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地域内で湧き起こる熱量が、各地域へ次の世代へ伝承していく「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL- in 野沢温泉」


スキーシーズンを間近に控えた11月中旬。スキー場開業100周年を迎える長野県 野沢温泉村にて、「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL- in 野沢温泉」が開催されました。
 
「次の100年につながる循環を生み出す装置」をテーマに、地域内外のまちづくりの実践者が集結し、世代を超えてつなげていくべき「これからのまちづくり」のあり方を模索していきます。

第一部:わたまち歩き
吉阪隆正の設計した施設をリノベーションし、滞在者の新たな拠点となっている「野沢温泉ロッヂ」、世界基準で評価されるクラフトジンをつくる「野沢温泉蒸留所」、野沢温泉企画が運営する新たな地域の交流拠点「Music Bar GURUGURU」をめぐるプランです。野沢温泉の新しいライフスタイルを堪能しました。
 
第二部:わたまちサミット
全国でこれからの地域づくりの最先端を歩むプレイヤーによる講演やピッチの他、「地域に継続的な循環をもたらす装置とは」「地域のウチとソトを繋ぐ仕掛けづくりとは」をテーマとしたパネルトークを行いました。
 
全国各地で地域活性化にチャレンジしている方々、またそのチャレンジに関心のある方々にご参加いただいた今回の「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL- in 野沢温泉」。めぐるめくプロジェクトも開催に協力したこのイベント、思わず引き込まれる熱いトークを中心に、当日の様子をレポートします!


わたまち歩き-伝統と新しいライフスタイルが混じり合う場所-

まずは村を歩き、村を知る。「わたまち歩き」の案内をしてくださったのは、「野沢温泉を世界が憧れる村に」をビジョンに掲げ、野沢温泉のまちづくりに取り組んでいる野沢温泉企画の石田 遼さんです。

野沢温泉で音楽とお酒を嗜む「Music Bar GURUGURU」

最初に向かったのは、野沢温泉村のメインストリートである大湯通りにできた『Music Bar GURUGURU』。
 
「ここは、野沢温泉で音楽とお酒を愛する人達が集まるミュージックバーになります。お酒は、地元産のクラフトジンに加え、地酒、ビール、ナチュールワインなど美味しいお酒を提供。音楽にもこだわっており、プロデュースは音楽シーンをリードするレーベル Jazzy Sportが手がけてくれました。アンティークスピーカーでレコードを堪能いただけますし、DJイベントも定期的に開催しています」
 
昔ながらの商店街の一角に自然と馴染む、「Music Bar GURUGURU」。こだわり抜かれたおしゃれな空間に、参加者からは「すごい」「かっこいいですね......」と驚きの声があがります。
 
「冬はスキーシーズンで賑わいますが、夏はどうしても商店街のシャッターが閉まりがちに。通年で人が行き交う場所をつくりたいと思っていた矢先、ここの物件に巡り会いました。DIYでリノベーションをして2023年1月にオープン。今では音楽とお酒を楽しむミュージックバーとして地域内外の方々に愛されています」
 
「また店内には、野沢温泉にゆかりのある写真家・アーティストの作品を展示・販売もしています。内容は季節ごとに変わるので、来るたびに新しい野沢温泉の表情を楽しんでいただけると思いますよ」

麻釜(おがま)・湯澤神社で、村の伝統文化に触れる

新しいライフスタイルと、昔ながらの伝統が混じり合う。それが野沢温泉村の魅力の一つ。
温泉街を歩くと見えてきたのは、『麻釜(おがま)』です。麻釜とは、野沢温泉に30余りある源泉の1つで、100度近い熱湯がこんこんと湧き出ています。
 
「村の人々は、ここで野沢菜を洗ったり、野菜や卵をゆでたり。古くから村の日常生活に欠かせない場所となっています。人々の暮らしと温泉が密着している野沢温泉ならではの光景ですね」

