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現役銀行員が解説!なんで1年以上先の話までしとるねん!~アメリカの金融政策について~後編

「なんで1年以上先の話までしとるねん!」と思った方へ。

9月24日の日経新聞朝刊1面にあった

「FRBが量的緩和の縮小開始を11月にも決めると表明、2022年末までに利上げする可能性も視野に入れる」

という記事の話です。小学生でも分かるように説明していきます!


コロナショックの影響を受けて大幅に下がった株価。28,000ドル台→19,000ドル台まで下がりました。たった1ヶ月で。この大暴落したマーケットを戻すために、アメリカは何をしたのでしょうか?

◆コロナショックで大暴落したマーケットを戻すために、アメリカがしたこと


1.米国救済計画 1.9兆ドル
▼どんな政策?
→失業給付やコロナ対策
1日最大1,400ドルを給付、ワクチン接種強化など
▼財源はどこから?
→緊急対策のため、全額を債務

2.米国雇用計画 8年で2兆ドル
▼どんな政策?
→インフラや環境、研究開発に巨額投資
▼財源はどこから?
→法人税率上げ(21%→28%へ)
 多国籍企業の海外利益に対して21%を課税
 今後15年間で2兆ドル以上の財源を調達予定

3.米国家族計画 10年で1.8兆ドル
▼どんな政策?
→格差是正へ子育て支援や教育への負担軽減に投資
1)8000億ドル:子育て世帯、低所得者世帯に対する減税枠拡充
2)5000億ドル:無償教育拡充、大学進学・卒業支援拡充
3)2500億ドル:保育支援拡充
4)2500億ドル:有給休暇、病気休暇などの拡充
▼財源はどこから?
→富裕層への個人所得増税やキャピタルゲインに課税
1)個人所得税最高税率を37%→39.6%へ引き上げ
2)キャピタルゲイン税を20%→39.6%へ引き上げ(いきなり2倍!)
※100万ドル(約1億9000万円)の所得がある富裕層の株式や不動産などにかかってくるもの。

かなり大規模ですよね。
そして、FRBはどのような金融政策をしたのでしょうか?

◆FRBがしたこと

金融緩和には2つの方法があると前回話しました。

◆1◆量的緩和
=お金を発行しまくって、じゃぶじゃぶ流す
◆2◆利下げ
=政策金利を下げる

◆1◆量的緩和

コロナショック以降、FRBは大きな量的緩和を行ったのです。例えると、アメリカは、FRBから毎月1200億ドルのお小遣いをもらっているというイメージ。FRBが、アメリカの国債とMBS(住宅ローン担保)を毎月計1200億ドル購入しているんです。

今はこのお小遣いがあるから、アメリカ経済が回っているのです。でもこのお小遣い、いつかは減らされてそのうちストップされる。そして返済しないといけない。

ただ、お小遣いを減らすタイミングを間違えると、不況になってしまいます。いきなり明日からお小遣い減らすわ!って言われたらビックリしますよね。だってお小遣いがある前提で生活していたから。

だから、事前に言っておくのです。ビックリさせないために。マーケットはビックリするとだいたい株価が下がります。想定外のことに弱いのです。お小遣いが減らされるタイミングが想定の範囲内だと、株価への影響は少ないのです。このことを「織込済」という言い方をします。

なので、FRBは事前告知を怠っていません。前回のFOMC(FRBの会議みたいなもん)で、「早ければ今年の11月にお小遣い減らすで。」と言いました。お小遣い減らす=量的緩和の縮小開始です。ちなみに「2022年1~3月にはお小遣い減らすかもしれへん」というのがマーケットの共通認識でした。ちょっと早まりましたね。

◆2◆政策金利

金利も同じような動きです。
2019年8月から少しずつ下げていたところに…コロナショックがきて、2020年3月には最低金利の0.25%へ。今もその状態が続いています。

で、この金利も、最低金利0.25%をずっと続けるわけにはいかない。そろそろ上げていかなきゃ。金利を上げ下げするには判断材料があります。物価とか失業率とか。そして金利も「判断材料がいい感じやから来月から金利上げるわ!」って言われたら、やっぱりマーケットはビックリしちゃうわけですよ。だからそうならないように、FRBはかなり事前告知しています。「2022年末までに利上げするかも」と。

FRBは以前、(マーケットにとって)急な金融政策をして、マーケットが大きく動いてしまったことがあるのです。だから今回はかなり慎重に、事前告知をしているのです。金融政策が、マーケットに大きな影響を与えないようにね。

ということで、日経新聞の「FRBが量的緩和の縮小開始を11月にも決めると表明、2022年末までに利上げする可能性も視野に入れる」という意味が分かりましたか?これを見た時に「なんで1年以上先の話までしとるねん」と思った方は、「なるほど」と思ってもらえたでしょうか?

歴史や背景が分かると、新聞を読むのがより楽しくなると思います。


日経xwomanテラスにも書いています。
アンバサダーやってます。
こちらの記事も、もし良ければ見てやってください!


前回の記事とあわせて読むと、より理解が深まるかと。
分かりやすいと大好評でした!


(2,071字)

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