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【宮崎と秋田をめぐるMeet Up】日向夏とクラフトサケが挑戦するLOCAL to LOCALの可能性

宮崎県東京事務所流通物産担当課長の深田直彦さん、宮崎市東京事務所の池袋耕人さん、稲とアガベ株式会社の岡住修兵さん、めぐるめくプロジェクトの広瀬

めぐるめくプロジェクトでは、地域でタベモノヅクリ(※)に挑む方々の出会いの場をつくるべく、日本各地の食のプレーヤーと手を取り合ってイベントを開催しています。
 
※タベモノヅクリ:めぐるめくプロジェクトで定義している「食の生産・加工」を表す言葉。食べ物+モノづくりの造語。
 
今回のテーマは、宮崎県が誇る果物「日向夏」と秋田県男鹿でクラフトサケ醸造所を営む「稲とアガベ」のコラボレーションをきっかけに、地域と地域がつながることで生まれる文化創造についてのイベントを実施しました。


宮崎県東京事務所流通物産担当課長の深田直彦さん、宮崎市東京事務所の池袋耕人さん、稲とアガベ株式会社の岡住修兵さんによる、宮崎市と稲とアガベの共創から生まれたクラフトサケの話をもとにした、地域間の連携から生まれる可能性を感じさせるトークが繰り広げられました。

<コラボレーションにより生まれた「稲とアガベと宮崎日向夏」>

登壇者のご紹介

宮崎県東京事務所流通物産担当課長 深田直彦 さん

農業試験場での研究業務、本庁での園芸振興や農地政策、輸出促進の業務等を経て、2023年より現職。主に宮崎県産の農林水産物・食品の販路拡大の支援を担当している。

宮崎市東京事務所 副所長(シティセールス)池袋耕人さん

市民税課、介護長寿課、財政課、国保年金課、商業労政課まちなか活性化室の担当を経て2021年より現職。シティセールス業務の一つとして、首都圏での公民連携や食の販路拡大を担当。 プライベートでもまちづくりに従事し、ごみ拾いからまちの変化を捉えてイベントなどを開催する「宮崎ベースキャンプ」を立ち上げ、「地域に飛び出す公務員アワード2016」(首長連合主催)を受賞している。

稲とアガベ株式会社 代表取締役社長 岡住 修兵さん

神戸大学経営学部を卒業後、秋田県・新政酒造で酒造りを学ぶ。2021年に秋田県男鹿市に「稲とアガベ醸造所」をオープン。新ジャンルのお酒「クラフトサケ」造りを行うとともに、レストラン「土と風」を経営。2023年春、食品加工所「SANABURI FACTORY」を立ち上げ、廃棄リスクのある酒粕をマヨネーズにする加工生産をスタート。また同年8月一風堂監修レシピのラーメン店おがやを立ち上げる。今後はホテルや蒸留所の建設を予定しており、多くの優良な雇用を創出することを目指す。
クラフトサケブリュワリー協会初代会長。

外皮も一緒に食べる!? 宮崎県を代表する果物「日向夏」

まずは、今回のイベントの主役「日向夏」の特徴について宮崎県庁の深田直彦さんからご紹介。日向夏は宮崎原産で、さわやかな甘味のある果肉と白い皮のふわふわした食感が特徴の柑橘類です。
 
 
深田さん:日向夏は現在の宮崎市のエリアで1820年に見つかったと言われています。かやぶき屋根の修理をしていた職人さんが屋根の上で作業をしていたときに見つけて、食べてみたら美味しかったというのがはじまりだと言われています。
 
宮崎の日向夏の旬は3〜5月、夏の始まりを思わせる果物です。在来種の日向夏はすこし酸っぱいのが特徴でしたが、現在は品種改良が行われて甘味が増しているとのこと。日向夏のおいしさを楽しむためには、食べ方にちょっとしたコツがあります。
 