さらに麻釜近くにある『湯澤神社』にやってきました。野沢温泉の伝統といえば「祭り」も、その一つ。例祭は毎年9月8、9日。花灯籠・灯籠行列があり、獅子舞も登場し、村をあげた盛大なお祭りです。
 
「中でも圧巻なのは、およそ100段にもなる急な石段を狭しと神輿を担いで上がっていく光景です。境内には松尾芭蕉の句碑や、樹齢数百年を超える大欅がそびえたっており、時代を超えて村の人々の営みを見守っています」

野沢温泉の地域を表現するお酒「野沢温泉蒸留所」

続いて向かったのは、地元の素材を活かした「ジン」と「ウィスキー」を造る『野沢温泉蒸留所』です。蒸留所に足を踏み入れた途端、ふわっと漂うお酒の香り。壁一面にはウィスキーの樽がびっしりと並びます。
 
ここはオーストラリアから野沢温泉村に移住したPhillip Richards(フィリップ・リチャーズ)さんが設立し、2022年12月15日にオープンした村が世界に誇る蒸留所です。
 
実際に世界から高い評価を受けており、2023年4月にアメリカで開催された、世界最大級かつ権威のある国際的酒類品評会「The San Francisco World Spirits Competition 2023(SFWSC 2023)」では、野沢温泉蒸留所のクラフトジン4種全てが金賞を受賞しました。
 
それではみなさんお待ちかねの試飲タイム!金賞を受賞したジン4種の飲み比べをしてみました。

「香りがどれもちがう」「こんなにすっと飲みやすいジンは初めて!」
 
野沢温泉村で採れた植物や果実などの素材を活かした、ここでしかつくれないクラフトジン。そんな村に根付く個性あふれるお酒を一杯ずついただきながら、野沢温泉村の「水」の豊かさを“五感”で堪能したひと時でした!

たまご型の宿泊施設「野沢温泉ロッヂ」

村をぐるっと一周し、遠くに見えてきたのは、緑の屋根が印象的なたまご型の建物。
 
「さて、最後に到着したのは、野沢温泉企画が手がける宿泊施設『野沢温泉ロッヂ』です。特徴的なこの建物は、1969年に巨匠ル・コルビュジエの弟子の建築家 吉阪隆正氏によって建てられました。メインゴンドラから徒歩1分という好ロケーションにあり、スキーはもちろんマウンテンバイクなどさまざまなアクティビティを楽しむことができます」
 
「野沢温泉村は、さまざまなコンテンツが揃っており、ポテンシャルのある地域です。宿泊施設として、オールシーズンを通じて人が集う場所にしていきたいですね」

わたまちサミット開会-次の100年につながる循環を生み出す-

村を巡ったあとは、『わたまちサミット』が開会されました。野沢温泉村でまちづくりをする方々、全国各地で地域活性化にチャレンジしている方々が登壇し、講演・ピッチ・トークセッションが行われます。
 
開会にあたり、わたまちサミット実行委員会である、野沢温泉企画の石田 遼さん、三菱地所の広瀬 拓哉さん、三菱地所設計の三好 史晃さんより、開会の挨拶です。

「今回の『わたまちサミット』では、「次の100年につながる循環を生み出す装置」というテーマを設けさせていただきました。都市と地域間、地域間同士の交流を促すことで、一つの地域で高まった熱量や本気度が、各地域へ伝承していく。ポジティブな連鎖が生まれていく。これからのまちづくりは『地域内外における関係構築』が何より重要になってくるのではないでしょうか。本日全国各地からお集まりいただいた地域プレイヤーの方々とのセッションや交流を通じて、どんな化学反応が生まれるのかとても楽しみです」

「まちづくりは、百年大計」|野沢温泉村・村長ご挨拶

開会にあたり、野沢温泉村・村長の富井俊雄さんよりご挨拶をいただきました。
 
村長:私は常々「まちづくりは、百年大計」と申しております。村長になり15年、野沢温泉が自立して残っていくためには、温泉地の再生がなんとしても必須だと。そして海外からの移住も積極的に受け入れていこうと言い続けてきました。当時は批判もありました。そんなお金のかかることをして何になるんだ、外国人に村が潰されると。
 
