投資を始める前に、考えて欲しいこと

「NISAやっけ?あれで毎月積み立てしてたら、元本36万円が50万円ぐらいになってん!すごない?たった2年でこんなに増えてんで!貯金より絶対投資やわ。」


先日、7ヶ月ぶりに会った弟が言った。久々に会って話す話題が投資の話とは、なんと言うか我が家らしい。そして銀行で個人営業を10年以上やってる姉にNISAの話をふるなんて、いいセンスをしている。

「それはNISAがすごいんやなくて、投資対象がいいからやで」「私もNISA好きやし使ってるけど、NISAって投資じゃなくてあくまで制度やで」「2年前から始めたんやと、何に投資しても利益出るやろうなぁ」「これから相場が下がる局面になったら、NISAをどう評価するん?」「相場に絶対はないから、絶対NISAがいいとかそんなことはないんやで」

などと、一瞬にして200文字以上の言葉が頭の中で駆け巡った。が、とりあえずこれらの言葉は頭の中でストップしておいた。

結局私が言ったのは「それってつみたてNISAやんな?うん、積立はいいと思うで。」という言葉だけだった。



アベノミクスが始まった2013年あたりからだろうか。マーケットは総じて良い。もちろん、上昇一辺倒ではなかった。2015年にはチャイナショック、2018年には米中貿易戦争、そして2020年にはコロナショックがあった。だけど、今やそれらのショックを大幅に上回っている株価。2013年頃から投資していて長期保有している人で、損した人はほとんどいないんじゃないだろうか。

数年前から投資を始めた人が増え始めたように思う。そして彼ら彼女らを応援するかのように、マーケットも上昇してきた。世界経済は6%成長するとIMFが発表したし、中長期目線で見ると世界経済は上向くと私も思っている。


でも、なんだろう、
最近ちょっとした違和感がある。

「なんとなく周りがいいと言ったから」「このマーケットに乗ったら儲かりそうだから」という理由で、投資を始めた人が多くなってきた気がするのだ。


マーケットや経済を全部学んでから投資をしろ、と言っているのではない。まずは実際に投資をしてみる姿勢はとーっても良いと思っている。私だって初めて投資したのは社会人1年目の6月、まだ何もわかっていなかった時だったし、今だって世の中のすべてを分かって投資しているわけではない。

でも、学ぼうとしないまま「なんとなく儲かりそうだから」という理由で投資を始めた人が、そして投資してからも学ばずにそのままにしている人が、実際に利益を出している。そしてそのまま投資の金額が大きくなっていっていつかどこかで損した時に、彼ら彼女らはどうするのだろうか。



フェデリティが、興味深い調査をした。フェデリティというのは、資産運用の大手の会社だ。ちなみに私は、他の運用会社と比べてフェデリティの運用をけっこう信用している。

そんなフェデリティが、世界各国の合計で約1万7000人に家計の状況を聞いたらしい。


<Q.老後資産形成への主観>
A.極めて順調に進んでいる
日本   2%
イギリス 12%
ドイツ  10%
中国   10%

A.全く進んでいない
日本   29%
イギリス 22%
ドイツ  8%
中国   2%

(2020年3~5月 フェデリティより)

あくまでも、アンケートに答えた人の主観である。
だけど、老後の資産形成は進んでいないと思っている人が、日本には多いらしい。

というか「老後の資産形成が進んでいる」というのは、どういった状態なのだろうか。「極めて順調に進んでいる」2%の人達は、何をもって「老後の資産形成バッチリ!」と思ったのだろう。



学生時代はよくテストがあった。中間試験に期末試験。社会人になってからも、様々な資格試験を受けてきた。それらの試験で「勉強がちゃんと進んでいる」と思えた時は、どういう時だったっけ。

それは、試験勉強の範囲に対して、しっかりと勉強した時だった。

え、当たり前??

