ビジョントレーニング その2 実践編(まずは遊びから)
ではいよいよビジョントレーニングの具体的な方法について解説していきます。
トレーニングという名前ですが、まずは楽しんで1日2〜3分から、徐々に種類や時間を増やして、多くても毎日10分までにしてください。効果の定着には1年ほどかかると言われています。続けることが大切です。まずは楽しんでということを大切にしてください。
また近視や遠視、乱視などがある場合は、トレーニングの前に適切なメガネを選びましょう。眼科の処方箋をもってメガネ屋さんへ行くと安心できます。
1 トレーニング前のウォーミングアップ
①すきなおもちゃを見つめる
最初はじっと見つめるだけでオッケーです。眼を使うことを意識できるようにしましょう。
②眼のストレッチ
ペンやお気に入りのおもちゃなどを使って眼の動きを確認してみましょう。
座っている子どもの顔の20〜30センチほど前にペンを持っていき、「ペン先を眼だけを動かして見つめて」と伝えます。ペン先を持って上下や左右にゆっくりと動かしてみてください。難しい場合は指でペン先をタッチしても構いません。
(画像は記者撮影より)
見る力の弱い子は「眼だけを動かしてね」と伝えても、頭や首がつい動いてしまうので、適宜アドバイスしてあげましょう。
③首のストレッチ
座ったままで、正面に目印(ペン先などでも可)をつけて、その点をじっと見つめたままで、頭を上下、左右、ななめという順番で動かしてもらいましょう。
(画像は記者撮影より)
視点がズレてしまうので、適宜アドバイスしてあげましょう。
④お手玉シュート
お手玉をバケツの中に投げ入れます。バケツから30㎝くらいの距離からはじめて、徐々に距離を遠くしていきます。お手玉は優しく投げるように、投げる前に的を一度しっかりみてから投げるように伝えましょう。
(画像は記者撮影より)
⑤ストラックアウト
ボールを投げて数字の的に当てる、筋肉番付発祥のアレです。初めはどこでも当たった点数の合計点を目標に、徐々に当てる数字を自分で宣言し、その番号の的に当てられることを目指しましょう。投げる前に的をよく見ることがポイントです。
(画像は楽天市場より)
2 追従性眼球運動のトレーニング
①動くおもちゃをタッチ
子どもが仰向けになった状態で頭を枕などで動かないように固定します。
その上から小さなぬいぐるみなどをひもで吊るし、ゆらします。子どもはその動きを眼だけで追って、手の指でタッチします。
(画像は記者撮影より)
眼を動かすだけでなく、手を同時に使うことで、脳の中の眼を動かす動きと手を動かす動きとをリンクさせて眼球運動の発達を促すのです。
指でタッチできるようになったら、おもちゃの位置を変えてひじやひざでタッチすることにも挑戦しましょう。
頭を動かさずできるようになったら立った状態でもタッチします。慣れてきたら片足立ちやバランスボードに乗ってなど不安定な状態にもチャレンジしましょう。眼の動きがさらに複雑になって難易度が上がります。
②お手玉キャッチ
お手玉ひとつを両手で上に投げて、キャッチします。
それができたら片手からもう片方の手に投げてキャッチします。だんだん投げる高さを上げていきます。
(画像は記者撮影より)
手元を見ずに、お手玉の動きを目で追うのがポイントです。
③テーブルホッケー
小さな板などを持ち、ゴムボールやピンポン玉、ビー玉など使ってテーブルでホッケーゲームをします。をボールをテーブルから落とした方が負けです。
(画像はさわやかダイアリーより)
最初はゆっくりボールを弾き合いましょう。ボールが小さくなるほど難しくなります。
④ボールキャッチ
いろんなボールでキャッチボールします。慣れてきたらよく弾むボールでワンバウンドさせてキャッチしましょう。テーブルの上を転がして、手でキャッチしたり、落ちるところを箱などでキャッチしてもいいでしょう。
3 跳躍性眼球運動のトレーニング
①ペン先キョロキョロ
2本のペンを左右の手にそれぞれ縦に持ち、左、右、左、右、左と、視点を左右のペン先に交互に移します。棒の先に小さなキャラクターなどをつけたものや人差し指の指先でも構いません。
(画像は記者撮影より)
素早く視点をジャンプするように動かすことを意識するために、手叩きやメトロノームを使ってリズムを刻み、一定のテンポで音を鳴らすといいでしょう。
頭を動かさないことと、視点を瞬間的にパッと移すことを意識させましょう。
慣れてきたら、斜めに角度をつけたり、横持ちにして縦に広げるなど、ペンの持ち方を変えてみましょう。また両手を広げてペン先の間隔を広げたり、支援者が50㎝ほど離れた位置でペンを持ち、視点移動の幅を広げてみましょう。
②部屋の中でもの探し
部屋に普段は置いていないものをたくさん置いて、その中のひとつを探してもらいましょう。
いろんな種類の飾りをつけたり、カバンなどを普段と違う位置に置くなどして、ものがすぐには見つからないような配置にします。
頭や体を動かさず、眼だけを動かして探すのがポイントです。
③マグネット探し
動物やゲームのキャラクターなど、子どもの好きなもののマグネットを用意し、冷蔵庫のドアやホワイトボードなどに貼り付けます。特定のものを声で指定して、素早く探してもらいましょう。
(画像はAmazon.co.jpより)
④もぐらたたき
市販のもぐらたたきゲームは、モグラが出てきた瞬間に視点を動かすので、跳躍性眼球運動の良いトレーニングになります。
(画像は価格.comマガジンより)
