![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/113563603/rectangle_large_type_2_0dc63b67bd291307a120479475e1ade4.jpeg?width=800)
優しかった彼
「車道側は危ないから、女性は歩いちゃダメ」といつも、車道側を歩いてくれていた彼。
そんなことを言われたのは、後にも先にも彼一人。
一緒に夕飯を食べる時、日本酒好きの彼が選ぶ店はいつも、彼の好みの日本酒があるお店だった。
東北出身の彼は、日本酒についてのうんちくなどを語っていたが、もう記憶にも残っていない。
お店に入り、私が,無造作に上着を脱ぎ捨てていたなら、きちんとハンガーにかけてくれた。
お座敷タイプのお店では、靴はきちんと揃えてくれたり、私の履いていたストッキングの先端ラインが、私の足先とあっておらず、直してくれたこともあった。
彼の職場は東京で私は横浜、仕事終わりに待ち合わせをして、夜デートを楽しむことも多かった。
彼の趣味はサッカー、週末の日中は河原での練習や試合が多くて、会うのはやはり、夜が多かった。
その日は珍しく、彼のサッカーの試合を見に午前中からでかけていた。
試合が終わり、帰り支度を終えた彼が、私のもとへと歩み寄ってきた。
そして、私の両肩に手を置き、顔を引き寄せてきた。
えっ、今の時刻、午後2時、
そんなシチュエーションじゃないけれど、恥ずかしいので目は閉じて見た。
しばらくして彼が
「鼻の下の産毛が髭みたいになっているから、剃った方が良いよ」と言ってきた。
男の人からそんなこと言われたのも、後にも先にも彼一人。
そこまで言われても、考えちゃう私がいた。
「剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題」
と心の中で問うてる、私がいる。
毛って一度剃ると、どんどん濃くなるって聞くから、その後、彼と別れた私はあまり、髭を剃ってはいないが、髭を指摘する人はいない。
*******************
山根あきらさんの企画している
青ブラ文学部 「剃るべきか、剃らざるべきか。それが問題だ。」という言葉を使って作ってみました。
始めての試みでして、ショートショートと言っていいのか?ですが、よろしくお願いします。
こういうのは、楽しくて良いですね、今は髭は剃るではなく、抜いています😁
楽しい企画、ありがとうございます!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?