深田さん:りんごのように外皮を剥いて、芯の部分を落とすように削ぎ切りして実を取り出します。ふわふわとした白皮部分にもほんのり甘味があるので、白皮と果肉を一緒に食べることで日向夏独自の甘味を楽しむことができます。ほかの柑橘類だと白皮を剥いてしまうものも多いですが、日向夏は白皮も一緒に食べる方がおいしいんです。
 
加工品との相性も良く、いろんな方法で味わうことができる日向夏。宮崎県では日向夏を楽しむ方法を県民からアイデアを募ったこともあるそう。新しい商品の開発や皮剥き大会を行うなど、日向夏の楽しみ方の模索を続けています。

深田さん:日向夏の食べ方がなかなか広く伝わっていないというのが、宮崎県としての課題なんです。白皮の部分も一緒に食べるということを正しく伝えていきたい。また、生で食べることだけではなく、いろんな企業とつながって加工品を生み出し、日向夏のポテンシャルを広げていくことも生産者のためになるのではと考えています。今回のイベントも日向夏の魅力を知るきっかけになると嬉しいです。

「メディアとしてのお酒」が伝える宮崎の魅力

続いて、宮崎県庁・深田さん、宮崎市東京事務所副所長・池袋さん、稲とアガベ株式会社・岡住さん、めぐるめくプロジェクト代表の広瀬によるトークセッションへ。
宮崎市東京事務所の池袋さんは、宮崎市への企業誘致、公民連携などの仕事をおこなっており、食にまつわる仕事にも力を入れています。

池袋さん:宮崎県は自然環境豊かな場所です。山と海の食材を楽しめるだけではなく、サーフィンやゴルフなどアクティビティも楽しめる土地。正直まだまだPRしきれていない魅力がたくさんある場所なんです。
 
農学部だった池袋さんは、学生のころから宮崎の特徴を使った酒作りはできないだろうかと考えていたそう。クラフトサケという文化を知り、リサーチを続けるなかでめぐるめくプロジェクトに出会い参加。めぐるめくプロジェクトを通じて、稲とアガベとの日向夏クラフトサケ造りに至りました。
 
池袋さん:元々好きだった酒と宮崎の豊かな自然が掛け合わさることで、どんな変化がおきるだろうと未来に期待を寄せています。
 
稲とアガベ株式会社の岡住さんは秋田県男鹿で醸造所を営み、クラフトサケという文化を作りあげた張本人。日本酒やワインなどにはあてはまらない新しい酒造りを行っています。

岡住さん:僕たちはお酒のことをメディアだと思っています。お酒を通して、飲んだ方に地域の魅力が伝わり、その地域に興味が出るんですよね。酒造りやコンテンツを通して、秋田県男鹿という町の魅力を伝えることを目指しています。
 
今回は宮崎市のコラボレーションで、日向夏風味のクラフトサケ造りを行いました。さらに日向夏の魅力を伝えるために、コンテンツも提案しています。
 
岡住さん:日向夏を使ったお酒です!とただ販売するだけでは、本質的な魅力が伝わらないと思ったんです。お酒を通して、宮崎と秋田を繋げるというテーマで、おつまみの開発や飲食店とのコラボレーションを行いました。このイベントもその一環です。

地域と地域をつなぐ「売り出し方」とは

池袋さん、岡住さんの紹介を終えたところで、「地域と地域のつながり」というテーマで、それぞれのご意見を伺います。地域と地域がつながることによる面白さはどんな部分にあるのでしょうか?

<めぐるめくプロジェクトの広瀬がモデレーターをつとめました。>

岡住さん:現代は東京に情報が集まっていて、文化が生まれ発信する場所になっています。昔はそうじゃなかったんですよね。地域同士の交流によって生まれた文化もあったはずなんです。技術の発展で離れた土地とのコミュニケーションも容易になりましたが、そんな状況のなかでも、何かコンテンツを介してつながるというのが大切だと思います。単純に商品を作るだけではなくてイベントを開催するとか、直接顔を合わせてつながる方法も考えていきたいです。

