昔、結婚する前の年に
獣の奏者エリンというアニメのDVDを借りてずっと観ていた時期があった。
何よりその主題歌の、スキマスイッチが歌う雫という曲が好きで
よく口ずさんでいたものだった。
当時の私は30代最後の年で、キャリアの形成をせねばならないが、長年勤めてきた金融機関での仕事につくづく向いていないことも認識しているという、気持ち的に結構厳しい状況下にあった。
ちょうどその頃、するりと胸の奥に入り込んできたのが、その雫という曲だった。
その曲を先日、ほぼ10年ぶりに、朝のテレビに出演していたスキマスイッチが演奏し歌っているのを観た。
音楽はタイムマシーンみたいなものだと、私の敬愛する藤井フミヤ氏がよく言うが、本当にそうだなと思う。
10年以上前の、1人でがんばらねばという不安や孤独が急にありありと思い出され、不意打ちで泣けてきてびっくりした。
そのエリンのアニメをよく観ていた半年後、私は、(その仕事に向いていないことはやはり上司の方がよくわかっていたようで、)突然の未経験の部署への異動が発生した後、異動の少し前に仕事で会っていて、上司からとても勧められていた人と結婚することになり、夫の赴任地が遠方だったため退職することになるのだが、
ああ、そうか。と思った。
この曲をよく聴いていた頃、
ぎりぎりだったんだなあ、自分自身が。
あれ以上1人でどうにかってできなかったのかもしれないな。
日々の家族生活というのも色々あるけれど
あのとき、ぎりぎりのところで救われた。
まるでキッチンという小説の主人公のように。
それは自分で忘れないようにしとかなきゃいけないな。
朝の光の中でコーヒーを飲みながらそんなことを思って、
そしてそれはかなり良い感じがしたのだった。
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