
岩井:でもそれじゃ辺りに血が飛び散るんじゃ・・・。
平塚:今年は寒波が酷くマフラーをしている人も多いでしょう。あのマフラーが血の吹き出すのを抑えているようなんです。
岩井:ナイフの特徴は?
平塚:・・・なんの変哲もない、どこにでもある安いナイフですよ。あれで犯人を特定するのは不可能です。
岩井:それで犯人が見つからないまま、たった三ヶ月で五十人も殺されたんですか?
平塚:ええ、恥ずかしながら。
岩井:被害者の共通点は?
平塚:・・・えっと、今までの被害者達に友好関係のようなものはありません。唯一の共通点は、皆ここ五年以内に、身寄りを亡くしている、ということです。
岩井:え?
平塚:つまり、犯人は歩行者天国の人混みの中で的確に身寄りのない人間を狙ったということに・・・。
岩井:ちょっと待ってください。広常に家族はいませんが、それはここ五年以内の話ではありません。広常は、孤児院の出なんです。
平塚:・・・。もう少しほかの被害者たちのことも調べてみることにします。また何かあれば連絡します。
岩井:分かりました。これ、名刺です。ここにかけてください。
平塚:ありがとうございます。私も連絡先を教えておきますのでなにかありましたらここにかけてください。ではこれで失礼します。


ー歩く音、扉の開く音、閉まる音、廊下を歩く音ー


妃花:お疲れ様です。
平塚:ええ、どうも。・・・探偵、か。
妃花:・・・。




ー岩井探偵事務所ー

ー掛時計の音ー


岩井:犯人は一体・・・。和佐の首は綺麗だった。刺されたのは腹部だけ。何故だ?何故和佐の首も刺さなかった?和佐を刺した犯人はほかの五十人を殺した犯人と別にして考えるべきか?


ー電話のなる音ー


岩井:・・・?


ー電話に出る音ー


岩井:・・・はい、岩井探偵事務所です。・・・ああ、平塚さん。・・・話、ですか?分かりました。ええ、大丈夫ですよ。どうせ開けてても年中休業状態ですし。・・・はい。・・・はい。では一時間後に。


ー電話の切れる音ー


岩井:・・・。


ー扉の開く音、閉まる音、歩く音ー



ー警察署 応接室ー

ー扉の開く音、閉まる音ー


平塚:おまたせしてすみません。
岩井:いえ、私も今来たところで・・・。
平塚:何か飲みますか?
岩井:いえ、結構です。それより話ってなんですか?
平塚:今日はいくつか質問があってお呼びしました。前回聞きそびれていたんですが、あなたと広常さんのご関係は?
岩井:友人ですよ。まあ、同じ孤児院の出なので、家族のようなものかもしれません。
平塚:今は一緒に住んでいるんですか?
岩井:家が近いだけです。実は最近ストーカー被害にあっていると相談を受けていて、広常の家に何度か通ってたんです。あの日も話をするつもりで家まで行きました。留守だったので彼のスマホに電話をかけたら、病院に繋がり、事の次第を知ったんです。
平塚:そのストーカーについて分かっていることは?
岩井:まだ特には。
平塚:そうですか。他に誰か広常さんが恨みを買っていそうな人物に心当たりはありませんか?
岩井:ない、と思います。
平塚:そうですか。
岩井:犯人はまだ分からないんですね。
平塚:はい。
岩井:被害者の共通点は他に何かありましたか?
平塚:いいえ、やはり身寄りのないということしか・・・。
岩井:・・・。


ー扉の開く音、閉まる音ー


平塚:ありがとうございました。それでは今日のところはこれで。見送りができなくてすみません。
岩井:結構ですよ。。忙しでしょうから。
平塚:失礼。またなにか思い出したら連絡をいただけますか?
岩井:分かりました。


ー遠ざかる足音ー


岩井:心当たりか・・・。まさか、な。



ー病院 病室ー
ー心電図の音ー


岩井:和佐・・・。
妃花:またお見舞いに来てくださったんですか?
岩井:はい。えっと・・・。
妃花:広常さんの担当看護師の武妃花(たけきっか)です。
岩井:名札、その漢字で〝きっか〟って読むんですね。
妃花:はい。妃(きさき)の花(はな)と書いてきっかです。大袈裟な名前でしょう?
岩井:そんな事ないですよ。似合ってます。
妃花:探偵さんはお世辞も上手なんですね。
岩井:・・・?どうして知ってるんですか?
妃花:病院勤務だと物知りになるんですよ。とくにこの救急外来は、ね。
岩井:はあ。
妃花:事件のこと、なにか分かったら教えてくださいね、探偵さん。
岩井:噂話程度ならいいですよ。
妃花:ふふ、楽しみにしています。



