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「才能に頼ってはいけない」という言葉に、長年の疑問が解けた話

「才能に頼るな、才でする仕事だけではだめだ」

そんな言葉のツイートが回ってきて、その言葉の元となる手紙を読んで、ああ、そうだったのか、と腑に落ちたことがある。

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私は産業デザインを教える短大に入学し、2年間勉強して、会社員を経た今はフリーランスでデザインの仕事をしている。

短大では最初の1年、空間デザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザインの3種の基礎を習う。
ひたすら模型を作ったり、製図を引いたり、レタリングをやったり、ありとあらゆる道具の使い方、ものの作り方を勉強するのだ。

山のような課題をこなし、1年近くかけて自分に合うデザインの道はなんなのか、自分のやりたい分野を見極める。

そして、2年に上がる前に、各デザインの専門コースに分かれ、より専門的な勉強をしていき、2年の大半は卒業制作&就職活動という慌ただしい学生生活となる。

私はこの専門コースに分かれる際、グラフィックコースを希望していた。

しかし、基礎コースを終えた後の成績表を見ると、空間とプロダクトの成績はほとんどが「優」なのに、グラフィックはよくて「良」。

私はグラフィックデザインに向いていなかった。
才能がないのだ。

空間とプロダクトの成績がいい理由はわかる。

多分、父の影響と遺伝だ。

父はほぼ一人で家を建てたり、農作業機械を改造しまくるような人間で、車の修理工場の人がどうしたらいいかと相談にくるような人である。

そして私も、数学でも空間図形や展開図などがやたらと得意で、脳内でものを分解してパーツごとの形を把握したり、平面図から立体物を作るのが昔から得意だった。

たぶん、そちらのほうが才能としてはあるのだと思う。

それで、私は当時のグラフィックを担当する先生に相談をした。

「私はグラフィックコースを希望してもいいのでしょうか?」

すると先生は
「グラフィックデザインがやりたくて、わざわざ種子島から上京してきたんだろう? そんな根性があるなら大丈夫だよ」

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いまだにグラフィックデザインを得意だとは思えない。

本当に才能がないと思う。

でもWebデザインで仕事をもらい、食べていけてるので、先生の言うことはただしかったんだ、と思っている。

そして、冒頭の言葉。

先生の真意には、そういった想いも含まれているのかもしれない、と思うことにする。


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