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アラン・メンケンだけじゃない!サウンドトラックが最高なディズニー作品〜オリバー ニューヨーク子猫ものがたり〜

「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」のクレジットの名前が70-80年代アメリカの天才と偉人だらけ


ディズニー映画を代表する音楽家といえば、言わずもがなアラン・メンケンさんです。
でも彼が担当していない作品でも音楽が素晴らしいものもあるんです。
私がメンケンさんが担当した作品以外で音楽が好きな作品を何かあげるとしたら、一番にこの作品をあげます。


「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」です。
この作品のサントラは残念なことに何故かサブスクリプションで聴けません。
強いてあげるならapplemusicでストーリーテラーがあるくらいで、オリジナルのサウンドトラックは現在配信されていません。
仕方がないので私はCDを買って聴いてます。

「オリバー」は俗に言う「暗黒時代」と「ルネサンス時代」の狭間の時に公開されているのでファンの間でもどうしても地味な作品になってしまっています。

でもこのアニメの歌はどれも全部良くてかっこいいんですよ。
そして捨て曲も一切ない。

凄く気になっていたので、歌詞カードの中のクレジットをみてその名前の人達を調べてみました。
なんとアメリカの文化賞を総なめしていた超人や、世界的有名なミュージシャンが作詞作曲を担当していたことがわかったんです。

そしてこの作品のおかげで、好きな作品のクレジットに載っている人をちゃんと知ることがどれだけ大切かというのを痛感させられました。

この作品の売りは何よりビリー・ジョエルさん、ベット・ミドラーさんが声優していて、オープニング曲をヒューイ・ルイスさんが歌っていることです。当時アメリカを代表する大スターが揃って歌っています。

これだけでも超豪華なんですが、実は裏方の曲を作詞作曲している方々も超秀才な方々なんです。

「オリバー」のサントラが聴けない理由は、あらゆるいろんな大御所で鬼才な人達の手の込んだ作品であるが故に、アーティストへの印税の分配が難しくてサブスク配信までに至らないのかもしれません。

でもこれだけ名高い方達が奇跡的に集まっているのに、サブスクで聴けないなんて、凄く惜しくて勿体無い!
もっとたくさんの人に知って欲しいから、他のディズニー作品と同様にサブスクでも聴けるようになれば良いのに…

以下からは私がこの「オリバー」のサントラに携わっている方々が如何に凄くて鬼アツ過ぎるのかを永遠とつらつら書いています。
あと終盤にこの時代のディズニー社の内部の確変についても書いています。

素人のこたつ記事な上かなりの長文記事になっていますが、どんだけ凄いんだよと気になっているもの好きな方は是非ご一読ください。



Once Upon a Time in New York City


まずこの映画のOP曲。オリバーがニューヨークの雨に打たれて流されてしまうシーンで使われている曲。
この曲はアメリカのロックバンド、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのボーカルヒューイ・ルイスさんが歌っています。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースは、あの超名作「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題歌「パワー・オブ・ラヴ」を担当していた、アメリカ80年代ロックを代表する人気ロックバンドです。
この曲ではバンドとしてではなく、ルイスさんソロとして歌っていますが、当時大人気のロックバンドのボーカルがOP曲を歌っていると思うと、それだけで胸熱ですよね。

ちなみにこの曲はディズニーファンならお馴染みの、あのハワード・アッシュマンさんが作詞を担当しています。作曲はバリー・マンさんというソングライターが担当しています。

ハワード・アッシュマンさんについては、彼のドキュメンタリー映画がディズニープラスで配信されています。もし彼について知らなかったら是非このドキュメンタリー映画も観てほしいです。

コアな方はすでに考察されてますが、彼はディズニー作品の音楽の歌詞に、自分を投影させているのではないかと言われていますね。
言われてみれば確かにこの詞は自分を投影させてるのでは?と感じるディズニーソングがいくつかあります。

この曲「Once Upon a Time in New York City」の歌詞も、アッシュマンさんがメンケンさんと出会う前の頃の自分を投影させて書いた歌です。
私はこの曲の歌詞が大好きです。
ドキュメンタリーを観て彼の人生を知った上でこの曲の歌詞を見るととても感慨深い曲なんですよ。

歌詞まで書くとかなり長文になってしまうので当記事では割愛させていただきますが、別途アッシュマンさんのキャリアと、彼が作詞した曲と美女と野獣の歌詞考察をした記事を別途載せる予定です。

Why Should I Worry?


