バイデン氏が一気に躍進。スーパー・チューズデーで何が起きたのか
今日は、アメリカ大統領選挙の候補者指名争いで最も多くの州が予備選挙を同時におこなうスーパー・チューズデーでした。
スーパー・チューズデーでいくつの州が予備選挙行うのかは年によって違いますが、今年は東海岸、南部、西海岸を含む15の州で投票が行われました。
まだ結果は集計中で、最終結果はそれこそ何週間後かになりそうですが、当面の数字をみるに今日の最大の勝者は元副大統領のジョー・バイデン氏ということになりそうです。
黒人票が強いバイデン氏はもともと優勢だったアラバマ州、アーカンソー州、テネシー州、ノースカロライナ州だけでなく、接戦でむしろ負けていた州であるヴァージニア州、ミネソタ州、マサチューセッツ州、テキサス州でも勝利をおさめ、スーパー・チューズデーの15州のうち9つを制したことになります。
もちろんこれは大統領選挙の本選挙ではないので、大事なのは制した州の数ではなく、代表人獲得に必要な15%以上の得票率をもっていることと、どの程度の割合で勝ったのかという比例配分の勢力です。その意味では、サンダース氏は415の代表人をもっているカリフォルニア州でバイデン氏を大きくリードする予定です。
しかし、残りのバイデン氏が勝利した州の比例配分を積算すると、このカリフォルニア州でのサンダース氏の勝ち分が相殺され、スーパー・チューズデーでのバイデン氏の代表人獲得数のほうが大きくなるのはおそらく確実です。
いったいなにが起きたのか
2週間ほど前まで、バイデン氏の選挙活動は風前の灯ではないかといわれていました。アイオワ州ではブーティジェッジ氏が勝利、ニューハンプシャー州ではサンダース氏が勝利、ネヴァダ州の党員集会でもサンダース氏が勝利して、この段階でバイデン氏の予備選挙(primary)での代表人獲得数はなんとゼロでした。
このあたりで「サンダース氏がスーパー・チューズデーで独走体制になるのではないか?」という風聞が強まります。
重要な点ですが、サンダース氏は民主党から候補者選びに立候補していますが、もともと民主党員ではありません。
いわばアウトサイダーを指名することになるのではないかと、前回同様に党の中道派・穏健派はあわてて、なんとかしなければならないとパニックしたような言説が飛び交っていました。
そこに、サウスカロライナ州の結果がやってきました。バイデン氏39、サンダース氏15という結果で、圧倒的な勝利をおさめたのです。この結果をうけて、代表人を獲得できなかったピート・ブーテジェッジ氏とエイミー・クロブシャー氏がレースから退場し、ジョー・バイデン氏を支持する流れになります。これで空気が変わりました。
さらにこの状況に、どちらかというと中道でバイデン氏よりのマイケル・ブルームバーグ氏が膨大な選挙資金を投じて状況をかき回していました。
スーパー・チューズデー当日の票の流れ
スーパー・チューズデーの開票が始まって大きな驚きだったのが、東海岸のヴァージニア州がバイデン氏勝利を告げるニュースでした。
たった2週間前に、バイデン氏はここで他の候補者と競り合うか、どちらかというと負けていました。それがスーパー・チューズデー直前になってバイデン氏 +20 という世論調査が入ってアナリストたちがこれを異常値とみなすべきか迷っているうちに、本番では開幕直後にバイデン氏 +30 という数字が飛び込んできたのです。
次に象徴的だったのはマサチューセッツ州での結果が次第に入り始めた頃でした。
マサチューセッツ州はエリザベス・ウォーレン氏の地元で、本来彼女が1位をとっていてもおかしくない場所です。そこでウォーレン氏がバイデン氏に大きく票をとられ、サンダース氏もそれを追いきれませんでした。
しかしサンダース氏のもっとも大きな票田は西海岸です。サンダース氏は若い人々を中心に圧倒的な支持を誇っており、他で負けたとしてもテキサス州の228、カリフォルニア州の415の代表人を大きなマージンで獲得することで首位をキープできるという計算がありました。
