点訳ソフトと点字プリンターについて
かつての盲学校では、プリントも配布文書もテストも全て手で打っていたそうですが、現在ではパソコンの発達によってデータを点訳し、点字プリンターで打ち出すことが一般的になりました。
全国各地の点訳ボランティアさんのお力で今も多くの書籍などが点訳され、サピエ図書館にアップされたり、点字図書に製本され、視覚障がい者の方のもとに届けられます。
(画像はデジタル整理スタイルより)
今回はそんなパソコン点訳のためのソフトとそのダウンロード先を紹介します。
1 点訳ソフトってどんなもの?
点訳ソフトはパソコン上で、点字の編集ができるもので、点字の編集や点字プリンターでの印刷を行う「点字エディタ」、墨字のテキストデータを点字データへと変換する「自動点訳ソフト」、点字プリンターで印刷する触れる点図を作成する「図形点訳ソフト」の3つに大まかに分けられます。
2 点字エディタ
点字エディタは、BESやBSE、BRL、BETなどの点字データを作成・編集・印刷できるソフトの総称です。また文字を直接打ち込むことで、点字データを作成することも可能です。
1.Tエディタ2
加藤文彦さんが公開する、無料の点字エディタです。検索や記号入力、かな・ローマ字・6点入力だけでなく、簡易6点でも入力でき、ページ番号の挿入なども自動でできます。
盲学校に転勤した当初は、テキストデータをibukiTen C Editで点訳、Tエディタで編集・印刷していたので思い入れが深いソフトです。
Tエディタはこちらからダウンロードできます。
またBASING ROOMという点訳グループの使い方解説サイト「Tエディタ入門」がとてもわかりやすいです。
(画像はBASING ROOMより)
2.MBDE(Multi Braille Document Editor)
株式会社日本テレソフトが公開している、無料の点字エディタです。点字文書と墨字文書を同時に編集するMBDファイルを使用する事が可能で、点字を打ち込みしていく際に便利です。日本テレソフトのプリンター(TP32*、BPW32*、BMP-320、BMP-320C、DOG-Multi、DOG-Pro*、DOG-Basic32、DOG-Multi-SUPER、DOG-Pro32W、*は点字のみ印刷可能)で印刷することができます。
(画像は日本テレソフトより)
BESやBSEなど他の点字ファイルで保管した場合は、他のソフトでも使用できます。
MBDEはこちらからダウンロードできます。またMBDEに関する質問などはこちらでまず確認ください。詳細についてはこちらの取り扱い説明書を参照ください。
3.点字編集システム7
株式会社テクノツールが販売する、有料(ダウンロード版6,800円、パッケージ版14,400円)の点字編集エディタです。2級英語点字に対応(フルスペルの英単語(Grade1)を、2級英語点字(Grade2)に変換して入力することができます)し、点字図形の作成や従来の点字編集システム(DOS-BES、Win-BES99、点字編集システム3/4/5/6)で作成したファイルの編集作業も可能です。
また点字編集システム7では、複数人で協力して、点訳・校正作業が円滑に行える機能、製作支援機能(BESX)とNABCCコピー機能が追加されました。
ダウンロード版の販売はこちらからで、既に点字編集システム6を利用中の方は無料でアップグレードできます。
(画像は株式会社テクノツールより)
4.ブレイルスターfor Windows Ver4
ニュー・ブレイル・システム(株)の販売する、有料(55,000円)の点字エディタです。また同社のブレイルブリッジfor Windowsを併用すれば、点字と普通字の相互変換・データ交換が行えます。 詳細はこちらから確認ください。また30日間の体験版が無料でダウンロードできるようです。
5.点訳「おりコータクン」
点訳ボランティアグループ つつじフレンドの販売する、有料(5,000円)の点字エディタです。詳細はこちらから確認ください。3ヶ月に一度程度つつじフレンドさんによる講習会が行われています。
6.点体望遠鏡
ひらがなやカタカナで書かれた文章を点訳し、3Dプリンターで印刷もできるソフトで、2021年に滋賀県立守山中1年の越智晃瑛さん(12)が開発しました。
