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楽器に纏わり付くジェンダー

ジェンダー。
最近よく聞かれる言葉であるが、そもそも「ジェンダー」とは何なのか?
【ジェンダー】
"(Gender)とは、文化的・社会的に構築された性差の概念のこと
生まれつきの体の性、生物学的性別(Sex)とは区別される。"

音楽においてもジェンダー論は常に付き纏う問題である。
さて、「フルーティスト」と聞いて皆は何を想像するだろうか。

屈強な男性がフルートを吹いている姿か?
それとも小さな子供が演奏している姿?
はたまた70代のご婦人が演奏しているだろうか?

一般的には「フルーティスト」と聞くと若くて容姿の良い女性が
可憐に吹いている姿を想像するのでは無いだろうか。
私には楽器とジェンダーについて考えるきっかけになった出来事があった。
小学校でフルートを始めた頃は楽器に対するイメージも別段なく(というか、フルートを初めて手に取るまでフルートの存在すら知らなかった)、私が女であることとフルートを選択した事になんの関係性もなかったのだが、20代の時、当時通っていたスポーツジムで60代位の男性に話しかけられた。
平日の昼間にジムにいる私の職業が気になったのか、何気ない会話で
「音楽家でフルート奏者です」と自己紹介したように思う。
彼はフルートのレッスンにはどんな人が来るのか聞いてきた。
「男性もいるし70代のご婦人もいるし、学生もいますよ」
と当たり前に答えたのだが、彼は驚いて(からかいでは無く本心だったと思う)
「え!!フルートって若い女の子以外が吹いてもいいの?」
と宣ったのである。
そこで私は初めてフルートに対する世間のジェンダーを意識した。
勿論、全員がそんな風に捉えているとは言わないが
例えば
「男の子でフルートって珍しいですよね」とか
「男の子でピアノ?カッコいいわね」
などという発言はまあよく聞くものだ。
つまり楽器に対するジェンダーが無意識に人々に刷り込まれているのである。
「この楽器は男性が演奏する物で女性は演奏してはいけない(その反対も然り)」とか「年寄りは演奏してはいけない」なんて楽器は存在しないのである(宗教的な儀式の楽器は除く)。
大体が楽器のお稽古と聞くと「女の子」が嗜みとしてする物という認識なのだ。
そもそも日本(韓国・中国も)においてクラシックが流入した背景として
「軍事」・「宗教」・「教育」という3本柱があり、「純粋な芸術の探究」とは違うルートから輸入され、クラシックの位置付けが西洋とは違っていた事も一因ではないかと思う。
特に戦後の近代化を推し進めるに当たり「楽器」と「階層」イメージを結びつける事によって「楽器(戦後はピアノが主流だった)を習える中産階級」という一種のステータスが浸透した。
また、家庭における音楽教育の監督者を「母親」が務めるものとし(スズキメソッドが提唱)楽器に対するジェンダーイメージが出来上がってきたのではないだろうか。

われわれプロでも特に女性は音楽界・一般社会における期待されたジェンダーを求められる事も多い。
クラシック奏者に対する「清楚」であり「容姿が良く」「きちんとしている」という暗黙のイメージみたいな物が常に付き纏うのである。
同じイメージを世間は男性奏者にも求めているか?
若くて可愛い容姿の女の子はライバー(スマホやパソコンを使ってライブ配信をする人)としてもてはやされているが、では40代・50代のベテランに移行する際の苦労はないだろうか。
例えば頭が薄くて中年太りの男性奏者がステージに出たところでやんや言う人は少ないが、女性奏者が同じ状況だったら?
コンサートでも私の着ていたドレスや身につけていたアクセサリーを観察し、究極は演奏の中身には1ミリも興味無く「ドレスを来た若い女性」を見る事を目的にしている人々ににこやかに対応する事に疲れている自分もいた。
コンサートの度に新しいドレスの感想や容姿の感想、スタイル(演奏ではなく体型)についてを言われる事も私にとっては何の意味もなかった。
レッスンの際も20代の頃は「世間から求められるフルーティスト」の外見・規範から外れぬ様女性らしいスカートを履いていた事もあったし、髪をロングに伸ばしていた時期もあった。
髪をバッサリ切りたい時にも美容師に
「お仕事はロングヘアでなくても大丈夫ですか?」と聞かれた。
ロングヘアでなければいけない仕事ってなんだろうか。
演奏と髪の長さには何の関係性もないはずなのだが。
最近は何故そういった楽器に付き纏うジェンダーに合わせねばならないのか(多分合わせねばならない、というより無意識に私の思考に刷り込まれていたジェンダー規範である)年々ばかばかしくなり、私の好きなスポーティーな服装・髪型・日本製の可愛いドレスから海外のかっこいいデザインのドレスへガラッと変えた。
我々奏者側も無意識のうちに楽器に対する「期待されたジェンダー」を演じているのかも知れない。


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