<会場では参加者全員でコラボレーションにより生まれた日向夏クラフトサケを楽しみました。>

池袋さん:私は宮崎市東京事務所に配属されたのがきっかけで、はじめて宮崎を外から眺める立場になりました。宮崎のPR方法を考えるなかで難しさを感じるのが、都会からみた場合の価値を打ち出さないといけない部分です。地方には都会との比較だけでは見えない魅力もあると思っています。宮崎が持つ個性をさまざまな角度から見せるために、別の地域とコラボするというのは一つの方法として有効だと感じています。
 
深田さん:地域と地域をつなげた売り出し方はいろんな方法があると思っています。例えば宮崎のマンゴーと同じ時期に旬を迎える山形のさくらんぼをセットにしてギフト商品を作るというアイデアも面白そうだな、なんて。各地方で行われている物産展の様子を見ていると、互いの地域の名産品に需要があることがわかるんです。東京などの大消費地に頼らず、地域同士で消費を増やしていく方法もあるのではと思っています。
 
話題は秋田と宮崎それぞれの酒文化に移ります。焼酎が有名で酒蔵も多い宮崎、一方で日本酒の文化がある秋田県。そして稲とアガベは醸造のノウハウを持っています。互いのノウハウを掛け合わせることで新たな可能性が見えてきます。

岡住さん:秋田は日本酒が多く作られる場所ですが、焼酎は少ない。宮崎は真逆ですね。今回のコラボレーションの先に補い合う関係性があっても面白いなと思います。秋田の素材を使って宮崎で酒造りをしたり、その逆に取り組んでみたり。そういった動きがあると、このコラボがさらに価値あるものになると思います。
 
 
池袋さんも今後のコラボレーションへ期待を寄せます。
 
池袋さん:今回は宮崎の名産を使ったクラフトサケ造りでしたが、次は秋田の名産を使って宮崎でクラフトビールを作るなども面白そうだなと思っています。互いの名産品やノウハウを生かした商品作りができたらいいですね。宮崎側としては金柑を使った加工品に期待したところです。
 
岡住さん:地域と地域のコラボレーションで加工品を増やして、各地の名産品をアピールしていくのは面白そうですね。めぐるめくプロジェクトに参画する企業も巻き込みながら進めれば、大きな取り組みにできるんじゃないかと思います。
 
池袋さんも今後の取り組みに大きな期待を寄せます。宮崎市は2024年4月1日で市制施行100周年を迎えます。これをきっかけに民間の意見も取り入れながら宮崎市を発展させていくべく、「宮崎市オープンシティ協議会」を立ち上げました。
 
池袋さん:この協議会のなかでフードビジネスもさらに発展させていきたいですし、めぐるめくプロジェクトの参画企業とともに進めていければという想いです。

地方/都会の区切りはないー大切なのは人に目を向けること

最後に地域と地域がつながって文化を創造していくうえで、大消費地・東京に何を求めるかという話題へ。
 
岡住さん:こういったプロジェクトをきっかけに、秋田や宮崎を知って足を運んでほしいなと思います。私たちも東京に住む人が関心を持てるような商品やコンテンツ作りを進めていきたいです。
 
池袋さん:こういった仕事をしていると、地方や都市という区切りはないんじゃないかと思うんです。どんな場所にも個性があって、想いを持って食に向き合う人がいる。地方に行くという感覚ではなく、面白いものがあるから行ってみたい、新しい体験をしてみたいという
想いで足を運んで欲しいです。そのためにも地域の個性が見える打ち出し方を模索していきたいですね。
 
土地ごとの魅力に触れることで生まれる「もっと伝えたい・届けたい」という思い。それは、地域と都市の違いや差をどう乗り越えるかということに意識を向けがちですが、実はもっと粒度の細かい「人」という単位に着目することで、その違いを溶かしていくかもしれない。そんな可能性を感じさせる言葉が、会場の思いをひとつにします。
 
秋田と宮崎がつながって商品が生まれ、今回のイベントをきっかけに人と人がつながる。次のアクションがうまれていきそうな期待を生む盛り上がりのなか、トークセッションは終了しました。

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