なぜ、過酷な環境下でも、うちの母親は明るく生きてこれたのか?
私には今年95歳になる母がいます。母はとっても明るいです。毎日デイサービスに行くのを心から楽しみにしています。その理由を聞いてびっくりしました。「あさにデイサービス(母が通っているデイサービス)は私で持っているからね」・・・・💦
母は70歳の時にピアノを習い出しました。私が子供の頃から家にはピアノがありました。決して豊かな家ではなかったのに、ある日母がピアノを買ってきて、7人家族で暮らす狭い家の居間にドーン!とピアノが設置されたのです。私たち5人姉妹は、それぞれちょっとの期間だけピアノを習いに行ったりしましたが、誰も音楽の道に進むという結果にはなりませんでした。
母は子供達に何かを強要したりすることもなく、70歳になって少し時間に余裕が出た時にピアノを習い出し、ハモニカも同時に吹けるようになりました。95歳になる今でもハモニカは肌身離さず持っていて、人が来たり、隙あらばハモニカをひきだすのです。そして、ピアノを買った理由は自分が習いたかったのだということだったのです。先の「デイサービスは私で持っている」という謎の自信は、デイサービスでのお誕生会などで音楽担当をしているからなのだそう。母は歌を歌うことと同時に演奏するのも大好きなのです。
【なぜ母は70歳になってピアノを習い出したのか?】
そんな音楽大好きな母。もっと早くピアノを習いに行かなかったのか?それは父の存在が大きかったと思うのです。父と結婚してからの母は、苦労の連続。好きなピアノどころではなかったようです。母自身は当時の奄美では裕福な家庭で、子どもの頃たくさんの愛情を受けて育ったようです。12歳までに養育者との「愛着形成」がなされていれば、その後、その人の人生で起きる過酷なシーンでも、明るく乗り越えることができると言われています。
一方、父方の母(つまり私の祖母)はとても厳しい人でした。
今では虐待と呼ばれるようなことが日常茶飯事だったようで、それが普通だった父も、大酒飲みで、気に入らないことがあると物を壊す、投げるなどのは日常茶飯事でした。父が暴れ出すと母は5人の子どもを置いてとっとと逃げていました。これはある意味正しい判断なのだそうです。我慢しても反撃してもダメで、とっとと、逃げる!のが良いのです。母がいなくなると父は1人で愚痴りながら寝てしまいました。そして、翌朝は何事もなかったようにけろっとしていました・・。
そんな環境で育ったからか?私は、何か困ったことに遭遇した時に人間の原始的反応の「戦うか?逃げるか?」のうち、戦う方を選んだ子どもでした。
【目の前の人を一瞬で笑顔にできる仕事】
今年8月に、「マッキンゼーで大活躍した赤羽さん」のオンラインサロンに入りました。入った理由の一つが、赤羽さんがある対談で「日本人の自己肯定感の低さ、いじめ、自殺の多さと、日本経済の低迷には大きな因果関係がある」ということをおっしゃっていたからです。経済の低迷にまでつながるとは流石に気が付かなかったのですが、若者の自己肯定感の低さ、どこから見てもなんの不自由もないような学生たちが「自分なんて・・・」という言葉を口にしているのを聞いて、何かこの国には人の元気を吸い取る妖怪でもいるのか?と思っていました。
2007年に「NPO法人ママの働き方応援隊」という組織を立ち上げて「子どもたちのいじめや自殺防止」を目的に「赤ちゃん先生プロジェクト」をスタートさせました。私自身も都会での孤独な子育てに悩んだことがあり、また孫の誕生で、「赤ちゃんには人を笑顔にするちからがある」ということに気づき、赤ちゃんの力を使って、目の前の人を笑顔にするという活動を出産後のママたちのお仕事にできるのではないか?と思ったからです。
【愛着障害 著者岡田尊司】とは
