青い森鉄道
三沢駅から、青い森鉄道で青森に向かう。
一時間と少し、各駅停車で急がずの旅。
隣の女性は、
マスクからのぞく肌や手の感じからして、
70代くらいであろうか。
織り良く仕立てられた
薄いグレーのロングコートを着ている。
帽子とマフラーは、紫色のグラデーションで編まれたニット。
上品で素敵な色合いを
普段使いにさりげなく着ている風が素敵。
暗い色調のスリムジーンズに、
ナイキの✔︎が効いている。
その女性。
ふと腕時計を見たかと思うと、
人差し指を小さく動かした。
Apple Watchだ。
なんと、ハイカラな。
私も見習いたいものだとひとりごつ。
ピーッ
やや高めな音域の警笛を合図に、
列車はトンネルに入る。
真っ暗になった車内。
ここはひとつシンクロしてみようかと、
目をつむってみることにした。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、キーッ‥‥
心地よさと悪さの狭間にあるような音。
音階のようにして
足の裏から振動が伝わってくる。
電車は程なくトンネルを抜け、
まだ雪の溶け残る山間を
得意のリズムを刻みながら走り抜けていく。
一番後ろの車窓から、
緩やかにカーブした線路が
しっかりと道筋を刻んでいるのが分かる。
その軌跡は、力強く、優しく、
何よりも見る者の心に安定をもたらす。
そうか、
人生に迷うのは、
これまで歩んで来た道を見失うからなのかもしれない。
漠然と思い、
細くなる2本の線に目をこらした。
さてと。
到着まであと二駅。
ここまでの道のりを心に刻み、
これから待っている
未知なるものへの祝福が
私の心を満たしていったのだった。
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