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眼球の構造(見え方の仕組み)と視機能について

今回は盲学校の研修からの紹介で、眼球の構造(見え方の仕組み)と視覚機能について紹介します。

1.眼球の構造(見え方の仕組み)について

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(画像は株式会社イナミホームページより)

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(画像はアジョック共栄会より)

眼球はよくカメラに例えられます。

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(画像はアジョック共栄会より)

まぶたがカメラキャップ、角膜がフィルターとレンズ、毛様体がピントで、光彩は入ってくる光量を調整するカメラの絞りに、水晶体はレンズ、網膜はフィルム、強膜がカメラボディに相当します。さらに、そのカメラをコード(視神経)でパソコン(脳)に繋いで処理しているイメージでしょうか。

実際にものを見るときは、

①角膜を通って瞳孔から目に入った光が虹彩で調節されて、

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(画像は株式会社イナミホームページより)

②毛様体とチン小帯の筋肉で水晶体の厚みを調節し、ピントを合わせて光を屈折させて、

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(画像は株式会社イナミホームページより)

③透明なゲル状の硝子体を通過して、網膜の黄斑に焦点を結び映像となって、

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(画像は株式会社イナミホームページより)

④その網膜の映像を視神経経由で脳に伝え、処理する、

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(画像は谷眼科医院ホームページより)

という流れで、我々は見たものを認識しているのです。

理科の授業で習ったかもしれませんが、レンズを通ってスクリーン(網膜)に投影される映像は上下左右反転になります。

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(画像はKURABOホームページより)

その映像を脳内で処理して私たちはいろいろなものを見ているのです。なんだか不思議な感じですね。

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(画像はアジョック共栄会より)

おさらいに眼の絵を描いてみましょう。 基本的に球形ですが、角膜のところがでっぱっているのがポイントでしょうか。

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(画像は株式会社イナミホームページより)

視覚障がいの原因は基本的にこれらのシステムのどこかにあります。

①眼球の構造や動き(強度近視、眼球振盪など)

②角膜や水晶体のレンズ部分(白内障など)

③眼球内の硝子体の部分(眼球内出血など)

④網膜の部分(網膜色素変性症、黄斑変性、未熟児網膜症、糖尿病網膜症、網膜剥離など)

⑤視神経乳頭も含めた視神経の部分(緑内障、視神経萎縮など)

⑥脳の認知部分 (脳炎や脳腫瘍など)

2.視機能について

人間は全情報のうち80〜90%の情報を視覚から得ています。その情報が得られないので、視覚障がいは、「情報障がい」とも言われます。

また見えないことにより、移動することや見て真似る・学ぶことが困難になります。

反対に言えば、音声や触覚(手などで触って確認する)で情報を得ることができれば、多くの部分をカバーできるということです。

スキルや便利な機器を活用することで、見えないからできないは、確認してできるに変わっていきます。

眼の視機能には5つの働きがあります。

①視力
②視野
③色覚
④光覚
⑤両眼視
の5つです。

それぞれ解説していきます。

(1)視力

どれだけ小さな文字(物)が読めるという力です。アルファベットの「C」のような形をした、ランドルト環などで測定します。学校の視力検査ではおなじみですね。

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(画像はNIDEKホームページより)

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(画像はNIDEKホームページより)

一般に測る遠距離視力(5メートル)以外に、眼科や盲学校では、近距離視力(30センチ)と最大視認力(一番よく見える距離と視力のこと、0.1の指標が5センチで見えるなら0.1/5センチとなる)も測定します。

また視力とは別ですが、最適可読文字といっても、素早く読むのに一番適した文字の大きさ(ポイント)も測定する場合があります。

盲学校の入学基準の多くは矯正視力が0.3未満です(視力だけでなく視野やその他の見え方の困難、進行性の病気などで視力が高い場合もあります)。メガネやコンタクトを外すともっと低い人も多いと思いますが、矯正できない、あるいは矯正しても見えにくいのです。

視力0.01の世界はこんな感じだそうです(コカコーラの缶の見え方の比較)。

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(画像はゴールデムタイムズより)

視力は0.01以下も測定します。

順番に
指の数が弁別できる「指数弁」
眼の前で手の動きが弁別できる「手動弁」
明るさ暗さがわかる「光覚」
明るさ暗さがわからない「全盲」
となります。

0.01>指数弁>手動弁>光覚>全盲

老眼の話

加齢とともに水晶体のレンズが固くなり、また毛様体やチン小帯の筋肉が衰えてくるためピント調節力が衰えてきます。
これが老眼の仕組みです。

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(画像はMy ACUVUEより)

マサイ族の視力が10.0というのは有名な話ですが、都会に住んでスマホを使用しているマサイ族の視力は1.0まで落ちてしまうそうです。現代日本人の視力が低いのも、都会に住んでテレビやパソコン、スマホの画面を四六時中眺めているからなのでしょう。

(2)視野

ものが見えている範囲のことです。

実際に視線を前に固定したまま、右手や左手を左右や上下に広げていってください。ギリギリ見えなくなったところまでがあなたの視野の範囲です。

健常な視野は、上60度、下70度、内側(鼻)60度、外側(耳)100度で左右合わせて約200度になります。

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(画像はあなたが緑内障になったら?より)