でも、日本人であろうと外国人であろうと移住者は皆、「野沢温泉が大好きで、スキーが大好きで、だから移り住みたいと思った。地域のために、自分ができることをしたい」と言ってくれるんですね。すごく嬉しいことだなと。補助金くれるなら何かしようという発想ではなく、自分たちの力で地域を盛り上げようとしてくれる。その姿勢が垣間見えれば、出身は関係ありません。応援したくなりますよね。
 
「まちづくりは、百年大計」と言っている以上、私はまだ15%しか達成できていません。そして私が生きている間に成し遂げられることではないと思っています。それでいいのではないでしょうか。次の世代が意志を受け継いでくれます。そうやって脈々と続いていく村なのだと、私は信じています。

100年先へつなぐ「人と水」が巡る村|基調講演・河野さん

続いて、野沢温泉観光協会長の河野健児さんの基調講演です。野沢温泉村をめぐる「水」に着目したまちづくりについてお話しいただきました。
 
河野さん:野沢温泉村は、村のどこを歩いても水の音が聞こえてくるほど、至るところで湧き水が流れています。ではこの綺麗な水はどこから来るのかというと、ブナ林なんですね。保水力が非常に高いブナによって山に降った雨水や雪解け水は、土や葉が重なってできた自然のフィルターを通り、ろ過されることによって綺麗になる。そこから湧き水として出てくるまでに30年、温泉として出てくるまでに50年という長い年月がかかると言われています。
 
そうした自然の循環が、村を支えているのです。スキーや温泉といった観光や遊びはもちろん、生活飲料水・食・お酒・エネルギー(小水力発電)もそうですね。暮らしのすべてが水によって活かされている。だからこそ、次の世代において野沢温泉村に必要なのは、人と人がつながり、自然環境を守っていくこと。こうした「水」を中心とした持続可能なまちづくりが、村を100年先までつなぐ鍵になると考えています。

【のざわまちトーク】野沢温泉が好きで住んでいる人は、出身関係なく『野沢人』|村長富井さん・河野さん・石田さん

村長と河野さんの講演を踏まえ、石田さんも交えたトークセッションが行われました。
 
石田さん:野沢温泉は、人口が約3,500人と小さな村ですが、外国人の方も多くとてもグローバルだなと感じます。温泉に入ると、地元のおじいちゃんと外国人の方が意気投合していたりして(笑)、まちづくりにおいて意識されていることはあるのでしょうか。
 
村長:外国人の移住者の方が集まる懇談会でもよく言うのですが、「まちづくりというのは、アメリカ人であろうと、オーストラリア人であろうと、日本人であろうと、野沢温泉が好きで住んでいる人はみんな『野沢人』なんだ」と。だからそこに出身は関係ないんだと。彼らは、野沢で生まれ育った人間以上に村を愛してくださっている。日本人の若い世代の移住者も同様です。大変ありがたいことだなと思いますね。
 
石田さん:村長のご挨拶では「まちづくりは、百年大計」という言葉もありましたが、河野さんのなかで、村を未来へ残していくためのビジョンはありますか。
 
河野さん:私の夢は、食・エネルギー・遊び・観光など、野沢温泉村を取り巻く全てを、村を巡る「水」でまかなえる状態をつくることです。現在は冬のスキー・スノーボードを目的とした観光客がメインですが、100年先を見据えたときに「水の循環を活かした持続可能な、村づくり」を世界中から見にきてもらえるような地域にしたい。“まちづくり”そのものが、観光になるというか。それが村長を始めとする先人の時代からずっと言われ続けてきた「グリーンシーズン観光」の突破口になるのではないかと考えています。

