10秒小説『枯草の根』#3-何も無い部屋-

蒸し暑くって、目が覚めた。
気がついたら寝汗びっしょりで、なんだか気持ち悪い。
畳の上で寝たもんだから、身体中が痛い。
お布団って、結構大事だったんだな。
当たり前にあるものが無いと、有難味がよくわかる。
いつもなら洗いたての気持ちのいいお布団で寝て、朝起きたらご飯が用意されていて、カーテンだってちゃんとついていて。
ここは布団もないし、カーテンもまだない。
朝食どころか、昼も夜も、ご飯を作ってくれる人はいない。
お母さん…。
急に寂しくなったような気がした。
でももう帰るところなどないのだ。

#小説 #日常 #10秒小説

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