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イエナプランサマーキャンプから見えてきた日本の教育課題その2

同調圧力という闇
東日本大震災の時、未曾有の大災害の中、避難所で炊き出しを受け取る日本人がキチンと列をなし、マナーを守っている姿に、世界中から称賛の声が出ていました。「日本人はこんなときでも集団で秩序ある行動ができる素晴らしい国民だ」とのことでした。一方でこんな意見も。それは、「日本人が秩序正しく行動しているのは自ら考えてやっているのではなく、周りからの同調圧力からである」つまり・・・「俺も我慢しているのだからお前も我慢しろ」というものなのだと・・・。未だに部活動などで無くならない先輩からの「しごき」などはその典型だと言われています。

イエナプランの創始者ペータ・ペーターセンは1920年代にドイツのイエナ大学で「小さなイエナプラン実験校」をスタートさせました。その中でペーターセンが言ってるのは「恐れや強制によって起きる「良い行い」は、本人にとっても、社会にとっても意味のないものだ」ということ。
自分の頭で考え、社会をよくするために自分に何ができるか?行動できる人間を育てることこそが、学校がやらなければいけない事。
「子どもたちを未来の地球市民として社会に送り出すために、学校はその練習の場でなければいけない」と、ペーターセンは言っているのです。
楽しいキャンプの中でも時折、子どもたちの間で「同調圧力」らしきものが見え隠れしていることを感じながらも、楽しいことがたくさんあれば、子どもたちはきっと、仲良くなっていくだろうと大人たちは安易に考えていたし、子どもたちもとても楽しんでいました。

ホンモノの自然から五感で学ぶ

2日目の朝
匠海君が朝食の準備をしている私のところにやってきて、「昨日の夜は怖かったから帰りたかったけど、僕は亀に会いたいし、シュノーケルがやりたいから飛行機は取らなくてもいいよ」と、昨日渡したステッカーの自分が書いた亀を見ながら楽しそうに報告に来た。
私としては予想通りだった。子どもは暗闇を恐がる、春のキャンプの時にも1年生の男の子が夜の8時ぐらいになると決まって「お母さん〜!」と言って泣き出し、お母さんとオンラインでつなげながら泣き寝入りを数日繰り返していた。多分、匠海君は今夜も泣くのだろうな・・・と思いながら、ひとまず今日はシュノーケルを楽しんでくれそうだし、飛行機の手配や送迎をしなくて良くなったことに、少し安堵感を感じていた。
しかしながら、それは彼が泣いた本当の意味をわかっていない、いや解ろうとしていなかった自分の浅はかさだった事をのちに知らされることになる。

亀と泳いだシュノーケル

奄美の海で子どもたちは沢山の亀たちと泳ぐことができた。海の中にこんな世界が広がっていることにどの子も感動したようだ。ホンモノの自然は大人でも子どもでも心動く体験となる。

奄美の海には沢山の生き物が生息している。2014年に解明された海の中の「ミステリーサークル」を作っていた新種の魚、世界的にも珍しい「アマミホシゾラフグ」などはその一つ。
https://hotelthescene.com/scenemagazine17.php

アマミホシゾラフグが作った「海底のミステリーサークル」世界的にも奄美が有名になった。

異年齢クラスで学ぶ理由

イエナプランには決まった教科書がない。
子どもたちは自分が興味を持ったことを毎週月曜日に、自分で週の計画を立て、ブロックアワーという「個別学習」の時間に本やタブレットなどを使って学ぶ。基礎学習となる算数や国語の学びは、日本でいうところの「担任の先生(イエナプランではグループリーダー)」が行う「インストラクション」で、子ども一人ひとりの理解の状況に合わせて学ぶことができる。
この「個別学習」をやるためにペーターセンが「イエナプラン実験校」で行ったのが異年齢クラスだ。