ー病院 中庭ー


岩井:はああああ。病室は気が滅入りそうだ。この中庭は落ち着くんだけどなあ。

ーため息を吐く岩井ー

岩井:和佐、目を覚ましてくれよ・・・。
姫花:おじちゃんもひとりぼっちなの?
岩井:え?
姫花:おじちゃん、とっても悲しそうだから。
岩井:も、って?
姫花:おじちゃん、ケンくんに似てる。
岩井:ケンくんって?
姫花:わたしのお友達よ。パパとママが死んじゃったって、泣いてたの。
岩井:そうなんだ。辛いだろうね。
姫花:わたしも途中まで一緒にケンくんのパパとママをお見送りしたのよ。
岩井:途中まで?
姫花:ええ、この病院から出るところまでね。
岩井:ここの救急外来に運ばれてたのか・・・まてよ?
姫花:どうしたの?
岩井:分かったかもしれない!ありがとう、お嬢ちゃん!


ー走って遠ざかる足音ー


医師:こらー!姫花(ひめか)ちゃん、病室から出ちゃダメって言ってるだろう!
姫花:見つかっちゃった。ごめんなさーい!・・・頑張ってね、おじちゃん。


ー電話のコール音ー


岩井:もしもし、平塚さんですか?岩井です。お願いがあるんですけど・・・。



ー病院 屋上ー


岩井:急に病院の屋上なんかへ呼び出してすみません。
妃花:構いませんよ、今日はもう仕事も終わって帰るところでしたし。それで話ってなんです?探偵さん。
岩井:例の連続殺人事件についてお話があります。
妃花:あら、犯人分かったんですか?
岩井:ええ、まだ全ての謎が解けたわけではありませんが・・・。
妃花:まあ、聞かせてくださいな。
岩井:一番の謎は、なんの繋がりもないはずの二十人もの独り身の人間をどうやって見つけたか、でした。
妃花:共通のご友人でも見つかったんですか?
岩井:いいえ、彼ら、彼女らには趣味や友人の共通点はありませんでした。年齢もバラバラ。でもひとつ、共通していることがありました。
妃花:それは?
岩井:皆家族を失っているということ、そして、彼らが親族を見とった場所は、偶然にも皆この病院だったという事です。
妃花:つまり・・・?
岩井:必然的に、怪しいのはこの病院の関係者ということになります。
妃花:そう、なりますね。
岩井:そして最も怪しいのは・・・。
妃花:救急外来の関係者、ということでしょうか?
岩井:え、ええ・・・。
妃花:救急外来に来た患者さんのデータを見れば、親族の有無くらいは分かりますものね。特にその患者さんが亡くなっていれば尚更。
岩井:その通りです。
妃花:探偵さん、私のことを疑っておいでですか?
岩井:あくまでも、捜査上に浮かんだ容疑者のひとりに過ぎません。
妃花:ではどうして私にこの話をしたんです?
岩井:あなたに何か分かったら話すと約束したこともありますが・・・。・・・ここの小児病棟で入院ている武姫花ちゃんという女の子は、あなたの娘ですよね。

妃花:・・・。
岩井:五年前、喘息による発作を起こして救急搬送され、そこから現在に至るまで入院している。
妃花:その話と事件になんの関係が?
岩井:当時の救急外来のかたに聞きました。姫花ちゃんを乗せた救急車が病院へ向かう途中、前方の道で事故が起き、救急車は迂回せざるを得なくなった。そしてそれによって処置が遅れた姫花ちゃんは、呼吸が止まり、一時はかなり危ない状態だった、と。
妃花:そんな話、思い出させないでください。なんの嫌がらせですか。
岩井:すみません。ですがあなたは知っているはずです。その事故の当事者として搬送された人物を。
妃花:・・・。
岩井:広常和佐。事件の二十一番目の被害者にして、最後の被害者です。
妃花:どうして、最後だって分かるんですか?
岩井:言い方は悪いが、所謂〝本命〟ということでしょう?あなたはあの事故さえ起こらなければ、迂回せず真っ直ぐ病院についていれば、姫花ちゃんは今も入院することなく、元気に走り回っていたかもしれないと考えた。そして、復讐を思い立った。
妃花:・・・。
岩井:そういえば一番に殺されたのはあの事故の関係者でしたね。そんなに許せませんか?
妃花:探偵さんって、とっても想像力が豊かなんですね。驚きました。ですが、それはあくまで机上の空論に過ぎないでしょう?
岩井:そうですね、このままでは私はただ妄言を吐くだけのホラ吹きです。ですが例えば・・・遺体にあなたの毛髪が残っていたら?
妃花:偶然と片付けられるでしょう?あの通りは私もよく使いますし。
岩井:そうですね、しかし遺体がそれを握っているのはおかしいでしょう。
妃花:それが本当にあったとでも?
岩井:さて、どうでしょう?
妃花:・・・でもその毛髪は、私のではないわ。
岩井:どうしてそう言いきれるんです?
妃花:それは・・・。
岩井:それは、あなたが事件当時ウイッグを被っていたから、ですよね?
妃花:・・・。
岩井:大胆にも今被っているそれ、お借りしても構いませんか?もし犯人ではないと言い切るのならば。
妃花:構いませんよ。こんなどこにでもあるようなウイッグひとつで犯人を特定できるかは甚だ疑問ですが。
岩井:でもこれで令状がおりて家宅捜査が始まれば、ナイフの一本や二本見つかるでしょう。
妃花:家を調べるまでもないわ。ナイフは職場のロッカーの中に。
岩井:・・・っ。
妃花:・・・探偵さん、あなた凄いのね。いつから疑っていらしたの?
岩井:初めてお会いしたときです。あの部屋の前の廊下は足音が響く。それが聞こえませんでした。あなたは病室を出たあと、扉の前で話を聞いていたんですよね。だから私が探偵だということも知っていた。
妃花:すごいのね、探偵さんって。
岩井:・・・。
妃花:でもね探偵さん。あなたの推理は少しだけ間違ってるわ。
岩井:え?
妃花:そこに隠し持ってる録音レコーダーを破棄してくださる?

