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駅前商店街の十字路にある、8台分のスペースの月極駐車場。 ここには姿の見えない住人がいる。 木島の人生は、婚約者の女性の実家で、25歳の誕生日を祝ってもらった日に終わった。 気が付いたら駐車場で、花と線香に手を合わせる家族や友人の姿を眺めていた。声をかけても触れようとしても、誰も気づかない。 彼らの話から、酒に酔って歩いていた所を車にはねられ、この駐車場で息絶えたことを知った。 死んだら無になると思っていた木島だが、絶命した地に留まり続ける『地縛霊』となっていることに
「キャッ、キャッ、キャッ」 ヤツが来た。 また啼いている。私を挑発しているのだ。カーテンを開けてオレを視ろ、と。 その手に乗るものか。 私はベッドに横たわったまま目を固く閉じ、下腹に意識を下ろして、長く息を吐く。 そして深々と吸い込む。これ以上吸えないところまで吸い込んだら、また細く長く息を吐き、吐ききってから、ゆっくり吸い込む。いや、吸い込もうとする。 苦しい。肺に空気が入ってこない。 「キャッ、キャッ、キャッ」 息を吸わなくては。 ヤツにしてやられたくない