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菓子。


子供の頃は生クリームが苦手で、ショートケーキとかチョコレートケーキが全く食べられなかったんですよね。誕生日会はいつも皿一杯に並べたシュークリームにロウソクを刺す、というベージュ色の会でした。

店を持つずっと前の話。

横浜で働いている時は、分からない事ばかりでしたが、その分学びの多い刺激的な毎日を過ごします。ある日パティシエの先輩が、

「フォ△※◆pャ◎knャ□ュ行って来たからザj§●ッ〇Σ買ってきたよ」

と呪文のような店の、寝言のような菓子を私に差し出してきました。え、何ですか?何て言ったんですか?と聞くと

「え、君は÷jヒュ※△ンf¨▼メも知らないの?もっと勉強したほうが良いよ。」

と再び呪文を。結局何と言ってるか全然分からないまま、そのナントカっていうお菓子を一つ受け取りました。小さくて茶色くて、まぁお歳暮とかでもらうようなアレか。と思い、そのまま袋を開けて一口で食べたのです。そしたら、まるで頭を殴られたような衝撃。味わったことの無い食感と香りに鳥肌が立って、頭がクラクラしてしまいました。なんだこれは。

先輩にお店の地図を書いてもらい、次の休みに電車に乗ってその店へ向かいました。そのナントカってお菓子を10個と、赤い生菓子とメレンゲのお菓子を買い、さっそく駅のベンチで食べたのです。「どうしよう、やっぱり美味い、美味過ぎる。嗚呼こりゃ凄い世界を知ってしまったかもしれない。僕はこれから勉強しなければならない事が山ほどあるな。」結局その菓子との出会いがきっかけで、その2年後に大阪へ行くことになったのですが、それはまた別のお話で。


あの時私が聞き取れなかったお店の名前とお菓子の名前は、

〝オーボンヴュータンのヴィジタンディーヌ″。

かつて、帰省した際に何度か母に「ハイこれオーボンヴュータンのヴィジタンディーヌ」と言って菓子を土産にしたことがあります。母は言いました。

「へー、これがヴァ△♪フォt※ミュベ●p♯¥ミャ□nメのパミ◎♪ぁsfニュニュピャニャームね。おいしいわね。」と。


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