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通り過ぎていく、春

春なのに(自粛ver.)

江沼郁弥の最新の曲のタイトルをTwitterで見て、胸を突かれた。

春。新年度。新しい環境。はじまり。桜。
うららかでおだやかで、あたたかさも丁度よくって、売っているお洋服は淡いカラーばかり。つい浮かれてしまう季節。
なにをするにも理想だけ高い私からしたら、また切り替えて一からやればいいよって自分に言ってあげることのできる、唯一やさしくなれる季節だ。
そんな春が、来たかと思えば同時に通り過ぎていく。そんな感覚と共に私は家にいる。

マスクを付け自転車を漕いで向かった近所のスーパーには、注意書きと消毒液がお出迎え。買い物カゴの持ち手も、お金の受け渡しも、これまで気にかけたことはなかった。でも、こんなご時世だから気にしないといけない。
息苦しい、ただ普通に生活したいだけなのに。

仕方ないのは勿論分かっている。誰も悪くないのだから。誰しもが最善の策を考えて、自分や周りのために仕事をしたり、生活をしている。

でも不安というものは付きまとって大きくなり、消えるアテもない。

恋人がスーパーへ出かけた昼下がり。
江沼郁弥の春なのに(自粛ver.)を耳にした。
彼の歌声はいつも不思議で歌い出した瞬間にとてつもなく刺さるのに、大きくて広くやさしい。洗い物をしようとした手は止まり、言いようのない感情が湧きあがって私の胸のなかで大きくなる。レースのカーテンから覗く薄い青の方を見ているときには、涙が溢れていた。頭の中でメロディーをなぞりながら、茶色のソファの肘置きに涙がぽとぽと吸い込まれていく。

思っていたことばかりだ。

https://note.com/enumafumiya/m/mb8472c6b3c1f

嫌だな こんな春は 
独りになるほど 気づきすぎてしまう
変に明るい歌聴いてもギャップに落ち込んでしまうから
社会からはじかれたみたいな


なにをすればいいのか、どうすればいいのか、分からなくなっている。見えない未来を探して、こわい。

自分の感情を教えてもらったような、そんなきもちになった。不安とこわさ、同じように感じて曲にしてくれる人や共感する人がたくさんいるだろうということに、安心した。私だけじゃない。

自分の感情に気づいて、認める。それができるお守りの曲。江沼さんありがとうございます。