そう。

「今している努力が順調に進んでいる」と判断するためには、「どこに向かっているのか」を明確にしないといけない。

向かう方向がハッキリしないままでは、マラソンは出来ない。


資産形成も同じ。まずはどこに向かっているのか、何のために資産を増やしたいのか、そこを考える必要がある。そしてその上で、生きていく上でお金がどのぐらい必要になるのか知ることが必要だ。そうでないと、5000万円貯めても1億円貯めても、不安はぬぐえないと思う。


参考までに、ちょっとFPっぽい話をしてみよう。
人生の3大出費は、住宅資金、子どもの教育費、老後の生活費と言われいている。ファイナンシャルプランニングの世界ではもはや耳タコのような話。

住宅資金 ・・・約4000万円
教育費@1人  …約1000万円
老後の生活費  …約2000万円

例えば、夫婦2人で、子ども2人を育てようと思うと、
住宅4000万円+子ども1000万円×2人+老後2000万円×2人
=1億円

が必要となる。

夫婦で1億円が必要ということは、単純計算すると夫と妻でそれぞれ5000万円。65歳まで働くと仮定すると、65歳までに5000万円ずつ貯める必要がある。

これが、日本で生きていく上での平均値。


という話が、以前はハマった。だって、ひと世代前は【働くパパ・専業ママ・子ども2人・終身雇用で定年60歳・80歳ぐらいでコロリ】というモデルが一般的だったから。高度経済成長期では、こういうモデルが一番ハマったのだ。

でも、今は違う。

子ども1人あたり1000万円という数字を見て、そもそも人生設計に子どもがいるのか。いたら何人なのか。そして子どもは公立なのか私立なのか、それとも海外留学も視野に入れているのか。選択肢はいくらでもある。

さらに言うと、子どもが欲しかったけれど出来ない場合もある。子ども2人の予定だったけれど、2回目の妊娠で3つ子が生まれて想定外の4人育児が始まった人もいる。

老後だって同じだ。老後資金に2000万円必要だと言われているけど、何歳まで働く予定なのか。

老後資金2000万円とは、老後にかかる平均支出-もらえる年金=毎月54,000円不足するという計算からなっている。老後資金2000万円を分解すると、毎月54,000円×12ヶ月×30年。つまり、60歳で退職して90歳まで生きる計算である。

だから、あなたが70歳まで働く予定なら老後資金は1300万円で足りるかもしれないし、現役時代に個人年金の仕組を作っておけば、500万円でいいかもしれない。


どのような人生を歩むのか、そこにモデルはない。みんなが一緒だった昔とは違うのだ。今はみんな違う。みんな違ってみんないい。結婚してもしなくてもいいし、子どもがいてもいなくてもいい。終身雇用はなくなってきているし、定年だって60歳でなくなってきている。

そんな中で、どのような人生を歩むのか、まずはライフプランをイメージしてみる。そしてそれを軸に、マネープランニングをしてみる。そうすると、人生でどのぐらいお金が必要なのかが見えてくる。

もちろん、一度決めた軸を修正してもいい。というか、数年おきに見直して、何度でも修正していく必要があるだろう。


何のために資産を増やしたいのか、そしてどのぐらいのお金が必要なのか方向性を確認する。その次にお金の育て方という手段を学べばいい。そうすれば、お金に対する不安は多少減るんじゃないかな。

あなたがどういう人生を歩みたいかライフプラングをしたら、資金計画を立ててそれを実現に導く方法をサポートする職業がある。それがFP、私の職業だ。

投資と言うお金の育て方を学ぶ前に、「お金を育てたゴールはどこにあるのか」「なんのために資産を増やしたいのか」を自分の中で明確に持つことが大切。

これが、あなたの大切な資産を守るはじめの第一歩。

(3,240字)


※明日も記事を更新する予定なので、是非読んでください!



参考までに、金融庁のライフプランシュミレーションを貼っておきます。あ、金融庁の回し者ではないよ。




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