伝奇集を読んで

伝奇集を読みました。この本はあるブックガイドを読んで、「バベルの図書館」が気になり、読んでみようと思った本です。短編だし、すぐに読み終わるだろうと甘く見ていましたが、本を開いて読み始めた途端、後悔しました。岩波文庫の伝奇集を読んだのですが、字は細かいので目が滑りまくったし、内容も考えながら読まないといけないので頭が破裂しそうになったりしましたし、最初の「トレーン、ウクバール、オルビス・テルティウス」「『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール」などはチンプンカンプンでした。最初のなんか、もう何が書いてあるか全くわかりません。集中して読まないと内容が全く理解できないのです。その次の「アル・ムターシムを求めて」は面白かったけど、そのあとの「『ドン・キホーテ…」はまず、ドン・キホーテを知らないし全くわかりませんでした。

伝奇集の中でわたしが一番気に入ったのは、「バビロニアのくじ」です。そこは、くじ引きを行っている「講社」という組織が公的な権力を持っています。そう、くじ引きがとても大切な国なのです。くじ引きで当たりが出たら色々な事が許されます。でも、外れた場合手足を切断されたり、様々な不名誉が与えられます。くじのふだを盗むと真っ赤に焼かれた鉄で舌を焼かれます。そのくらいくじが好きで大切なのです。

わたしはこの話を読んで、なぜここまでバビロニアの人々がくじ引きが好きなのかを考えました。まるで狂ったかのようにくじを大切にし始めたのはなぜなんでしょう。わたしはスリルを楽しみたかったんだと思います。くじ引きは所詮「運」です。頑張っても当たりが出るわけではないし、逆に頑張らなくても当たりが出たりします。それに飽きてくると今度はくじに危険なリスクをつけます。よほど退屈だったんでしょうか。狂っているとしか言えないほど、くじに熱中して。わたしはそれが何かにしがみついているように見えました。楽しくない現実から目を逸らし、何も頑張らなくても楽しめるくじをして、こんな事をしても無駄だということに気づいているのに気づかないふりをして一生懸命楽しいことにしがみついているかのように。作中では、「バビロニアの人間はあまり思索を好まないのである」と書いていたけど、そうではなくて色々なことから一生懸命目を逸らしていたのだと思いました。

他にも「八岐の園」や、「円環の廃墟」も面白かったです。あと、「バベルの図書館」も、面白かったけど、難しい言葉が多用されているので、ちょっとよくわかりにくいなと感じました。「八岐の園」はラストが凄いです。主人公のスパイの、先祖が作ったものは、「それとそれを合わせたかぁ」と普通絶対に合わせないだろうと思っていたものを合わせていた事にびっくりしてしまいました。「円環の廃墟」は神秘的だなと思いました。夢と現実の区別がつかなくなりかけましたが、とても面白いと感じました。

伝奇集は集中力が必要だけど、なぜかひきこまれる魅力がありました。小5のわたしには難しかったけど、大きくなったらまた読み直したいです。その時のわたしが何を感じるのか、とても楽しみです。

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