子どもたちは年齢の異なる三学年からなる「ファミリーグループ」を作り、個別学習やグループ学習の中で「共に学ぶ学び方を学ぶ」のだ。
当時の教育は「画一一斉授業」が主流だったため、オランダでも同じ学年の子どもたちだけで行う授業では、理解できないままに授業が進むことによる「落ちこぼれ」が大きな問題になっていた。
1人の先生が30〜40人の生徒におしえるというスタイルは、どうしても平均的に理解している子を対象に授業が進む。当然理解できない子は置いてかれるし、理解の早い子は退屈で授業がつまらなくなる。これを解決したのが「異年齢による教え合い」なのだ。(日本では未だに画一一斉授業が主流なため、落ちこぼれや不登校など数多くの問題があり、それは七五三と呼ばれ小学校卒業時には3割の子どもしか理解できていない教科もあると問題視されている。

晩御飯で一番人気だった「鶏飯」

合宿で子どもたちが一番楽しみにしているのが食事の時間だ。春の合宿は自分達で予算を決め、毎食自分達で作り、仲間に販売するという体験をメインにやってもらっていた。しかし、今回はホンモノからの学び「ワールドオリエンテーション」をメインにやりたかったので、食事係は私が一手に引き受け、保護者の協力もいただきながら子どもたちが喜びそうなメニューを考え、作った。その中でも都会から来た人たちに一番人気の島料理、「鶏飯」は子どもたちに是非食べさせてあげたかった。
案の定、子どもたちには大好評で「クラスボックス」にもキャンプで良かったことの感想の中でも、トップランキングに入っていた。
鶏飯は薩摩藩に支配されていた奄美の先人たちが、お殿様をもてなす料理として、黒砂糖以外これといった農産物もない中、様々な工夫を凝らして作り上げた奄美の郷土料理である。

「鶏飯」は、ご飯の上に、鶏肉、薄焼き卵、椎茸やネギ、生姜、もみ海苔などをトッピングし、椎茸と鶏で出汁をとったスープをかけていただくお茶漬けのようにあっさりして、食べやすい奄美の郷土料理。大量に作ったが、あっという間になくなった。

共に対話し、共にあそび、共に学び、共に催す

イエナプランの基本活動である4つ。「対話・あそび・学び(しごと)・催し」これらは、「人間の生活になくてはならないもの」として、異年齢クラスの中で「共に生きる事を学ぶイエナプラン教育」がトータルな人間としての発達を保障するために欠かすことのできないものであると言われています。
2日目はまだまだ初めましての子どもたちも多い中、関係性づくりを優先させるべく、まずは「共にあそぶ」ことに多くの時間を割きました。簡単にできるリーダーが主導でやる「手遊び」「歌遊び」や子どもたちが主導でやる「おにごっこ」や「ボードゲーム」今回、子どもたちが興味を示してくれそうな様々なゲームを用意していました。意外だったのが「けん玉」。けん玉はできる子だけがm個別であそぶのだろうと思っていたのですが、子ども同士でチャレンジし合い、技をきそいかなり盛り上がっていました。
イエナプランでは「あそび」は「学び」にもつながるということでとても重視しています。その中でも特に気をつけているのは「競争」にならないこと。勝ち負けがはっきりするものはなるべく取り入れないようにしているのです。

そういえばある母親のブログに「鬼ごっこが嫌いで休み時間が怖い」と日記に書いた男のこの記事がありました。彼は足が遅く、いつも最後まで鬼になり、自分の日記に「集中して僕だけが追いかけられるし、いつも鬼になるから、鬼ごっこはやりたくない」と書いていたのですが、先生からは赤ペンで「それは君の思い込みなんじゃないかな?」と書かれたことで彼は学校に行かなくなったのだそう。今は母親とホームスクールで楽しく学んでいるらしいが、子どもにとっては楽しいはずの「あそび」が不登校の原因になっていることに、大人としては色々と考えさせられた。

ホンモノの海でホンモノの海亀と泳いだ「シュノーケル」。そんな2日目は子ども同士の距離が一気に近くなり、「あそび」を通して人間関係も少しづつできていったように感じた。

2日目の夜

そんな中、楽しいことがいっぱいだった2日目の夜。
あたりが真っ暗になった8時ごろ、またしても匠海君が泣きながらやってきた。「眠れない!お母さんに会いたい」と・・・

                      続く



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