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出光美術館 「江戸絵画の華 第2部 京都画壇と江戸琳派」

出光美術館の「江戸絵画の華」第2部が始まりました。第1部の様子もよろしければこちらからどうぞ ↓

見終わった感想は「素直に頭に入りやすい」一方でちょっと物足りなさを感じるかなというところ。作品リスト見ると第1部43点 第2部42点と作品数はほぼ変わらないのですが、第1部の方が時間もかかり、エネルギーも消耗した感があったように思いました。とはいえ決して見応えがないのではなく、単に好みや感動ポイントの違いなのだと思います。

円山応挙「虎図」たまらないです
チラシの内側のイメージ

屏風でいいなと思ったのは 「松に鶴図屏風」森徹山 未完成の千羽鶴が描かれています。コレクションを構築したエツコ夫人の言葉が紹介されていて、「千羽鶴の図は実際には600羽くらいのものだが、これは1300羽近く描いてある」とおっしゃったとか。そして未完成なのは「制作途中で画家が幕府に召し抱えられたから」だそうです。未完成の部分は空を飛んでいる部分がほどんとでしたが、色をつけていないその下絵のままだからこそ、見る者が心を重ね合わせて何倍もの広がりを感じるように思います。

チラシの表紙になっている「虎図」円山応挙 毛描きが素晴らしくて単眼鏡で舐めるように見てきました。ヒゲの色も左右で違い、光やツヤを感じさせます。1本1本の毛が浮き出てくるようで、立体感半端ないです。つい撫でたくなりますが、猫ではありません。他にもいくつか虎図が出ていましたが、竹が付こうが、2頭になろうが応挙の虎にはかないませんでした。

構図が美しいのは 「撫子に蜻蛉図」亀岡規礼 撫子の花が花びら1枚ずつのキザキザも忠実に描かれて全体の構図がS字になっていて、トンボの緑の複眼も透ける羽もそれは見事です。「優美」って言葉がピッタリ。こういう絵をグッズにして欲しい。ハンカチとかチケットフォルダーやクリアファイル、ノートの表紙…使いやすそうです。Tシャツもいけるのでは。それくらいいいなぁ!と思いました。

続く「美人狗児図」山口素絢 足元のワンちゃんに裾を引かれる美人さん。帯の柄も繊細に描かれているのですが、着物のグラデーションが見事です。下に赤い襦袢を着て、上から青い絽か紗の着物でしょうか。色合いで透け感が感じられる、西洋画的なアプローチかなと思いました。

昨年もここで見た記憶のある「仏涅槃図」森徹山 お釈迦様が亡くなり人々が囲んで悲しんでいる図で、動物・鳥・昆虫・鬼?たちも人々の周りを遠巻きにしています。お猿さんは手を目に当てて悲しそう。お釈迦様を見つめている動物もいれば、天を仰ぎ嘆き悲しむ姿も。鳥も雀のような小さいものは前方に固まってます。
よーく見ると蟻とかムカデも。。。単眼鏡必携です。

思わずハッとするのは「秋草図」鈴木守一 普通の掛け軸と違うのは一目でわかります。絵がはみ出てます。。。普通の掛け軸は絵の上下に横に細長い綺麗な布(一文字)絵の周りにも綺麗な布(中廻し)が貼られてそれが見どころでもありますが、この絵はその表装が描かれています。描表具というのだそうです。
軸の上の方からペロンと垂れている2本の布(風帯)も描かれて、その間にはアゲハ蝶が優雅に舞う。。。今でいう「映え」にこだわった作品のように思いました。
絵葉書買いましたよ。軸をかける場所はなくとも、絵葉書なら飾れるかなと。

「秋草図」鈴木守一 出光美術館蔵(絵葉書より)
葉の色のグラデーションが素敵です

いかにもザ・日本の古美術だなぁと感じたのが「四季草花図・三十六歌仙図色紙貼交屏風」酒井抱一 (チラシの内側イメージ右上)金色の屏風に四季の草花が描かれ、右から左へ春夏秋冬と季節が進み、歌人の絵と和歌が記された色紙が貼られています。柿本人麻呂・在原業平・小野小町・伊勢・紀貫之くらいはすぐにわかったけど、どんな歌が貼られているのかは読めず。歌も季節に合わせているとしたらすごいなぁ。こんな屏風が家にデンとあったらあっという間に三十六歌仙覚えちゃいそうです。

同じく酒井抱一の「十二か月花鳥図」は12幅の軸のセット。(チラシの内側イメージの右上から2番目)どの軸にも花と鳥(または虫)が描かれているのですが、まるで擬態しているかのようによく見ないと気づかないものも。花と思ったら鳥だったわ、、、とか。月替わりで床の間の景色が替わるのは素敵だろうなぁ。

鈴木其一の絵もいくつか出ている中でいいなと感じたのは「春夏草図」「懸蓬莱図」の2点。春夏草図に描かれているのは「華鬘草」(ケマンソウ)と解説にありましたが、茶席で見たことのある「鯛釣草」(タイツリソウ)でした。ハート型の花が並んでぶら下がるように咲くのですが、この軸をかければ茶花はいらなくなってしまいますね。(実際の茶席は絵画を飾ることは少ないです)
懸蓬莱図はお正月の飾り物を描いたもので、粋だなぁと思ったのは絵の中の扇の絵に作者の署名を入れてあるところ。絵の余白に署名や落款がないので、まるで本当の飾り物みたいです。この絵葉書を求めましたが、ぜひ年賀状シーズンにもう少し優しいお値段で出してくれたらうれしいなぁ。

「懸蓬莱図」鈴木其一 出光美術館蔵 (絵葉書より)
海老の描写が見事です

最後のピックアップは「鍾馗騎獅図」中野其明 その名の通り獅子に乗った鍾馗様の絵。鍾馗様も獅子も目力があってもうダブルパワーの魔除け、って感じです。
ようやく行動制限がない世の中になじみが出てきたのか、美術館にもそれなりに人が出てきました。また行動制限に戻らぬように、しっかりと守って欲しいなぁと思いました。

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