⑤ライト遊び
部屋を少し暗くして、ペンライトや懐中電灯の光を壁に、パッパッと素早く動かします。子どもにその光の動きに合わせて視点を動かしてもらいましょう。星を眺めてみるみたいですね。
もぐらたたきやライト遊びのように視覚刺激のものも、動物探しのように聴覚刺激のものも、どちらも良いトレーニングになります。
4 両眼のチームワークのトレーニング
①ブロックストリング
市販のブロックストリングやビーズを通したヒモなどを使います。
ヒモを2mくらい離れたところにある家具などに結びつけ、自分の目の前まで伸ばします。それぞれの距離にあるビーズを遠い距離にあるものから見てみていってください。焦点がきちんと合っていると対象のビーズは1つに重なり、ヒモは交差して、他のビーズは2つに見えるはずです。両眼をよせるより眼にするようにしてみてください。
(画像はメンタル・ビジョントレーニングストアより)
遠くのものができれば、だんだん近くのビーズに視点を動かすしましょう。
また慣れてくれば、遠くのビーズと近くのビーズの視線を素早く切り替え、苦手な距離のビーズを見る練習をしましょう。
こちらのサイトでも両眼視のトレーニングが紹介されています。
②3Dチャレンジ
2つの図形をより眼で見ると、飛び出して立体的に見えます。2つの図形の間隔を広げると、難易度が上がっていきます。
(画像は子供の視力アップ法 アイトレーニング視快研福岡店より)
5 眼と体の協応のトレーニング
①ポーズをまねっこ
支援者と向かい合い、支援者が両手両足を動かしてとったポーズのまねをします。最初は左右対称の形からはじめて、徐々に左右非対称の形にしていきます。
(画像は記者撮影より)
動きの模倣が苦手な子はボディイメージができていないことが多く、体のどの部位を動かしているのか意識するように伝えましょう。
また支援者が右足をあげたのに左足をあげるなど左右を間違える子がいます。最初は「右足あげて」など声かけしながら取り組み、ポーズが合っているかを確認しましょう。間違えても責めずに、どこが違うかを具体的に伝えましょう。
慣れてきたら、徐々にスピードを速くしたり、ポーズの一覧から1つを指定してまねてもらうなど難易度をあげていきましょう。
②ラケット遊び
バドミントンや卓球のラケットを持ち、ひとりで羽根やピンポン玉を落とさずに何回も打ち上げられるかチャレンジしましょう。羽根やピンポン玉の動きを眼でとらえながら、その動きに手を合わせるトレーニングになります。
(画像はSPOTAS+より)
③フリスビー
フリスビーの動きを眼で追って、その着地点に体や手を動かすトレーニングになります。
(画像は文京区 フライングディスク体験教室・アルティメット大会より)
④声出し歩き
歩きながら、自分から動かしている部位や進んでいる方向を口に出して言います。大人が矢印や文字で動く方向を指示するのもよいです。
⑤矢印体操
前後左右の矢印(→ ↓ ↑ ←)が書かれた紙を見て、1つずつ「左」や「後」と声に出して読み上げながらその方向へジャンプします。
6 視空間認知のトレーニング
①ブロックで再現
まずはテーブルの上に形の異なる複数のブロックを並べて、その中から見本と同じブロックを探すことからスタートしましょう。
(画像は記者撮影より)
(画像は図書文化より)
(画像はCHinE INFORMATIONSより)
(画像は図書文化より)
慣れてきたら、2つのブロックを使って1つのかたまりをつくって見本にし、それを再現してもらいます。最初はブロックの見本のシートをつくり、その上に並べるようにするといいかもしれません。シートに補助線(ブロックとブロックの境界線)を入れるのもありです。
さらに使うブロックの数を徐々に増やしていきます。補助線をなくすと難易度が上がります。また完成形を回転させたり、左右に反転させるなど難易度を変えてチャレンジしましょう。
最後は見本や完成図を一度見せて覚えてもらってから隠し、子どもがブロックの形を記憶して、頭の中に見本を再現してもらいましょう。記憶力のトレーニングにもなります。
②好きな道具で再現
ブロック以外にも、人形のポーズや道具を使って再現させるなど好きなモノでを使うと子どものやる気アップにつながります。
③手芸用モール、ジオボード、ペグポードで再現
手芸用のモールを使うと字の形を作るトレーニングができます。書くことが苦手な子には、何度も繰り返し書がせるよりも、こうしたモールやジオボード、ペグボード、棒などを使って文字を再現させて点や線を確認する方が記憶に定着するかもしれません。
まずはパズルのように見本の図形を再現することからはじめてみましょう。
(画像はAmazon.co.jpより)
(画像は図書文化より)
(画像はYahoo!ショッピングより)
(画像は図書文化より)
まとめ
ビジョントレーニングになるいろいろな遊びの紹介はどうでしたか。まずは遊びから入り、慣れてきたら徐々にワークシートやアプリなんかと組み合わせた毎日のプログラムを組んでみましょう。あまり長時間にせず、少しずつ楽しんで毎日続けるのがポイントです。
以下の記事も見ながらプログラムを考えていきましょう。
参考にしたサイト・書籍
①メノコト
②『発達障害の子のビジョン・トレーニング(北出勝也)』講談社
③『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング(北出勝也)』図書文化社
表紙の画像はCOMG!より引用しました。