時間稼ぎのために酸素マスクをつける話
患者さんは寝る前に酸素が出てくるマスクをします。
「マスクからガスが出て寝るんですよね?」
よく質問されますが、答えはNoです。
実際にはマスクからは酸素しか出ていません。
点滴からお薬を入れて眠るのが主流です。
* お子さんや一部の方はガスで眠ることもあります。
ではなぜマスクをするのでしょうか。
結論から言うと、これは時間かせぎなのです。
え?どういうこと?って思いますよね。
これを説明するために、ちょっと話を変えさせてください。
突然ですが、質問です。
麻酔導入で起こる最も多い問題とは一体何でしょうか。
さっそく答えを言ってしまいますが、それは【気道トラブル】です。
麻酔薬で眠ると普段とは違い、とても深く眠ります。
呼吸を忘れるくらい深く眠ります。
呼吸が止まったままだと、大変なことになるのでちゃんと麻酔科医が呼吸のお手伝いをしています。
呼吸ができなければ数分で脳は不可逆的な損傷を受けてしまいます。
どのようにお手伝いするのか、
それはこの先の記事でお伝えする予定です。
(⑤マスク換気、⑥挿管)
そしてこの呼吸のお手伝いが問題なのです。
きちんとお手伝いができれば良いのですが、必ずしもうまくいくとは限りません。
それでは話をまた元に戻します。
なぜマスクで酸素を吸うのか?
それは肺を酸素で満たしておくことで、呼吸のお手伝いができなかった場合の対処時間を長くするため、です。
具体的には、2〜3分の余裕が生まれます。
ほんの数分ですがこれが命を左右することもあります。
酸素マスクは、麻酔導入の気道トラブルに対するリスクヘッジなのです。
我々麻酔科医は、酸素マスクを患者さんの口元にぴったりとあてて、深呼吸を促します。
患者さんがひと呼吸するたびに
数十秒ずつトラブルへ対処できる時間が増えていくのです。
まとめ
●酸素マスクは、麻酔導入の気道トラブルに対するリスクヘッジである。
●酸素をあらかじめ吸っておくことで、呼吸が止まった後の対処できる時間が増やせる。
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