今回はCDCでも推奨薬になっているパキロビッドパックです。
こちらの薬はリバウンド現象というのがあります。
The Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Rebound Study: A Prospective Cohort Study to Evaluate Viral and Symptom Rebound Differences in Participants Treated With Nirmatrelvir Plus Ritonavir Versus Untreated Controls.
Clinical Infectious Diseases.22 February 2023.
背景 COVID-19患者におけるNirmatrelvir + Ritonavir (NPR)の使用は、リバウンド現象の疫学に関する証拠が乏しいにもかかわらず、その懸念によって制限されている。本研究の目的は、COVID-19急性感染症のNPR治療者と未治療者におけるリバウンドの疫学を前向きに比較することである。
NPR(パキロビッドパック)は非入院患者における、
症状の重症度の進行を防ぐための内服薬です。
コロナ感染による重症化リスクを89%低下させたという薬です。
リバウンドは、
「内服治療終了後、症状が再発、もしくは検査で再陽性化する現象」です。
これに加え、併用禁忌・注意薬が多く、
若干処方されにくいものとなっております。
方法 COVID-19陽性で、臨床的にNPRの投与が可能な参加者を募集し、ウイルスまたは症状の消失とリバウンドのいずれかを評価する前向き観察研究 を計画した。参加者は、NPRを服用するかどうかの決定に基づいて、治療群または対照群に割り当てられた。最初の診断後、両群とも12回の迅速抗原検査が提供され、16日間定期的に検査を行い、症状調査に回答するよう求められた。検査結果に基づくウイルスリバウンドと、患者が報告した症状に基づくCOVID-19症状リバウンドが評価された。
さらっとまとめると、
NPR飲む群と飲まない群にわけ、16日間にわたって、
抗原検査と、症状についてのアンケートにて検討しています。
研究参加者の大半は65歳未満で (NPR群86%、対照群91%)、各群の約70%の参加者が少なくとも1つの持病を有していた 。NPR群では、104名(82%)の参加者が完全接種 (初回接種後に少なくとも1回のブースターを受けた)、17名(13%)が部分接種(初回接種後にブースターを受けなかった)、6名(5%)が未接種だった。対照群では、30名(70%)が完全接種 、11名(25%)が部分接種、2名(5%)が未接種であった。
高齢者(65歳以上)は少なく、
ワクチン3回摂取者が大半(70%)であったようです。
緊急承認のための当初の臨床試験は、ワクチン未接種者が対象 でした。
結果 ウイルスリバウンドの発生率は、NPR治療群(n=127)で14.2%、対照群(n=43)で9.3% であった。症状リバウンドの発生率は、治療群(18.9%)が対照群(7.0%)と比較して高かった 。
やはりNPRで症状のリバウンドが多い みたいです(P = .06)。
5人に1人は多いような。
ぎりぎり有意差(P<0.05)でなかったようですが、
もう少しがんばれば(人数増やせば)差が出そうな気がします。
ちなみに症状改善などの短期的効果ですが、
最初の抗原検査陽性から最初の抗原検査陰性までの時間 として定義されるウイルスクリアランスまでの時間は、NPR治療群と対照群で同等 でした(平均7.1日 vs 7.0日;P = 0.85)。同様に、症状発現から最初の症状消失までの時間 (平均10.5日 vs 10.7日、P = 0.80)、症状発現から最初の抗原陰性化までの時間 (平均6.8日 vs 6.1日、P = .25)は、それぞれNPR治療群と対照群で同様 であった。
抗原検査の陰性化や、症状改善についての効果はありませんでした。
なので、「早く治したいから出してくれ」、
というような薬ではありません。 あくまでハイリスクの方の重症化予防のため の薬です。
リバウンドに関する現在の主な仮説は、NPR が疾患の早期に複製を抑制する可能性があるため、 ウイルス感染時に免疫系が完全に増加する機会や必要性がない可能性があるというものである。
という仮説があります。
「免疫系が十分に働く前に薬で治してしまうから」、ということですが、
NPRは特に早期の効果ないようですので、
今回のリバウンドに関しては当てはまらないようです。
結論 この予備的な報告では、検査陽性や症状消失後のリバウンドが、これまでの報告よりも高いことが示唆 されました。しかし、注目すべきは、NPR治療群と対照群のいずれにおいても、リバウンドの割合が同程度であることが観察されたことである。リバウンド現象をよりよく理解するためには、多様な参加者と長期間のフォローアップを伴う大規模な研究が必要である。
重症化すると非常に困るような人、免疫不全者などにはいいのでしょう。
(そういう人は併用注意薬多くて飲みにくいかも。)
すでにゾコーバとともに、処方解禁されておりますが、
重症化しそうにない時期、患者さんに、
年齢(60歳以上でOK)や既往歴(高血圧でもOK)だけで 一律に処方するのは考え物です。
ちなみに、この研究では、抗原検査に関しても言及がありました。
陽性の迅速抗原検査は、感染性を維持するウイルスのレベルと関連している。 この研究では、参加者のほぼ 60% が、最初に陽性になった、または症状が出てから 5 日後に迅速抗原検査で陽性を維持 し、参加者の 20% が感染から 10 日経っても陽性を維持 していることを観察した。 したがって、本研究は、CDC が現在推奨している 5 日間の隔離期間が適切ではないことを発見した他の研究と一致 している。
これまでに言われているように、
5日隔離では当然ウイルス排出しているし、
10日後でも20%では感染性ありってことですね。
(まあ、5類になったら、ただの風邪扱いですしいいんですが。)