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初めての料理

メガネコーヒーでの私の日課はオムレツを焼いて食べる事です。失敗してもそれなりにおいしいし、キレイに焼けたら何かいい事がありそうだし。おみくじを引くような感覚で毎日フライパンをトントンと叩いています。

店を持つずっとずっと前の話。

初めて自分で料理をしたのは、たしか小学生の3年か4年だったか。夏休みの日。私が目覚める頃にはもう親は仕事へ出かけていて、いつもテーブルには朝ごはんが用意されていました。ある時、母の愛読していた雑誌ESSEを手に持った兄が「明日の朝は自分でご飯を作ろう」と言い出したのです。

母からガスコンロの使い方を教わり、そして翌朝。私が挑戦したのオムレツでした。浅いステンレスのボウルに卵を2つ割って、塩を入れて混ぜ、フライパンを温めて、卵を流す。あっという間に固まっていくタマゴとの闘いはものの数十秒で完了しました。お皿に盛ってケチャップで自分の名前を描き、テーブルに運びました。兄と並んで「いただきます」と一口食べた瞬間、「あれ、ここ海?」と思うほどの強烈な塩味。今思えば、卵2個に大さじ1杯ほどの塩を入れるなんて、とんでもない非常識なのですが、それが私の初めての料理。出来は最悪だったけど、結構うれしくて良い事がありそうな朝でした。

あの時使ったステンレスのボウルは、一人暮らしを始める時に持ち出させてもらい、以来ずっと使い続けて、今はお店にやって来ました。明日も変わらずオムレツを作る時に使われるでしょう。

卵を3つ割って、塩は“ひとつまみ″。

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