基本的な文字の点訳や、点字を打つ際に確認できる凹面点字の墨字印刷、データをbseファイルで保存、点字データを3Dプリンターで印刷ができます。ソフトの詳細とダウンロードはこちらのホームページから。
(画像は京都新聞より)
3 自動点訳ソフト
1.ibukiTen CおよびibukiTen C Edit
国立大学法人岐阜大学(工学部応用情報学科池田研究室) が開発した、無料の自動点字翻訳編集システムです。 ibukiTen C Editではテキストデータを点字データに自動点訳できます(文節分かち書きやなども)。ダウンロードはこちらから。
(画像はibukiTen Cより)
2.EXTRA for Windows Version 7
株式会社エクストラが販売する、有料の自動点訳ソフト・点字エディタです。新規価格は76,000円で、バージョンアップや追加ライセンスには割引価格があります。
(画像は株式会社エクストラより)
3.お点ちゃん
勝沼貞幸さんが開発された、有料の自動点訳ソフト・点字エディタです。USBお点ちゃん(2,800円)とお点ちゃんCD(2,000円)が販売されています。点訳ボランティアさん界隈で使われることが多いソフトだそうです。詳細や質問、購入はこちらから。また『パソコン自動点訳ソフトお点ちゃん(勝沼貞幸)』というマニュアル本があります。
(画像はパソコン自動点訳システム お点ちゃんより)
4.ブレイルブリッジfor Windows Ver4
ニュー・ブレイル・システム(株)の販売する、有料(55,000円)の点訳ソフトです。詳細はこちらから確認ください。また30日間の体験版が無料でダウンロードできるようです。
5.ハートコミュニケーション21
日本テレソフトが販売する有料(33,000円)の点訳・点字編集ソフトです。ibukiCを点訳エンジンのコアにし、日本テレソフトの点字編集ソフトMBDEを組み合わせたものだそうです。詳細はこちらから。
(画像は日本テレソフトより)
4 図形点訳ソフト
1.エーデル
藤野稔寛さんが開発した点図作成ソフトです。点図を一から自分で作るのは大変ですが、次に紹介するTenkaを使って画像を取り込むと比較的簡単に作成できます。
立体コピーなどもそうですが、点図や触図を作る際のポイントは、はっきりわかりやすいよう、大きく、シンプルにすることです。あまりに小さい図形や複雑な図形は、触るとわかりにくくなってしまうのです。
(画像は『エーデルをはじめよう!-Web編-』より)
『エーデルをはじめよう!-Web編-』や筑波技術大学 情報・理数点訳ネットワークの『エーデルをはじめよう!』PDF版、藤野稔寛さんのサイトが参考になります。ダウンロードはこちらから。
2.Tenka
Tenkaは画像や文字(墨字)を3種類の変換モードで点図化するソフトです。
(画像はエーデルをはじめよう!-Web編-より)
作成された点図はエーデルの点図データになります。これを EDLファイルとして保存したり、エーデルのクリップボードにコピーしたり、直接点字印刷したりできます。ダウンロードはこちらから。
3.ブレイル・フギュア(BrailleFigure)
日本テレソフトの作成した点図作成ソフトです。ソフトの登録費用として、1件1000円で提供されます。詳細はこちらから。
(画像は日本テレソフトより)
4.橋立
障害学生支援プロジェクト(DSSP)のホームページで公開されている点図作成ソフトで、無料で公開されています。詳細はこちらから。
(画像は障害学生支援プロジェクトより)
5 その他
1.点字ビューア(Braille Viewer)
点訳されたデータを普通のテキストで表示して、誰でも手軽に読むことができるようにするためのフリーソフトです。詳細はこちらから。
(画像は点字・点訳:一点入魂より)
2.漢点字編集システムOP-X
ムラオ電子が販売するOP-Xは、漢点字を用いた点訳作業を支援することを主な目的として開発されたソフトウエアです。川上漢点字に対応しています。詳細はこちらから。
(画像はエーティースクウェアードより)
3.BESE
