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ビジョントレーニング その1 事前説明編

文章を読むと行を読み飛ばす子、漢字で線が多かったり少なかったりする子、線がはみ出す子、人や物によくぶつかる子、キャッチボールが苦手でテニスや野球のバッティングで空振りする子、そんな子は周りにいないでしょうか?

そんな時に、目(視力)が悪いのかな?と思って眼科を受診しても視力には問題がない。なので、ひたすら練習させるけど、なかなか上達しないし本人のやる気もなくなってしまう。
そんなことがあると思います。

もしかしたら、眼球運動や両眼のチームワーク、眼と体の協応、視空間認知、立体視などの視覚機能が原因かもしれません。

弱視の子だけでなく、発達障がいといわれるの子たちの中にも、そんな課題のある子が沢山います。

そんな子たちに有効なのがビジョントレーニングです。ということで、今回はビジョントレーニングについてお話ししていきます。

1 視覚認知について

まず人の視覚認知の流れを確認します。①入力→②情報処理→③出力の流れです。

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(画像はLITALICO発達ナビより)

①入力

眼を動かして網膜に対象物をとらえ、その映像を情報として脳に送っています。

ここでは「視力」「両眼のチームワーク」「眼球運動機能」の3つの機能が関わっています。

②情報処理

眼の映像は視神経を通じで脳の視覚野に信号として送られて、処理されます。処理は「理解」「記憶」「操作」「空間の認識」「イメージ」の順番で行われます。

③出力

眼で見たものに対する脳や身体の反応のことです。例えば、あるものを見て別のものを想像したり、危険なものを避けるために瞬時に手足を動かしたりする反応です。スポーツや字や絵を書くなどの「体を動かす」動作のことです。

2 眼球運動について

対象物を的確に捉えるためには、眼球運動がスムーズにできなければなりません。この眼の動きには、追従性と跳躍性の2つがあります。

①追従性眼球運動

追従性とは、特定のものを見続ける眼の動きです。視点が線を引くような動きです。

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(画像はメノコトより)

追従性をチェックするには、指の先やペンの先を眼で見るように伝えて、それを左右や上下に動かしてみてください。

追従性の苦手な子の多くは、頭を動かしたり、途中で見失ったり、探すのに時間がかかったりします。

眼球運動の動きが良くないと対象から視線が外れてしまうので、ほんの読み飛ばしや手先の不器用さにつながります。

②跳躍性眼球運動

跳躍生徒はとは、瞬時に視点を切り替える眼の動きのことです。視点が点から点へとジャンプするような動きです。

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(画像はメノコトより)

跳躍性をチェックするには、右指先から左指先へ視線を交互に動かすように伝え、右指先と左指先を少しずつ動かしてみて、見失わないか見てみてください。

私たちはあまり意識していませんが、ものを見るとき、実は眼球が絶えず動いていますが、頭や首は動かさず、眼だけを動かしています。
逆に眼球運動が苦手な子は、頭や首を動かしてものを見ようとしていることがあります。

3 両眼のチームワークについて

平面の画像からものを鮮明にとらえる、立体的に見て距離感をはかるためには、両眼のチームワークと調節力が欠かせません。

試しに片目を閉じて、右手の人差し指と左手の人差し指をピッタリ合わせようとしてみてください、意外なほど難しくなってしまいます。私たちは両眼のチームワークのおかげで距離感がわかるんですね。

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(画像はMoviee映画を愛してやまない奴のブログより)

両眼のチームワークとは左眼と右目の連動性のことです。左右の眼球をよせたり開いたりして、対象に視点を合わせます。

両眼のチームワークができていないと、ものが二重にぼやけて見えてしまい、距離感がわからなくなります。キャッチボールなども苦手になりがちです。いろいろなものを見るときに眼だけを動かすのではなく、首を曲げて顔ごと動かしていないでしょうか?

調節力とは、対象物にピントを合わせる眼の機能です。ヒトは対象物との距離によって、眼の中にある毛様体という筋肉でレンズ(水晶体)の厚みを調整し、網膜上に正しく映像が結ばれるよう調整しているのです。

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(画像はWeb247より)

この調節力が十分でないとものがぼやけて見えてしまいます。 

4 眼と体の協応について

日常の動作のほとんどは、視覚で得た情報をもとにはじまります。脳からの指示がないと筋肉や関節は動きません。見ることが先で、手や足の動きはその後なのです。

キャッチボールも、眼でボールを追い、それに合わせて手が動くのです。 文字を写すのも、目で見たままの字を書いていますよね。

5 視空間認知について

ものを見るというのは、単に画像情報を取り込むだけではありません。それが何かを認識できて、はじめてそのものを見たことになります。
視空間認知が十分に機能していないと見たものの上下左右やものの大きさ・長さを理解することが難しくなります。

何度も身体を家具やドアにぶつけたり、食べ物をこぼしたり、鏡文字を書いたりと不器用と思われている子の中に、この視空間認知が弱い子がいます。視空間認知を高めるには、まず自分の身体のサイズや動かせる範囲、動かすときの力加減などを認識し、ボディイメージを高める必要があります。

また視空間認知には、①認識力(形や色、大きさなどの情報をもとに、見たものが何かを識別する)、②記憶力(識別を繰り返すことによって形などの情報を記憶できるようになる力、ワーキングメモリも関係している)、③操作力(見たものの向きを変えればどうなるか頭の中でイメージできる力)の3つの要素が含まれています。

視空間認知をチェックするには、四角や丸が重なったような図形を白紙に写してもらいましょう。

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(画像は記者撮影より)

これらの見る力について知り、その子のどの力が弱いのかをチェックした上で、ビジョントレーニング実践編へと移っていきましょう。

6 見る力のアセスメントについて

見る力のアセスメントとしては、『見る力を育てるビジョン・アセスメント WAVES』があります。トレーニングドリルもセットになっています。

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(画像は学研より)

これらも活用しながら、子どもの見る力を分析して適切なビジョントレーニングに取り組んでいきましょう。

ただし、毎日楽しんで続けることが大事なので、厳しくしすぎないことを意識しておきてくださいね。

では、以下の記事へと続きます。



参考にしたサイト・書籍

メノコト

②『発達障害の子のビジョン・トレーニング(北出勝也)』講談社

③『学ぶことが大好きになるビジョントレーニング(北出勝也)』図書文化社



表紙の画像はCOMG!より引用しました。