この視野が狭くなるのが視野障害です。
外側から視野が狭くなるの視野狭窄。
真ん中が見えなくなる中心暗転。
まだら状などに見えにくくなる視野欠損などです。

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(画像は相生会グループより)

ちなみに腕を伸ばして手をグーにしたのが視野5度くらいになります。

視野が狭くなると、大きな文字は逆に見にくくなります。また見えているようでも、一旦視野から消えると対象を見失ってしまいますし、視野の外から来た人や物は認識できません。

視野の中心が一番視力が高く、周辺に行くほど視力は低くなります。

動物の視野の話

理科の草食動物と肉食動物の違いで学びますが、両眼の視野が重なる範囲が、立体視で距離感がよくわかる部分になります。
草食動物は警戒範囲を広げるため眼が顔の横にあり、立体視の範囲が狭い代わりに視野は広くなっています。
逆に肉食動物は、獲物を狩る際に距離感が重要になるので眼が顔の前にあり、立体視の範囲が広くなっています。

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(画像はこどもeyeランドより)

そして実は人はライオンよりも両眼視の範囲が広いのです。木の枝を伝ったり、道具を使うなど手を使った作業に有効だったからでしょうか?

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(画像はこどもeyeランドより)

ちなみにウサギの視野は360度あるそうです。

盲点の話

実は青眼の方にも盲点があります。
画像で体験しましょう。スマホの方は画面を横向きにして●と★の間が10センチほどになるように調整してください。左目を閉じ、左の小さな●を右目だけで見てください、そのまま画面を近づけたり遠ざけたりしてみてください。

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(画像はbootメガネナカジマより)

どこかで右の★が消えますよね。
わかりにくい場合は画面を横にし、目との距離を調整してみてください。

他にもこちらのサイトで盲点の体験ができます。YouTubeの動画もあります。

これは網膜の一部に視神経の先(乳頭)が飛び出ていて、その部分の網膜がないからです。
マリオット盲点と呼ばれます。

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(画像はNIDEKホームページより)

(3)色覚

色を感じる力です。
実は男性の20人に1人は色覚異常があると言われています。

色覚は下の画像の石原色覚検査表などを使って診断します。

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(画像は参天製薬ホームページより)

板書やプリントを使う場合は、コントラストのはっきりした色使いや色以外で区別できる工夫が有効です。

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(画像は学校保健より)

東京都カラーユニバーサルデザインガイドライン」や「色覚障がいのある人に配慮した色使いのガイドライン(大阪府)」なども参考になります。

(4)光覚

光を感じてその強さを区別する感覚です。色調、彩度、明度の3つの要素を含んでいます。

人の眼は明るいところ、暗いところに行くと明るさを調整するのですが、太陽の光などが眩しく、全体が白っぽくみえてしまう羞明(しゅうめい)や明かりがないと暗くて見えなくなる夜盲などもあります。

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(画像はαのEVFが見せる世界より)

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(画像はWikipediaより)

(5)両眼視(立体視)

両岸で物体を立体的に見る力です。
人は左右の異なる視点から得た二次元の視覚情報を処理することで、三次元の距離感や遠近感を把握しています。

私たちは左右の眼で見る平面の画像を統合して、三次元の立体や距離感を認知しています。

試しに目をつむって右手と左手の人差し指を合わせてみてください。
できた方は両手にペンを持ってその先同士をを合わせましょう。

両眼でできることが、片目になるととたんに難しくなります。

弱視の方の多くは左右で視力が異なるので、遠近感が掴みにくくなるのです。

斜視の話

左右の眼の両眼視で私たちは物を立体に捉えたり、距離感を捉えたらできるのですが、左右の目が同じ方向を向かず、同じものを同時に見ることができないのが斜視です。

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(画像はボシュロムEYE百科より)

斜視の手術を受ける際には、将来の再手術に向けて記録を取っておいた方がよいそうです。

眼圧の話

眼圧とは眼の中の圧力、眼の硬さのことです。10~20mmHgが正常範囲ですが、眼の中の角膜と虹彩、水晶体の間にある「房水(ぼうすい)」という水分が適切に排出されないと眼圧が高くなり(眼球がパンパンに膨らんだボールのようになるイメージ)、視神経乳頭を圧迫したり、眼への衝撃で眼球破裂の危険性が高まります。

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(画像はこばやし眼科クリニックより)

逆に眼圧が低下すると、網膜が内側に引っ張られ、網膜剥離の可能性が出てきます。

眼科での診察

眼科では、上記のものも含めて、眼疾患の有無や遠見・近見視力、屈折以上の有無、眼位異常の有無、輻輳力、立体視、色覚、調整機能、眼圧、眼鏡やコンタクトレンズが必要かどうかなどをチェックされます。

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(画像はJoy Vison大分より)

今回はこの辺りで、次回は弱視の見え方と主な眼疾患について話していきます。



表紙の画像は株式会社イナミホームページから引用しています。