次にドジャーがホットドック屋から奪ったソーセージを首に包んで歌っている曲です。
この曲は世界的に有名なあのビリー・ジョエルが歌っているんです。そう、あのピアノマンを歌っている方。先月1月に東京ドームで来日公演したばかりのあのビリー・ジョエルです。ピアノの裏拍の伴奏がかっこよくてノレる、いい曲ですよね。

この曲の作詞作曲はダン・ハートマンさんとチャーリー・ミッドナイトさんが共同で担当しています。
クレジットを確認するまで、私はビリー・ジョエルが作曲しているのかと思っていましたが違っていました。
で、ダン・ハートマンさんを調べたら、この人が色々と凄い方だということがわかりました。

この方、ソングライターの他、ミュージシャンやプロデューサーとしても活躍していた方なんですが、ディスコ界のレジェンドでもあります。
この方はディスコ界では名盤中の名盤「リライト・マイ・ファイア」を生み出した方でもありました。「Vertigo/Relight My Fire」はゲイクラブでかかる定番曲にもなっていたそうなんです。

こんなディープなお方が作曲に携わっているなんて、一体このアニメ、どうなってんの…
この曲自体ももっと評価があっても良いのではないでしょうか。


Streets of Gold


次にリタが歌っているこの曲。オリバーがドジャーたちの仲間入りをして盗み働こうとするシーンです。
この曲はこの歌のところだけキャストが変わっていて、グラミー賞2度受賞者である、アメリカのコーラスグループ、ポインター・シスターズの姉のルース・ポインターさんが歌っています。
この曲、アニメでは残念ながら途中で終わってしまいます。
フルではこちら。

この曲、私はこの作品の中で一番好きな曲です。
ディズニーアニメでは珍しいかっこいい女性ボーカルの曲なんですが、それがいいんですよね。

この曲の作詞はディーン・ピッチフォードさん、作曲はトム・スノーさんが担当しています。実はこの二人はこのオリバー以外にも過去から一緒に作詞作曲をしていました。

一番にあげるべきなのが、1984年公開に公開された二人が作詞作曲を担当した映画「フットルース」のサントラ「レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ」という曲です。
この曲はアメリカビルボードホット100で1位、イギリスでは最高2位という栄光を成し遂げています。この曲は最終的にアカデミー賞最優秀歌曲賞にノミネートされました。

特にピッチフォードさんは、宇宙人レベルの超人です。
この方はソングライターの他、脚本家、監督、俳優、小説家と、幅広く活躍しています。
何よりも彼のキャリア暦が凄まじい。
今現在に至るまで、彼の作品により、オスカー賞とゴールデングローブ賞を受賞し、さらにオスカー賞 3 回、ゴールデングローブ賞 2 回、グラミー賞8回、トニー賞2回にノミネートされるという経歴の持ち主でもあります。
ちなみに「フットルース」の脚本を書いたのもピッチフォードさんです。

詳しい彼の経歴までここでは書けませんが、もし知りたければwikiに載っていますので覗いてみてください。


Perfect Isn’t Easy


最後に紹介したいのが、ジョルジェットが登場して歌っているこの曲。
この曲はベット・ミドラーというアメリカを代表するグラミー賞受賞者でもある女性シンガーが歌っています。彼女はとても多才で女優業でもミュージカルのトニー賞受賞経験があります。
ベット・ミドラーさんといえば「The Rose」という名曲の原曲を歌っている方です。