【わたまちトーク】環境・行動・意識を変えれば「まち」が変わる|長尾さん

続いての登壇者は、株式会社DE-SIGNグループ取締役であり、2017年に100%民間資本の地域商社である株式会社大村湾商事を長崎県に設立した長尾 成浩さんです。
 
長尾さん:長崎県の大村湾は全国でも珍しい超閉鎖性海域で、沿岸にある大村市の人口は約10万人。周辺の長崎市、佐世保市などの5市5町を合わせると、約100万人が生活している地域になります。そこへ「地域商社」として、地元自治体と共に地域ブランド化に取り組むのが、大村湾商事です。
 
「環境を整備することで、行動が変わる・意識が変わる・まちが変わる」
 
この言葉を信条に、大村湾地域経済圏の成立に向けて、地元事業者・地域内で活動する人たち・県内外の大学と協力し、大村湾の魅力を日本・世界に発信しています。
 
具体的な事業スキームとしては、6つあります。
 
①メディア事業
長崎県大村湾全域を “ひと” “こと” “もの” にフォーカスして紹介。ガイドブック制作・ポータルサイト運営を担っています。
 
②不動産事業
長崎で住居、店舗、事務所、オフィスなどをお探しの方に活用方法にあわせた、最適な “場” のご提案。自分スタイルに合わせた「商い暮らし」をサポートします。
 
③“場”の運営事業
長崎県内にある様々な風景や場所へつなぐ大村湾HUB構想の拠点として“場”を運営。Co-working HUB「coto」、サテライトオフィス&コワーキングスペース「coto Nagasaki Airport」を運営しています。
 
④物産商社事業
長崎県内でこだわりを持って生産や開発を行っている商品をオンラインショップで取扱い、
県外への販売ルートをデザインしています。
 
⑤観光商社事業
長崎県の関係人口増、来訪者増につながるイベントやツアーをプロデュースします。
具体的には、大村湾の魅力発信のための自転車ファンライドイベント「大村湾ZEKKEIライド」、大村湾に浮かぶ無人島、田島(たしま)にてウェディングパーティーをプロデュースした「無人島Wedding」などを企画・運営しています。
 
⑥人材開発事業
「人材採用事業」「マーケティング事業」「事業継承事業」を通じて、企業の成長におけるキーファクターを企業状況にあわせてデザインします。
 
まだ知られていない多くの可能性を秘めている『大村湾』をブランド化すること。そして大村湾を囲むエリアを一つの「地域経済圏」としてとらえ、大村湾とその周辺の豊かな資源(ヒト・モノ・コト)をプロデュースすること。これらを軸に今後も、挑戦し続けます。

【わたまちピッチ】ぞれぞれの「まちづくり」をプレゼン

続いて、全国各地で地域活性化にチャレンジしている方々に登壇いただき、お互いの活動内容をご共有いただきました。プレゼン内容を引用してご紹介します。

岡住 修平 氏
稲とアガベ株式会社/秋田県男鹿市

 

私たち『稲とアガベ』は秋田県男鹿市で2021年の秋に創業したクラフトサケ醸造所です。稲とアガベの経営理念は「男鹿の風土を醸す」。現在の日本では、日本酒を造るための免許の新規発行が原則認められていないため、新規参入することができません。
 
「法律を変え参入規制の壁を壊すことで、酒造りに情熱を持つ若い醸造家が活躍する未来をつくりたい」
 
その想いを原動力に2021年、稲とアガベは醸造所と共に男鹿の駅前にレストランを構えました。真っ暗だった地域に明かりを灯したことで、県外からもこの地域を訪れる方が徐々に増えてきています。さらに地域の方々からの要望に応え、一風堂のメニュー監修のもとラーメン店「おがや」をオープン。
 
酒造りだけにとどまらず、地域内外の方々がワクワクする事業を創出し続けることで、未来に向けて地域が豊かになっていくことを目指します。

谷口 千春 氏
minagarten/広島県広島市

『minagarten(ミナガルテン)』とは、「人と暮らしのWell-being(幸福)」をテーマとし、食・文化・芸術などを共に分かち合う場として、全17戸からなる緑豊かな住宅エリアと、カフェやシェアキッチン、民泊ルームなどが一体となった複合型コミュニティ施設です。
 