日本点字図書館が公開している、エーデルデータ(edl、ebk、hebk、nebkのいずれも)をBESデータに変換する無料ソフトです。詳細や申し込みはこちらから。
(画像は日本点字図書館より)
4.TFC
藤野稔寛さんが開発した、3つの形式の点字文章ファイル(hEBK、BSE、BES)を対象とし、相互に変換する無料ソフトです。こちらからダウンロードできます。
5.B’Score
「ビースコア」は、点字楽譜の規則を利用して、点字楽譜はもちろん、五線譜やMIDIファイルも作成することができる、視覚障がい者と点訳者のためのソフトウェアです。 詳細はこちらから確認ください。
(画像はビースコアより)
6.自動点字翻訳エンジン「:::doc(てんどっく)」
高専発ベンチャーのTAKAO AI株式会社(東京都八王子市、代表取締役社長:板橋竜太、以下TAKAO AI)は、画像データから自動で点字に翻訳する点訳エンジン「:::doc(てんどっく)」の開発、実用化に成功し、2021年10月20日(水)よりデモサイト上での無料体験サービスの提供を開始しています。
学校からの手紙や地域イベントのお知らせ、周辺スーパーチラシの特売情報などのテキストデータのない書類も、すぐに点字で情報を入手できるようになるのです。
(画像はPRTIMESより)
6 点字プリンター
点字プリンターはなかなか高く、個人での購入は難しいかもしれません。が、たまにヤフオクで見かけることもあります笑
① ESA721 Ver'95
ESA721 Ver'95は、通常の6点の他に大きい点と小さい点を付け加えてあるので、太線・中線・細線と3種類の線を印字できます。
それぞれの線の点間を自由に変えらるので、今まで点訳の最大のネックだった点図が思いのままに印字できます。表面を印刷してから裏返すことで両面印刷も可能です。価格は970,000円です。働いていた盲学校で初期からお世話になりました。
(画像はJTRより)
② 点字両面同時プリンタ ESA919
両面同時印刷ができるので、途中で用紙を入れ替えるわずらわしさもなく、高速で確かな点字が簡単に印刷できます。ESA721のような作図機能はありません。価格は1,250,000円です。
(画像はJTRより)
③ Lサイズ点字両面プリンタ ESA2000L
中途視覚障害者にとって、読みやすい点字を提供するために開発された、Lサイズ点字専用の両面同時プリンタです。価格は1,350,000円です。
(画像はJTRより)
④ 点字両面同時ラインプリンターESA300X2
両面同時の高速ラインプリンターで、1ページ表・裏を約7秒で打ち出します。
(画像はJTRより)
⑤ 点字ストックフォーム用カッティングマシン V555BR
ページエンドと片耳(両耳)カット同時で1,000枚が15分で切断完了する機械です。
(画像はJTRより)
⑥点字製本機 F15BR
テープ式の製本機です。コピー用紙にも対応しています。
(画像はJTRより)
2.株式会社日本テレソフト
①DOG-Multi Super version2
墨字と点字を同時に印刷できるプリンターです。両面に点字と墨字を印刷できます。働いていた盲学校で途中から登場し、MBDエディタを多用する人が増えた(保存データで混乱してよく相談された)のはいい思い出です。価格は1,300,000円です。
(画像は日本テレソフトより)
②DOG-Multi ADF
DOG-Multi ADFは、点字と墨字を同時に印刷できる単票用片面点字プリンターです。 A4サイズの専用用紙に印字することができます。
(画像は日本テレソフトより)
③DOG-Basic32 V2
6点点字だけでなく8点点字にも対応しています。表面を印刷してから裏返すことで両面印刷も可能です。
(画像は日本テレソフトより)
④DOG-Pro32W
点字を同時に両面印刷できるプリンターです。価格は1,800,000円です。
(画像は日本テレソフトより)
⑤点字用タックシール
点字印刷専用に設計された紙シールです。名刺サイズのシールですので、切り取ることなく、 簡単に点字名刺が作成できます。
(画像はJTRより)
3.企業組合カトレア・サービス
① 点字・点図小まわりプリンター「アーチBP-S」
