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保存版「培養肉」情報総まとめ①培養肉が注目される背景

まとめ

近年、動物を原料とする産業において、サステナビリティや公衆衛生の観点から、生産や投資、消費活動、周辺ルール等について見直しが進んでいる

その一環として、植物性代替肉が社会課題に敏感なミレニアル・Z世代を中心とした世代の食生活に、急速に浸透し始めている

しかし一方で、多くの人にとって「お肉」を完全に食生活から排除することは困難であろう。

このような背景から、培養肉は、サステナビリティに貢献し公衆衛生を保ちながら、今後急増する肉食需要を満たす、いいとこ取りの食肉生産技術として注目されている。

自分用に上記ストーリーに沿って様々なエビデンスをまとめました。ストーリー自体は筆者個人の解釈であり、様々な見方があって良いと思います。

動物由来資源を用いた産業に見直しが迫られている

畜産業界をはじめとする、動物由来の食糧やその他資源を用いた産業に対して、その環境負荷の大きさが注目を浴びている。また、パンデミックによる経済的被害をきっかけとして、同産業に対し、原料及び生産方法に関する見直しが迫られている

背景①動物由来資源の環境負荷の大きさが注目されている

肉類と乳製品は世界の農地の83%を消費(私たちの消費するタンパク質の37%とカロリーの18%しか提供していないにも関わらず)

森林破壊の要因の67%は飼料の生産によるものである

人間の消費する淡水の約4分の1が動物由来の資源に用いられている

世界の温室効果ガスの約4分の1の排出量の要因となっており、排出量首位のエネルギー産業とほぼ同量を排出

背景②従来の動物由来製品生産プロセスにおける脆弱性が甚大な被害を生んでいる

・新型コロナ禍における食肉生産の遅延が、食肉の品薄・価格高騰を招いた

例えば米国では、新型コロナ禍にて食肉加工会社大手のTyson社の工場を始めとする食肉加工工場の閉鎖が相次ぎ、食肉処理施設の操業継続に関する大統領令発令という大事にまで発展

これとほぼ同時期の対照的な事例として、代替肉のリーディング企業であるBeyond Meat の株価が一週間の間に最大約40%上昇した。代替肉製造は、食肉加工に比べて手作業が少なく生産工程を自動化しやすいことから、安定してタンパク質源を供給することができたと言われている。

畜産業界における抗生物質の乱用により耐性菌の増加が世界で加速
医療用の重要な抗生物質の約80%を人ではなく動物のために消費する国もあるとして、WHOが警鐘を鳴らす
集約型畜産により感染被害が拡大

耐性菌による家畜業界でのパンデミックは特に、世界で食肉生産量上位国である中国やブラジルなどで深刻な問題となっている。

中国では2013年時点で世界の抗生物質の約半分である約162千tを消費し、そのうちの52%が動物に投与された。2018年には動物へ投与する抗生物質の量が57%減少したものの、同年にはアフリカ豚コレラで1億8000万頭の家畜豚が死亡する被害を被った(国の総在庫の40%に相当)。この事例のように、依然として抗生物質使用による弊害の大きさに懸念が残る。

抗生物質の過剰使用と集約型畜産によるパンデミックの例として、デンマークで新型コロナウイルスに感染したミンクが1700万匹殺処分されたことなども記憶に新しい。

見直しを迫られた動物由来資源産業に変化が

上の背景をうけて、投資ポートフォリオ、事業ポートフォリオ畜産方法消費のあり方を見直す動きや、ルール整備の見直し・新規構築の動きがある。

背景①投資の見直し

世界経済を牽引するミレニアル・Z世代が高く評価するサステナブル事業への投資が拡大

オートミルク企業Oatlyへの約200億円の投資を主導したBlackstone によると、サステナブルなフードシステムの需要は、主にミレニアル世代やジェネレーションZ世代に牽引されて高まっているとのこと。

また、Bank of Americaによると、Z世代の経済力が急成長しており、2030年までには$33Tn 以上の市場に成長し(成長率400%)、世界の総収入の1/4以上をカバー、2031年にはミレニアル世代の経済力を上回ると予想。

・一部のNPOは畜産への投資に警鐘を鳴らしており、ドイツ銀行など一部の金融機関はエクスポージャーについて監視を強めるとコメント

(もちろん、畜産関連のポートフォリオ売却の動きは現在なく、注視段階である。しかし、植物性代替肉や培養肉の普及に応じて、投資家は畜産業界への投資に対し、現在とは違った見方をする可能性がある。)