もともとは祖父母の代から続いた園芸の卸売業を行っていた場所でした。しかし父が体調を崩したことをきっかけに家業を閉業。緑ある暮らしをサポートしてきた拠点である土地の記憶を引き継ぎながら新たに生まれ変わりました。
 
『minagarten』は、みんなの庭です。垣根をつくらず、働く人・訪れる人、いろんな人が色混じった曖昧な空間の中で、全員が自分らしく振る舞える。自然とコラボ―レーションが生まれる。そんな場所を目指しています。これからも「私たちの欲しい未来の縮図をつくる」ために、企画・運営をしていきます。

前田 大介 氏
前田薬品工業株式会社・株式会社GEN風景/富山県立山町

前田薬品工業は、ジェネリック医薬品(後発薬)の外用剤で売上高国内トップ5に入る企業です。その3代目として就任した際、これからは人生100年時代、治療のための「ものづくり」企業から、 健康寿命延伸の「コンテンツ創造」企業への転換が必要ではないかと考えました。
 
そして株式会社GEN風景を設立。富山県立山町に美と健康をテーマにした複合型ウエルネス&リトリート施設『Healthian-wood(ヘルジアン・ウッド)』を開業しました。広大な田園風景のなかに、ハーブ園やアロマ工房、レストラン、イベントスペース、トリートメントスペース、宿泊施設を併設。食事やアロマテラピー・プログラムにより体と心の健康を提供します。
 
これからの50年後100年後を見据え、美しい立山の地域と共に新しい健康のあり方とを紡いでいきたい。『Healthian-wood』が、日本の原風景が残る「村」のような場所になっていけたらと思っています。

永岡 里菜 氏
株式会社おてつたび

『おてつたび』とは「お手伝い」と「旅」を組み合わせた造語です。地域の短期的・季節的な人手不足に悩む農家・観光業などの事業者と「知らない地域に行きたい」「仕事をしながら暮らすように旅したい」といった旅行者をマッチングするWebプラットフォームを運営しています。
 
「どこそこ?」と言われる地域に人が訪れるキッカケを作りたい。日本各地にある素敵な地域や事業者に出会えるキッカケを作りたい。そんな想いで、株式会社おてつたびは創業しました。現在はユーザ数は約4.6万人、登録事業者数は1000を超えるまでに拡大。お手伝いを通じて地域の方と関係性ができ、再び同じ地域へ訪れる参加者も増え、地域のファン(関係人口)が創出されています。
 
日本には、驚くほど愛おしく魅力的な地域がたくさんあります。これからも『おてつたび』は、日本各地にある本当にいい人、いいもの、いい地域がしっかり評価される世界を創るために走り続けます。

【わたまちトーク】地域に継続的な循環をもたらす装置とは?|・三好さん・岡住さん・前田さん・谷口さん

それぞれのピッチを踏まえ、トークセッションに移ります。テーマは「地域に継続的な循環をもたらす装置とは?」。
 
三好さん:地域に継続的な循環をもたらす装置の一つに「周りを巻き込む」要素は、とても重要なのではないかと思います。地域のみなさん、地域の外の方との関わり、など。意識されていることはありますか。
 
岡住さん:私たちが製造するお酒は、日常的に飲むには値段が高いので、最初地元の人からは「高いな〜。変な酒つくってるな」と思われていました。でも徐々に、国内外の賞を受賞したり評価を得られるようになってから「あいつら全国的に有名らしいぞ」と地元の方にも受け入れていただけるように。やはり出る杭は打たれるので、出過ぎるしかない、と。今ではラーメンをきっかけに、地元の人たちにも広く知っていただけるようになりました。そうやって「地域の外の人」「地元の人」それぞれに刺さるフックを用意することが重要だと感じています。
 