マルチ点字プリンター「アーチBP2」の機能を大幅にバージョンアップし、「誰でも、何にでも、安く」使える機能を一層進化させ、さらに使いやすく小まわりに進化した点字プリンターです。用紙送りローラーが可動式のため、点字用標準単票用紙、点字連続用紙、タックペーパー、ラミネート加工紙、長4・角3封筒、はがき、名刺などにも点字を印刷できます。516,000円(送料込み・消費税別)と比較的安価な点字プリンターです。
(画像はカトレアサービスより)
4.有限会社アシストシステム
①マルチ点字プリンター MP4
表面印刷専用の点字プリンターです。両面印刷はできませんが、標準価格 270,000円(税抜き)とかなりお安目の点字プリンターです。
(画像はアシストシステムより)
②連続紙点字プリンター MP5
こちらは表面を印刷してから裏返すことで両面印刷も可能です。標準価格 290,000円(税抜)です。
(画像はアシストシステムより)
③名刺点字プリンタ MP6
名刺に直接、点字印刷ができます。用紙トレイに1枚ずつ手動でセットする必要があります。標準価格 280,000円(税抜)です。
(画像はアシストシステムより)
5.有限会社エクストラ
①ベーシックD V5
インデックス社製 両面同時印刷対応の連続用紙用点字プリンターです。オプションで、本体と用紙を収納できる防音ボックスもあります。価格は 680,000円(税別)です。
(画像はエクストラより)
②エベレストD V5
インデックス社製 両面同時印刷対応の単票用紙専用点字プリンターです。オプションで、本体と用紙を収納できる防音ボックスもあります。価格は785,000円(税別)です。
(画像はエクストラより)
③ビュープラス・タイガープリンター
米国ViewPlus社が開発した世界最高峰の点字・点図プリンターです。ビュープラス・タイガープリンターでは、通常の点字印刷機能に加え、表、グラフ、地図、イラストなどを驚くほど簡単にきれいな点図として印刷することが可能です。価格は764,000円(税別)で、自動点訳ソフトEXTRA for Windowsが必要になります。
(画像はエクストラより)
6.ケージーエス株式会社
① 超高速点字プリンタ BRAILLO 300 S2(ブレイロ)
毎時900枚の高速点字印刷が可能だそうです。
(画像はケージーエスより)
②点字ラベラーBL-1000LINK
パソコン・Android端末・ブレイルメモスマートとBluetooth®接続を行い、簡単に使用することができます(USB接続も可能です)。無色透明のテープを使用するため、どこにでも貼ることができます。価格は73,700円(税込)で、別売品の専用点字テープ(2巻1セット)は1,980円(税込)です。
(画像はケージーエスより)
7 点字用紙など
日本点字図書館わくわく用具ショップなどでは、点字プリンター用の点字用紙が販売されています。1箱1000枚入りで、3,000〜4,000円程度です。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
またその点字用紙を閉じるバインダーも販売されています。
(画像は日本点字図書館わくわく用具ショップより)
まとめ
点訳ソフトと点字プリンターの紹介どうでしたか。点字プリンターの値段に驚かれた方も多いかもしれません。拡大読書器などもそうですが、視覚障がい者の方の数が少ないため、どうしても製品の価格が高くなってしまうのです。そして値段が高いのでなかなか売れないという悪循環…。盲学校でも購入や買い換えがなかなかできなく、故障やテスト前などは、印刷の順番待ちで遅くまで待った記憶があります。
これから先の未来では、サピエ図書館などでの点訳データのダウンロードがさらに広がっていくのでしょうが、紙の点字が無くなるのはなんだか寂しい気もします。
海外では、レゴで点字プリンターを作った少年の話もありますし、今後、より安価な点字プリンターが出てくればいいのになぁと思います。
(画像はロケットニュースより)
参考にしたサイト
①杉田正幸ホームページ
②名古屋点訳ネットワーク 点訳関連ソフト
③エーティースクウェアード 点訳ソフトウェア
表紙の画像は富山市ボランティアセンターホームページより引用しました。