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#4 わたしにだって、できるもん!

食堂を営んでいた両親の娘なのだから、さぞお料理がうまいだろうと思われてきたが、それは全くの逆で、何もできない娘だった。黙っていても美味しいご飯が出てくるわ、なんか手伝いたいと言っても、邪魔だからと厨房には入れてもらえず、結局できるお手伝いといえば皿洗いだけだった。


寒い冬の日、こたつに入りながらテレビを見ていて流れていたのは子供向けの料理番組『ひとりでできるもん』だった。

私とさほど変わらない歳の女の子がお料理をしている。とても可愛らしい番組と舞ちゃんに当時の私は夢中だった。
ある日、母と観ていると
母「あら、こんなに小さいのに林檎の皮がむけるのね!凄いわね!めぐ、できる??」
と尋ねてきたのだ。
私は「できない。怖いし。」といい、その舞ちゃんを観ていた。しかし、何故か急に舞ちゃんへライバル心を抱いてしまい、いつもは終わりまで黙って観ていた番組の途中で突然立ち上がり、食器棚にしまってあったフルーツナイフを取り出し、コタツのテーブルに置いてあったりんごの皮を剥きはじめたのでした。

切り方も教わった事もなく、それまでやろうとも思ったことのない女の子ができるはずもなく。当たり前のように流血騒ぎで母は呆れて、私は大泣き、それを見ていた父は心配すらせずに大笑いしていたのを覚えています。

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そんな母に褒めて貰いたいが動機の『私にだって、できるもん!!』は一瞬で打ち砕かれ、料理には一切関わらず、大きくなっていきました。それから小学生、中学生や高校生になった私を待っていたのは調理実習。何故か『食堂の娘』という肩書き(?)のせいで、期待され「出来ない…」と言うと「食堂の娘なのに!!」という言葉。
『食堂の娘』ができるのは皿洗いくらいだったのです。

できないものはできない。
嫌なものは嫌。
怖いものは怖い。
だって、料理とはとても危険なものだから。

私にとって料理は近いようでとても遠い存在でした。

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