10秒小説『枯草の根』#7-彼との関係-

2時間ほど居ただろうか。
帰りの車の中、私はさっきまでの出来事を一つ一つ頭の中で整理していた。
彼氏でもない、インターネットの出会い系サイトで知り合った人との肌の触れ合いは、なんとも言えない不思議な感覚だった。
普通なら、付き合った人との初めてのセックスは普段見ない表情や仕草、そういう時でしかしない息遣いなどを五感で感じて新鮮な気持ちになったりするものだ。
でも、この彼のことは普段の様子も全く分からないし、比べようがない。
とにかく、今まで味わったことのないような不思議な感覚だった。
私もきっと、普段友達や元カレには見せたことのない姿だったのだろうと思う。
私の「普段の姿」を知らないからこそ、出せる素の部分が出ていたのだろうと思う。
初めて顔を合わせたあのコンビニの前に着く頃には、もう一度会いたいなと思っていた。

あの日から三ヶ月。
私たちは何度も会い、その度にセックスをした。
お互い、プライベートな内容は何も話さなかった。
ただただ、性的な快楽と、心の拠り所みたいな場所かほしかった。
会う時はいつも平日の昼間だった。

ある日、生理がきていないことに気がついた。
私は妊娠していた。

#小説 #日常 #10秒小説

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