ローズは日本人でも平井堅さん、平原綾香さんなど多くのアーティストさんがカバーされているんですよね。それぐらい超名曲を歌っているシンガーです。

この「Perfect Isn’t Easy」の作詞作曲を担当した方なんですが、これが最強。
作詞はジャック・フェルドマンさんとブルース・サスマンさん、作曲はなんとアメリカを代表する世界的ミュージシャン、バリー・マニロウさんです。
この三人は国際的に有名なミュージカル「コパカバーナ」を生み出した方々です。

この曲がどれほど凄いのかというと、この曲で、マニロウさんはグラミー賞の最優秀男性ポップ・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞しています。
「コパカバーナ」は最初マニロウさんのシングル曲でしたが、それが三人の手によって、この曲は長編のテレビ用ミュージカル、映画版、舞台ミュージカルへと大拡張されます。
舞台はイギリス、アメリカでツアーを行っていました。以来このショーは200 以上の作品が世界中で上演されているそうです。

元々、マニロウさんは1971〜75年にミドラーさんのプロデュースもしていました。この曲では12年ぶりの共同制作となります。
超馴染み深い方々との共同制作となるので、素晴らしいものが生まれるのも当然です。

ちなみにフェルドマンさんは、このオリバーの作品の後のディズニーのミュージカル映画「ニュージーズ」や「ライオン・キング II」の音楽の作詞も担当しています。

以上で挿入曲の紹介を終わりにします。

これだけの超大物な方たちを必死に集めていたということは、想像以上に余程当時のディズニーの映画興行収入と経営状況が悪かったのでしょう…


ルネサンス時代の幕開け


「オリバー」は1988年に公開されたもので、1984年から制作された映画です。

1980年前半はちょうどディズニー映画を一世風靡させたアニメーターがこぞっていなくなってしまったのもあり、ヒット作に恵まれない時代でした。

1984年当時のディズニーは投資家による会社乗っ取られの危機や内部での権力争い(一族のロイ・E・ディズニーが当時の社長ロン・ミラーを追放)で窮地に立たされていました。

そして同年にディズニー社の組織改革が行われます。
パラマウント・ピクチャーズのマイケル・アイズナー氏がCEOに就任。アイズナー氏の元同僚であるジェフリー・カッツェンバーグ氏が映画事業部の責任者に。ワーナー・ブラザース・ピクチャーズのフランク・ウェルズ氏が社長に就任しました。

この組織改革は、ディズニー史上一番の大好転機とも言えるでしょう。

特にカッツェンバーグさんがディズニーに来なかったら、ディズニールネサンス時代は来ていませんし、今のディズニー映画はないと断言できます。

カッツェンバーグさんは元々長編小説「オリバー・ツイスト」の舞台を現代ニューヨークに移し替えたミュージカル映画を企画していました。
本作品はそれをディズニーアニメーション風に動物たちにアレンジしてできた作品です。

またカッツェンバーグさんは、当時ブロードウェイの舞台音楽界にいたアッシュマンさんの才能をちゃんと見つけ出していたんです。
彼がアッシュマンさんに一緒に仕事をしないかと声をかけたのがきっかけでアッシュマンさんはディズニーに入社することができたのです。
そしてアッシュマンさんは「オリバー」のOP曲のソングライターに抜擢されます。

そうカッツェンバーグさんがアッシュマンさんを呼ばなければ、アッシュマンさんと共にソングライターを行っていたメンケンさんもディズニーに携わることがなかっただろうし、あの「リトルマーメイド」も「美女と野獣」も「アラジン」もこの世から生まれていないのです。

「オリバー」の超豪華なキャスティングに関しては、もしかしたらCEOアイズナー氏のマネジメント力のおかげもあったかもしれません。

この組織の大改造を経て、「オリバー ニューヨーク子猫ものがたり」は全米興行収入No.1を記録し、ディズニー暗黒時代を打開することができました。
本当によかった。

私はこの作品をディズニー暗黒時代の作品の中に入れてしまうのが可哀想で仕方がないのです。
なので「ディズニー大確変作品」と呼んでいるのですが、いかがでしょうか。




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