植物性代替肉業界において、数百億円規模の大型投資が相次ぐ

Impossible Foodsが2020年3月に、直近ラウンドにて約$500mを調達したと発表。本投資により同社は創業以来$1.3bnを調達したこととなる。

またグローバルで植物性代替肉を展開するLIVEKINDLY co.が、2020年3月に約$200mの出資を受け設立された。その後わずか7ヶ月後に追加で$135m調達した。

背景②事業ポートフォリオの見直し

UnileverやNestle、味の素などのグローバル企業が、将来の収益源として代替肉市場に注目することを伺わせるニュースが目につく。

また、マクドナルドバーガーキング、日本ではFreshness Burgerが代替肉パテの導入を行ったことも話題。

背景③畜産方法の見直し

畜産業界内にて環境負荷の低減に向けた取り組みが行われている例もある:抗生物質不使用の「オーガニックミート」や、牛のゲップにより排出されるメタンガスを最低限にする飼料添加物マスクの開発・使用など

しかしながら、例えば抗生物質の投与を抑えた「オーガニックミート」は、従来の肉と同量の温室効果ガスを排出するという研究結果があるなど、動物を育成する事による生産活動そのものを見直さない限り、解決しない懸念点も多いようである。

抗生物質の乱用見直しによる耐性菌発生の防止に関して、WHOによる呼びかけをきっかけに取り組みが進んでいる地域もある

WHOは「効果的な抗生物質の欠如は、突然の致命的な病気の発生と同じくらい深刻なセキュリティ上の脅威である」として、農家と食品業界が抗生物質の日常的な使用をやめることを推奨している。

また、アフリカ豚コレラの影響で、中国では畜産における抗生物質の利用を抑える方針を固めた。

背景④消費活動の見直し

・2019年時点の世界の食肉市場において1%をカバーする代替肉(市場規模$14bn)が、2029年には世界の食肉市場の10%をカバーすると予想される(市場規模$140bn)

ベジタリアンではないが、肉の消費量を抑え、代替肉など環境コストの低いものを取り入れようとする消費者群「フレキシタリアン」が代替肉市場の成長を牽引

Plant Based Foods Association(PBFA)によると、現在、アメリカ人の3分の1はフレキシタリアンであるらしい専門家によると、ビーガンや菜食主義者ではなく、フレキシタリアンが市場の爆発を促進しているとのこと。

背景⑤ルール整備の見直し・新規構築

・畜産や代替肉分野に関して、国家戦略として外資受け入れを推奨

2020年7月に中国はアフリカ豚コレラなどの被害を受け、家畜の繁殖や植物性代替肉への外資受け入れを奨励することを発表。

・欧州議会は、植物性代替肉商品に対して「ソーセージ」「バーガー」などの肉を連想させる名称をつけることを事実上「承認」した

厳密には、2020年10月欧州議会において、植物性代替肉商品に肉を連想させる名称をつけることを禁じる法案が反対多数で【否決】された。

日本では2020年9月、農林水産省が主催した「フードテック官民協議会」にて、産官学による代替肉周辺のルール形成向けて議論が開始された

それでも...やっぱりお肉が食べたい

動物由来の食糧やその他資源の消費に対して問題視するトレンドがあるものの、動物由来の資源を生活から排除することは想像し難い

・国連の予測によると、2050年に世界の人口は97億人に達し(+30%、対2015年比)、畜産物の需要は約70%増加する(対2015年比)

世界的には今後畜産物の需要は増えると予測されている。

また、肉、乳製品、卵が食生活の大事な要素である人は多く、革製品を好んで身につける人も多い。日本も出汁、和牛や寿司など、世界に誇る食文化が動物性たんぱく質に依存していることは間違いがない。

サステナブル・公衆衛生への貢献・肉食の維持のいいとこ取りをするなら、培養肉一択か?

動物由来の資源を用いた生産・消費活動のあり方が問われる中で、(1)環境負荷が低く、(2)家畜の育成期間を考慮すると従来の動物由来資源よりも短期間かつ効率的に生産が可能かつ(3)生産工程を自動化しやすくパンデミック下でも安定して資源を提供でき、更には(4)我々の動物由来の資源の消費欲を満たすことができる生産技術として注目に値するのが細胞農業である。

そして、細胞農業技術により生産されたお肉である培養肉は、サステナビリティに貢献し、公衆衛生に貢献しながら、今後急増する肉食需要を満たす、いいとこ取りの食肉生産技術として注目に値する。

では細胞農業や培養肉とは具体的には何なのか?

それは、今後の記事で解説させていただくことに致します。

参考

※本記事ではメインでは触れないが、培養魚や培養革、培養毛皮などもほぼ同様のロジックでサステナブル、かつ公衆衛生に貢献する魚、革製品、毛皮製品を生産する方法となる可能性が高く、魚・革・毛皮の急増する需要を満たすものとして注目されている。


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