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意味不明小説集

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自分の意味不明小説や、noteで見かけた不条理だったりホラーだったりする、星新一系の意味不明ショートショート(1頁漫画も)をまとめています。
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#ショートストーリー

宇宙大会議(SF)

・・・目が覚めると、真っ白い部屋にいた。 天井は円型のドーム状になっていて、部屋の中央に円卓が置かれている。 僕は円卓の一席に座っていた。 僕以外にも、円卓のそれぞれの席に人が座っていた。 いや、よく見ると彼らは人間じゃなかった。 恐竜のような見た目の鎧を着た生物、スライム状の有機生命体、テレビでよく見かける絵に描いたような宇宙人。 中には、かろうじて人型をした生物もいたけど、全身が真っ赤だった。 他にも奇妙な生物達がテーブルを囲んでいた。 ・・・これは夢だろうか。記憶の最

ウサギとカメとスポンサー

「我がイナバ社は、ウサギの勝利を応援します」  長きに渡る因縁、兎と亀のリベンジマッチが行われようとしていた。その話題性は抜群。両者にはスポンサーがつくことになった。   前回のウサギの敗因を分析した、「イナバ社」は高麗ニンジンで作った眠気覚ましのエナジードリンクを提供すると言い出した。   カメを支援するのは、ネットショッピングの大手として有名な「ウラシマ社」。通気性の良い素材を使いながら、車に引かれても大丈夫な耐久性。従来と比べて10分の1までの軽量化に成功し、収納

自動販売機

 新月の夜、帰り道を歩いていると遠くに明るい光が見えた。やがて向こう側から近づいてきたそれは、自動販売機だった。 「オシゴト オツカレサマデス」 録音されている女性の声で挨拶をされる。そして ピン ポン という音をだして何かを排出した。勢いが強いのか商品の取り出し口を越えてペットボトルが地面に転がる。 「オカネヲイレテクダサイ」 そう言われたものの何が何だか分からない。するとまた同じ音声が繰り返された。 「オカネヲイレテクダサイ」 試しに右足のポケットから財布

分身の術

 巷では忍術が大流行していた。忍術を教えてくれる忍者道場は急増し、私もそれに通っていた。  道場では先生がマンツーマンで様々な忍術を教えてくれる。水遁の術、火遁の術、隠れ身の術、だがどれも私生活で役立つかと言われれば微妙なものばかりだ。いや仕事中にサボる時に、隠れ身術には何度かお世話になってはいるが。  まあそんなことも、今日という日を待ち望んでいた私には些細な問題だった。最後の授業で師匠は言った。 「君も今日で卒業だ。最後に我が流派の秘儀である分身の術を教えてやろう」

見つけて欲しいかくれんぼ

「じゃあいまからわたしが10数えるから、みんな隠れてねー!!」 わっと散らばる子供たち。わたしもその1人だった。 ようし、ここなら絶対見つからないぞ。 「〇〇ちゃんみっけ!」「〇〇くんみっけ!」 他の子たちがどんどん見つかる声がする。大丈夫、ここなら見つからない。大丈夫。 「みつはるくん、みっけ!」 「うわー、みつかった!」 「みんなすぐ見つかっちゃったね。」 「また明日もやろうね!」 えっ、待って。まだわたし、隠れてるのに…。 しばらくして静かになった。

職業選択の不自由 (1分小説)

おそれていた「職業選択の不自由案」が、可決された。 政府は、最近「国内総生産、世界第2位奪還」に必死なんだ。 『銀行員の家庭に生まれた子供は、銀行員。八百屋の子供は、八百屋。バレエリーナの子供は、バレエリーナ。 今後、反社勢力以外の、すべての職業を世襲制にします。 親から英才教育を受けた子供たちは、将来に必要な技術を10代で吸収し、やがて、それは我が国の強力な経済力に…』 テレビで、首相の会見を見ていた兄は、怒りをあらわにした。 「やめてくれよな。歌舞伎界に生まれ