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妊娠19週 せつが教えてくれること【7】

私が泣いているとき、夫は常に隣にいて声をかけ続けてくれた。

大丈夫だよ
ずっとそばにいるよ
一緒にがんばろうね

自分もつらいとき、人に優しく寄り添えるって、すごいことだと思う。
本当は、俺もつらいよって、言いたいと思う。

入院前だったか入院中だったか、夫がこう言った。
「俺は、nmiとずっと二人でもいいよ」
「子どもがいなくても、二人で楽しいことたくさんできるよ」

私に気を遣ったわけではなく、本心だと思う。

私たちは旅行が好きで、コロナ禍でも年に数回は国内旅行に出掛けていた。
もっと言えば、私は一人旅も好きで、コロナ前は一人で海外旅行にも行ったことがある。

月に一回程度は夫婦で飲みにも行くし、休みが合えばいろんなところに出かけ、楽しいことがたくさんあった。

子どもができたら、やはり制限は多くなり、今当たり前にできていることができなくなる。
実際、妊娠中も制限が多く、なかなかやりたいことができないもどかしさを感じていた。

夫婦二人だったらお金も時間も自由に使えるし、二人だからこそできる楽しいこともたくさんある。

そして、夫が一番気にしていたのは、私の身体のこと。
今回の処置や手術のリスクをたくさん聞き、妊娠のリスクを改めて実感した。
女性ばかりが身体を危険に晒すこと、最悪の場合は母親も命を落としかねないこと。
自分は何もできないこと。
分かっていたつもりだったが、全然分かっていなかった。


私は、この夫の言葉を聞き、夫と二人でもいいかもなと思った。

痛い処置をし、産んでも、もう生きてない。
こんな悲しい思い、苦しい思いをして、出産して、何の意味があるんだろう。

せつが産まれてくるまでは、そう思っていた。

だけど、せつがおなかから出てきて姿を見せてくれたとき、世界が変わった。
あぁ、なんて幸せなんだろう。
また産みたい。
私たちの子どもに会いたい。
一緒に過ごしたい。

不思議だった。
数時間前、あんなに痛くて悲しかったのに。
この一瞬で、ここまで心が動くなんて。

私は夫に自分の気持ちを伝えた。
二人で今回のことを乗り越えたら、またチャレンジしたい。
産みたい。

夫は「nmiちゃんがそう言うなら、一緒にがんばろう」と言ってくれた。
子どもがいらないと思ってるわけじゃない。
ただ私のことが心配なだけだからと。

この人と結婚できて良かった。
あなたとなら、これから起こる困難も、一緒に乗り越えていける。
私は心底感謝して、泣きながら笑った。

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