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#3 わたしの生まれた家

朝起きると、そこはもうひとりきりの部屋だった。
一緒に眠りについたはずの父と母の姿はなく、すでに畳まれた布団が私の横にあった。
毎朝見る光景のはずなのに、なぜか寂しさを感じることが時々あって、その寂しさと一緒に布団に潜り込んでまた夢の中に戻ろうとしていた。

「いらっしゃいませー!!」と鳴り響く声。
トントントントン と包丁がまな板に打ち付けられる音。
カチャカチャ、カチャカチャ と食器が洗われる音。

私の夢の入り口を塞ぐのは、騒がしい音だった。
朝6時半には開店する食堂を営む父と母は、私が気持ちよく夢を見ている真っ暗な時間から起き、そして真っ白な白衣に着替えて仕込みをしていた。
私は寝癖も綺麗に直せないまま、やっと着替えた洋服で、お店の裏口から『おはよう』と言って入る。バットや小鉢が重なり、大量のキャベツの千切りが入った、大きなボウルが置かれている作業台が、朝ごはんを食べるテーブルだった。私が来る頃を、抜かりなく見計らって用意された料理は、どれもあたたかく、そして、今思えばとても美味しかった。
今日も働いてる父と母は言い争いをしている。
だけど、夜になるとビールを飲みながら、二人並んで同じテレビ番組を笑いながらみていた。不思議な気持ちにさせられたけど、今思えばなんだかとても嬉しかったのかもしれない。

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