しかしそのテキサスが、なかなかサンダース氏優勢になりません。サンダース氏の支持者が多いテキサス州西側の開票が進んでも、バイデン氏が僅差で優位を守りきってしまいました。
サンダース氏の唯一の慰めは、カリフォルニア州は +9-10 ポイントほどでバイデン氏に対して有利に進んでいる点です。
カリフォルニア州は州全体の結果と連動する144人の代表人と、53の選挙区に割り振られた271人の代表人から構成されていますが、この全てにおいてサンダース氏は優勢です。
とはいえ、比例配分でいうと、バイデン氏との最終的な差は代表人数で60くらいになるでしょうか。他の州での負けをカバーするほどではなさそうです。
どうしてこうなったのかについての分析はまだまだ進んでいるところです。サンダース氏はカリフォルニア州のヒスパニック票を膨大に獲得していますが、バイデン氏は南部だけでない広範囲で黒人票を獲得しています。また、白人票だけでみてみると、実はサンダース氏はバイデン氏に大きく負けていて、これがミネソタ州、マサチューセッツ州、メイン州での敗北につながったと見られます。
これからどうなるのか
もちろん大統領選挙の指名争いはまだまだこれからが本番です。
3月10日にはアイダホ、ミシガン、ミシシッピ、ミズーリ、ノースダコタ、ワシントンの予備選挙と党員集会があり、とりわけミシガンの125、ワシントンの89が重要になります。
3月17日にはアリゾナ、フロリダ、イリノイ、オハイオがあり、特にフロリダが219、合計577の代表人が争われ、4月28日にはニューヨーク274、ペンシルバニア186、を含む6州663人が争われます。
ただ、だいぶ選挙区が狭まってきたことも確かです。もはや、ブルームバーグ氏に明確な勝ち筋はありません。では明日にでも彼は選挙運動から降りて、バイデン氏支持に回るでしょうか?
エリザベス・ウォーレン氏の勝ち筋も見えません。しかし彼女は党大会まで戦い抜くと表明しています。仮に彼女が選挙運動から撤退したとして、リベラル寄りで政策が似ているサンダース氏を支持するのか、それとも党の体制に寄り添ってバイデン氏を支持するのか、予想が付きません。
バイデン氏も明確な強さをアピールできない中、どのようにして首位の立場を守るかが気になります。また、サンダース氏は「自分の『革命』はひとびとを投票に促すだろう」と力説していますが、それが裏目にでたスーパー・チューズデーの結果を教訓に、より融和的で年齢ギャップを越えた票集めにシフトできるのか、注目されます。
また、今年の民主党大会に導入されたルール変更もここで効いてきます。
2016年のヒラリー・クリントンとサンダース氏の争いから反省して、今回は党大会での最初の投票でいわゆるSuper delegatesといわれる、党役員側の771人は投票できません。
もし党大会までに1991票を獲得して過半数をとっていたなら、それで指名争いは終わりになりますが、もし最初の投票で過半数が決まらなかった場合、代表人たちは予備選挙の結果に束縛されずに投票ができるようになって、今度は4750人全員が参加する二度目の投票が行われます。こうなると、サンダース氏は不利です。
なので、バイデン氏は引き続きサンダース氏に抜かれないようにしつつも、最低でも1991票に届かせないようにするという戦略も出てきます。
そしてそのすべてが終わって指名争いに勝った候補が、いったいどれだけトランプ相手に戦えるのか? それが最大の問題です。
このあたりはまた別のnoteでより詳細なデータについて話しますし、モダシンさんのMosern Syntax Radio Showでもお話する予定です。私の大統領選挙のマガジンを購読いただければ、このあたりのアップデートは流れてくるかと思いますので、ぜひフォローしてください。
引き続き目が話せない日々が続きそうです。
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