岩井:・・・っ。
妃花:勝手に録音するだなんて、あまりに無粋じゃないかしら。
岩井:分かりました。・・・これでいいですか?
妃花:ありがとうございます。
岩井:それで・・・。
妃花:探偵さん、言いましたよね。そんなに許せませんか?って。許せるわけないでしょう。あの場であんなことが起こっていなければ、娘は、姫花は元気で、きっと学校にだって通えていたわ。娘のためだとか、そんな綺麗事を言うつもりはないわ。味わった以上の苦しみを与えないと私の気がすまないの。
岩井:あの事故は、悪いのは和佐じゃない。運転していたのは私で、あいつは助手席にいただけです。だからあいつを恨むのはお門違いですよ。
妃花:ねえ探偵さん。どうして、復讐の相手が、広常和佐さんだって思ったの?
岩井:え?
妃花:言ったでしょう、味わった以上の苦しみを与えないと気がすまないって。大切な人が生死の狭間を彷徨う気持ち、分かった?
岩井:・・・そのために、和佐を狙ったのか?私を、苦しめるために・・・?
妃花:そうよ。そのためなら何だってするわ。不思議に思わなかったかしら。どうして広常さんは私の尾行に気づいたのか、って。
岩井:まさか、わざと気づかれるように跡をつけたとでも?
妃花:本当に秘密裏に殺したいなら気づかれないようにするわ、これまでのように。そのほうがやりやすいでしょう?
岩井:私を誘き寄せるためにわざと和佐に気づかれるような尾行をしたのか。
妃花:言ったでしょう、何だってするって。例え人を殺すことだって厭わないわ。
岩井:本気で言ってるのか。
妃花:ええ。二十人が死んだのも、そのためなのだし。
岩井:・・・っ!
妃花:探偵さん言ったわよね。二十一番目が本命って。本当にその通りなの。
岩井:?
妃花:あら、分かってて言ったんじゃなかったの。前の二十人は練習だって。
岩井:それは・・・。
妃花:確実に成功させる為には、練習は必要不可欠でしょう?
岩井:じゃあ、五十人殺したのは、ただの練習台?恨みなんてなかった・・・?
妃花:そうよ。
岩井:本当に一人も?
妃花:ええ、一人たりとも。
岩井:ふざけるな!命をなんだと思ってる!
妃花:探偵さんって大袈裟ね。
岩井:なんだと?
妃花:何も殺さずにいられる人なんてひとりもいないじゃない。探偵さんだって、虫を殺したことくらいあるでしょう?それに毎日死んだ動物の肉を食べているわよね。
岩井:それとこれとは話が違うだろう!
妃花:何が違うって言うの?命の重さは同じはずよ?私、間違っているかしら?
岩井:狂ってる!あんたは狂ってる!
妃花:分からない人。

ー話しながら岩井に近づく平塚ー


平塚:岩井さん!お待たせしてすみません。例の遺体が握っていた毛髪を・・・って、あなたは、確か看護師の・・・。一体、何があったんですか?
妃花:あら、刑事さん。ご苦労さまです。
平塚:はあ、どうも。

