好きすぎて騙すしかなかった


「どこからきたの?見ない顔だけど」
遥香は、最近図書館で隣に座る可愛い女の子に話しかけた。
「隣町」
「あぁ、図書館ないっけか?」
「あるけど、あんま好きな本ないし」
「ふぅん、私、佐山遥香、桜高校二年よろしく」
「涼子、定時制よろしく、みんな涼と呼んでるから」
「定時制なんだ、仕事も忙しいね」
「まぁね」
二人は他愛のない話をしながら過ごした。
「バイトいくから、またね」
遥香はかるく手を振った。
翌日も、またその翌日も、二人は図書館で逢った。
「なんか、よく逢うよね、不思議、仕事とかで、疲れてないの?、てか、どんな仕事?」
「眠くないよ、仕事っていっても、親戚の工場だから、自由なんだ」
「ふぅん、ねぇねぇ、一緒になんか食べに行かない?」
「いいよ、何にしよっか」
「駅前の、パフェが美味しいって評判だから、そこにしよ」
二人は並んで歩いた。いつの間にか自然に手を繋ぎ歩いた。
「涼の手、ごついね」
「恥ずかしい、みんなによく言われてさ」
「あっ、ごめん。気にしないで」
遥香はハグした。
「いい匂いするね、遥香って」
「シャンプーかなあ」
二人はどこから見ても仲の良い友達だった。
店内に入り早速メニューを見ながら遥香は店イチオシのフルーツパフェを、涼はチョコレートパフェを頼んだ。
「美味しい~やばいね」
遥香が身体全体を震わせ涼は笑った。
「涼、食べてみてほら」
遥香は自分の食べているスプーンから涼の口に押し入れた。
「うん、たしかに、イチオシだね」
二人はお互いのパフェを、あーんと言いながら食べきった。
その時遥香の携帯が鳴った。遥香はパフェを食べてるときより嬉しそうに話していた。
電話を切ると照れ臭そうに
「彼氏から」
と言った。
「彼氏いるんだ、好きなの?」
「当たり前じゃない彼氏だもん」
遥香が笑った。
「涼は?」
「ん、ん、ん、ふられちゃった」
「あっ、ごめん、悪いこときいちゃったね」
二人は少し暗い雰囲気になり、店を出ることにした。どこか気まずく感じた遥香は
「涼、又明日」
と言った。すると涼は
「もう、逢うことはないよ」
「どうして、なんか気にさわったなら、謝るから、ごめんね」
「違うよ。失恋したからさ、さっき」
遥香は意味がわからず困惑した。
「ハグしていい」
涼が遥香に近寄った。遥香は少し戸惑ったが最後なのだからと笑顔を向けた。
涼は力の限り遥香を抱きしめた。
「いたいよ、涼」
涼は力を緩め、その瞬間遥香の唇を奪った。
遥香は驚いて涼をはねのけた。
「な、な、なんなの」
涼は薄笑いを浮かべ
「騙してごめんな。俺、君のことコンビニで見てから、ずっと好きでさ。我慢できなかったんだよ」
遥香は膝から崩れ落ち、走り去る見知らぬ男の背中を見つめた。


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