前田さん:意識したことで言うと、地方創生と高らかに掲げるというよりは、「自分がやりたいこと」を大事に、信念を貫くことでしょうか。
 
私の場合は、3代目として会社を引き継いだこともあり、新しいことをやろうとすると「何を始めるんだ?」と周りの目が厳しく社内からの理解や仲間を集めるのも苦労しました。
 
だからこそ周囲に覚悟を見せる重要性も感じていて。実際に僕は、立山に住民票を移して「逃げないぞ」という姿勢を見せながら取り組んでいます。
 
谷口さん:私の場合は、住んでいる地域でも意外と知らないことってたくさんあるなと思っていて。そうした中でどうやったら地域の人に知ってもらえるのかな?と思っていたとき、情報感度の高い70代のおばあちゃんがアンティーク家具を販売するお店の店番をやってくれることになったんです。
 
するとそのおばあちゃんがインフルエンサーとなって、周りの知り合いの人に広めてくれて、だんだんと地元の人も来てくれるようになりました。コミュニティの中心となる人との関わりを持つと、その周りにいる人にもじわじわと伝わっていく。そうやって世代や年齢を超え、人が集うきっかけができるのかなと思いますね。

【わたまちトーク】地域のウチとソトを繋ぐ仕掛けづくりとは?|広瀬さん・永岡さん・長尾さん・石田さん

続いては、テーマ「地域のウチとソトを繋ぐ仕掛けづくりとは?」をもとに登壇者同士でのトークセッションを行いました。
 
広瀬さん:地域のウチとソトを繋ぐ仕掛けづくりについて、重要だと感じていることはありますか。
 
長尾さん:仕掛けの一つとして、外から来た人を僕たちがアテンドし続けるのではなく、地元の人に案内や紹介をお願いするようにしています。例えば、打ち上げは運営側が仕切るけど、二次会は地元の人が地元のスナックに連れて行ってくれる、とか。
 
そうすることで自然発生的に交流が生まれ、出会いが生まれる。仲良くなった地元の人から「次はいつ来るの?」と聞かれれば「この人に会いにまた来たい」と、再度訪問する理由が生まれるんですよ。イベントを開催するのもいいのですが、その後どうつながったのか?が何より大事。「楽しかったね」で終わらせずに、関係人口に結びつけていく仕組みが必要だと感じていますね。
 
石田さん:僕もそれはすごく感じていて「イベントをやりました」の次の動きが重要だなと。参加者のフォローアップやプロジェクト化までをサポートしたり。最後どんな状態をつくりたいのか、というゴールを見据えた仕掛けが必要ですね。
 
永岡さん:それで言うと『おてつたび』では、参加者同士がつながれるコミュニティをつくっています。オンライン上で情報交換をしたり、リアルに集まって交流会を開いたり。東京に農家さんが来るときには、参加者同士で「会いに行こう」と声が上がって、その後の関係も続いている様子が見れますね。
 
広瀬さん:イベントをきっかけに出会った人たちが、その後もコミュニティとしてつながり続けられる。そうした仕掛けが、地域のウチとソトを繋ぐポイントの一つになりそうですね。

地域内外のまちづくりの実践者が集結し、世代を超えてつなげていくべき「これからのまちづくり」のあり方を模索した「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL- in 野沢温泉」。
 
「登壇者の発表から、新しいインスピレーションをもらいました」
 
「自分にはない視点を得られ、勉強になった」
 
「地域で実践をしていると孤独を感じることもあるが、全国には同じ志を持った同志がたくさんいると知って勇気をもらった」
 
など、参加者からは、次につながる前向きな感想をたくさんいただきました。

白熱した議論が飛び交った「わたしたちのまちづくりサミット -BEYOND LOCAL- in 野沢温泉」はここで閉幕。ですが、これを機にどのような仲間と出会い、新しい取り組みが始まっていくのか。野沢温泉村から全国へ、広がっていくであろうチャレンジの輪が、今からとても楽しみです!
 

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