見出し画像

"Endorse": 影響力を背に受けて戦う

秋のアメリカ大統領選挙にむけて候補者はきまりましたが、まだまだ選挙戦としてのイベントはいくつかあります。党大会だけではなく、象徴的な出来事もいくつか待っているのです。

その一つが、ジョー・バイデン候補の副大統領選びと、もう一つは彼がどれだけの有力者の推薦を得られるかです。

アメリカの選挙戦においてこの推薦「Endorsement」(エンドースメント)は重要な意味合いをもっており、元大統領や、労働組織の大物、宗教界の重鎮、経済界のリーダーといった人物は大きく票を動かしますので注意深く発表が行われる傾向があります。

たとえばバラク・オバマ元大統領はあきらかにジョー・バイデン氏側に立っているもの、その発言は「元大統領」という重大さを伴うものですので、実はこれまで推薦を公言してはいませんでした。党の候補者指名争いをフェアに行うために、候補が決まるまではどちらかに肩入れをすることを避けていたものと見られています。

そのオバマ氏が先日ビデオレターでバイデン氏の推薦を表明し、バーニー・サンダース氏の支持者が多い若者たちを意識したメッセージを送っていました。また、エイズが社会問題となったころのバイデン氏の功績を繰り返し引用して、現在の問題にも対処可能な候補であることをアピールしています。

オバマ氏に先立ってバーニー・サンダース氏もバイデン氏を推薦していますし、エリザベス・ウォーレン氏も同様に推薦を表明しました。

書類の裏に名前を書くこと

 かくも大きな意味合いをもっている Endorsement という言葉ですが、その動詞型である endorse という言葉はもともとラテン語の dorsum つまり「背中に、裏に」という単語からきています。

in と dorsum が接続されて、indorusum、つまり「背中にある」といった意味になります。中世英語において、これは法律や条文の書類の裏にサインをすることによってその内容を承認するという慣習から転じて「了承すること」「よしとすること」「推薦すること」という具合に意味が定まりました。

おなじ dorsum を語源とする言葉には dossier (ドスィエ)、つまりなにか重要な事柄が書かれている文書という単語が生まれます。同じく、書類の裏にラベルや表題がついていること、あるいは意味が付与されていることからこうした連想が働いたのかもしれません。

ジョー・バイデン氏はこれで元大統領の推薦と、これまでのライバルであり、党を分裂するところまで対立していたリベラル候補の両名の推薦も集めたことになります。

ん? するとあの人は...? と、当然気になります。

どうやら、選挙戦をジンクスさせたくないという気持ちもあるのか、今回はだれも推薦しないそうです。それがいいかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?