自己肯定感の低さにつながることの一つに、生まれた時の養育者との関係性、つまり生後2歳までの乳幼児期に、泣いたら、おっぱいがもらえる、おむつが濡れたら変えてもらえる、抱っこしてもらえる。といったスキンシップを伴うお世話をしてもらったかどうかで、愛着の基礎ができるそうです。その期間に主となる養育者がいなかったり、ころころ変わったりすると、その子は先天的な異常がなくても「愛着障害」から、異常な行動が出てくるそうです。最近増えている「発達障害」のほとんどが「愛着障害」の恐れがあると言う精神科医もいるほどです。
その昔、ドイツの孤児院で100人の赤ちゃんに、オムツとミルクを機械的に与えるグループと、声をかけたり抱っこしたりしながらオムツとミルクを与えて発達を見る非人道的で残酷な実験が施されたそうです。機械的にミルクとオムツだけ与えられた赤ちゃん50人は1年も生きることができなかったという恐ろしい実験結果があるのですが、現代社会ではそれ以上の、悲劇である乳幼児への虐待が後をたたないという信じられない社会になっています。
【毒親の正体 著者 水島広子】とは
ちょっとしたことで母親はAさんを全否定する。身体を引きずり回し、家から閉め出すことも数知れない。なぜ母は私を苦しめるのか。苦しむAさんに精神科医は意外な答えを示した。「お母さんは、発達障害だと思います」――。不適切な育児で、子どもに害をおよぼす「毒親」。その被害を防ぐカギは診察室にあった。臨床例から彼らの抱える四つの精神医学的事情を解説、厄介な親問題を手放す指針を明らかにする。ー毒親の正体よりー
「愛着障害」を起こす親自信が「毒親」に育てられていた。というのが最近の調査でわかってきたようです。ただ、核家族化で、当の本人は毒親しか知らないので、それが当たり前の家庭だと思って育つのです。そして、小学校ぐらいになって、よその家に遊びに行った時に「うちの家はおかしい」と気がつくのです。そして、おかしいことを気付かれないように振る舞うようになります。まだ自立していない子どもにとって、親は絶対的な存在なので、自分が悪い子だから親がこんなふうになるのだ。と、自分を攻める子になります。つまり、自信のない萎縮した自己肯定感の低い子どもになる。そして自分が親になった時に、親と同じ子育てをするしか知らないので自分も同じような、または真逆の毒親となってしまうのです。
【日本人の自己肯定感の低さの理由が解明できる】
赤羽さんおすすめ図書から私が読んだのは「愛着障害・毒親の正体・発達障害と人間関係」の3冊です。この3冊の中で最近読んだ本が「発達障害と人間関係」カサンンドラ症候群にならないためにです。
愛着障害、毒親の正体から3冊目となるこの本を読んだ時に、うちの母がなぜ過酷な状況下でも明るく生きてこれたのかが解明したのです。それは彼女が幼少期の頃〜小学校1年生まで両親にたくさんの愛情を受けて育ったからなのです。人は0歳から2歳までの幼少期のスキンシップそして12歳までの安定した愛着形成があれば、その後どんな過酷な状況になっても、未来に希望を持ち前向きに生きることができるのだそうです。
【私が母親に特化したNPOを立ち上げた理由】
最近読んだ3冊の本は子育て中の母親たち全員に読んでほしいと思います。各家族という小さな枠の中で子育てをすると言うことは親にとっても子どもにとても辛く、そして恐ろしいことにその子育ては連鎖するのです。
日本経済の低迷、若者の自殺の多さ、いじめや、虐待、鬱と世界経済ランキング三位の国とはとても思えないような有り様です。これはひとえに幼少期の愛着形成と、その後12歳までの親との関わりの中で育まれるのです。この愛着のポイントがわかればもう子育てに苦しまなくても済むのです。母は100歳まで生きると言ってます。その間もっと母の人生を、母の話を聞きたいと思いました。