ー岩井にだけ聞こえる声量でこっそりと尋ねる平塚ー

平塚:これどういう状況ですか、岩井さん。
妃花:今ね、事件の話をしていたんです。刑事さんは命の重さってどのくらいだと思いますか?
平塚:え?
岩井:妃花さん。やっぱりあなたの考えは間違ってる。確かに生き物によって命の重さが変わることは無いだろうが、だからといってそれが人を殺していい理由になどなるはずがない!
平塚:え、殺・・・え?
岩井:ましてや復讐の為にだなんて!
妃花:ひとりで失った家族を想いながら涙で枕を濡らすくらいなら、家族のもとへ送ってあげたほうがよほど幸せだと思うけれど。
岩井:人には、悲しみを乗り越えられる強さがある。あなたには分からないかもしれないが。平塚さん、その毛髪は彼女のものです。
平塚:え?そうなんですか?
妃花:ええ、正確には、このウイッグの、ですけれど。
平塚:ウイッグ、だったんですか・・・。
岩井:凶器のナイフは彼女の職場のロッカーです。
平塚:いつの間に・・・。
妃花:ふふ、刑事さんにはお礼を言わなくちゃ。最後まで復讐を完遂できたお礼を。邪魔しないでくれてありがとう。もう復讐は出来たから白状するわ、頭の弱そうな刑事さんにも分かるようにね。ふふっ・・・私が二十一人を手にかけたの。みーんな私が殺したのよ。ふふふふっ。

ーため息を吐く平塚ー


平塚:二十時四十分、連続殺人の容疑で逮捕します。


ー手錠の音ー


岩井:どうして和佐の首は刺さなかったんだ。
妃花:だって刺したら死んでしまうじゃない。
岩井:ならそれ以外の二十人の首を刺したのは何故だ。
妃花:だって万が一生き延びられては困るもの。私のことを覚えているかもしれないでしょ?それに・・・病床が埋まって、うちが受け入れられなくなっては、元も子もないじゃない。
岩井:ふざけんな!
平塚:行きましょう。
妃花:私はあなたのために二十一人をこの手にかけたのよ、探偵さん。分かる?あなたのために二十人が死んで、あなたのために友人が危篤に陥った。素敵ね、探偵さん。
岩井:なんで関係ない人たちまで巻き込むんだ・・・俺だけを狙えよ・・・!
妃花:ああ、その顔が見たかったの。ありがとう探偵さん。
平塚:・・・行きましょう。
妃花:ええ。
岩井:ふざけんな!くそっ・・・!


ーパトカーのサイレンー



ー病院 病室ー

ー心電図の音ー


岩井:和佐、ごめん。俺のせいで。
姫花:その人、死んじゃったの?
岩井:姫花ちゃん!
姫花:おじちゃん、わたしの名前どうして知ってるの?
岩井:あ・・・。
姫花:この人、死んじゃったの?
岩井:ううん、生きてるよ。
姫花:よかった。
岩井:姫花ちゃん、どうしてここに?
姫花:お礼を言いに来たの。
岩井:お礼?
姫花:おじちゃん、ママを止めてくれてありがとう。
岩井:え?
姫花:ママのこと捕まえたの、おじちゃんでしょ?
岩井:うん、ごめん。
姫花:謝らないで。嬉しかったの。ママがこれ以上悪いことしないで済むから。
岩井:知ってたの?全部。
姫花:うん。でも止められなかった。ケンくんも、和佐さんも助けられなかった。
岩井:和佐のこと知ってたの?
姫花:五年前にね、わたしが病院までいくのを、邪魔しちゃってごめんなさいって、和佐さんが謝りに来てたの。それから時々会いに来てくれてたのよ。
岩井:知らなかった・・・。さすが、としか言えないな。
姫花:和佐さんが起きたら教えてね。次はわたしが会いに行くから。
岩井:分かった。
姫花:絶対よ!


ー走り去る音ー


岩井:凄いな、お前は。

ー小さく呻き声を上げる和佐ー

岩井:和佐!



ー病院 中庭ー


岩井:姫花ちゃん、また病室抜け出したの?
姫花:中庭だからセーフよ。
岩井:また先生に怒られちゃうよ。
姫花:おじちゃんいじわるー。
岩井:あのね、姫花ちゃん、話があるんだ。
姫花:どうしたの?おじちゃん。
岩井:姫花ちゃんの先生と和佐と俺で話したんだけどさ、姫花ちゃん、俺たちと一緒に暮らさない?
姫花:和佐さんとおじちゃんと?
岩井:それと沢山の家族も一緒にね。
姫花:・・・?
岩井:俺と和佐が孤児院にいたのは知ってる?
姫花:うん、和佐さんに聞いた。
岩井:和佐は孤児院を卒業したあと、アルバイトでお金を稼いで資格を取って、お世話になった孤児院に就職したんだ。そこで、一緒に暮らさない?ここからはちょっと遠いからお友達には会えなくなっちゃうけど・・・。
姫花:いいの?
岩井:もちろん。絶対後悔させないって約束するよ。だから、どうかな?
姫花:・・・行きたい!

こんにちは、自他共に認めるいかれポンチ鳴尾です。 いかがでしたか? あなたの期待に応えられるよう、これからも良い作品を書き続けますね。