見出し画像

体験記事「第10回JFVAクラブ日本一決定戦」

2023年6月24日(土)25日(日)の2日間、神奈川県ライトセンター・神奈川県立産業技術短期大学校・横浜市立中尾小学校を会場に第10回JFVAクラブ日本一決定戦が行われました。

視覚障がいスポーツのフロアバレーボールの各地区予選を勝ち抜いたチームが集まり、文字通り日本一のチームを決める大会です。

コロナ禍の影響で2019年以来開催できておらず、4年ぶりの開催となりました。僕自身は青眼者ですが前衛プレイヤーとしてフロアバレーボールチームOSGに所属しており、今回4年ぶりに大会に参加してきました。


第10回JFVAクラブ日本一決定戦参加チーム

参加チームは以下の通りです。第一部では、前回王者の剛腕前衛アタッカー町田さん率いるライトセンター球技クラブ打倒を誓い、各地からチームが集まりました。

〇第一部
・北日本大会優勝:函館FVC(北海道)
・北日本大会準優勝:札幌レッドスコーピオンズ(北海道)
・東京大会:レアルエボリューション(茨城県)
・神奈川県大会優勝:ライトセンター球技クラブ(神奈川県)
・神奈川県大会準優勝:Rising Sun(神奈川県)
・中部ブロック大会(一部):キングシャッチー(愛知県)
・近畿ブロックFリーグ(一部):OSG(大阪府)

〇第二部
・神奈川レディース&シニア大会優勝:6Stars(神奈川県)
・神奈川レディース&シニア大会準優勝:悟空倶楽部(神奈川県)
・中部ブロック大会(二部):ゴールデンシャッチー(愛知県)

今回は僕自身の参加した第一部を中心にその様子をお伝えします。

コロナ禍でのブランクが大きい

視覚障がいスポーツであるフロアバレーボールで、アイシェードを着用して全く見えない前衛プレイヤーは、音と触覚を頼りにプレイします。また前衛同士はネットを挟んで対面しますし、同じチームの前衛は3人くっついてブロックします。そのため、どうしても接触は避けられません。

そのようなスポーツの特性上、なかなか思うように練習や大会ができない状況が続きました。

そのため、ブランクの影響で以前の実力を発揮するのが難しいチームもあったのが現状です。ただ大会も復活しましたし、これから各チーム練習で以前を上回る力を取り戻していくのではないでしょうか。

僕自身も仕事・家庭の都合上、チームの練習に全く参加できておらず今年に入ってからようやく練習に参加し始めました。

実際にこの日本一決定戦の試合に出場し、足腰の衰えや特にボールの音が聞き取れないブランクをひしひしと感じました。もともとそんなに耳がよい方でもなく、周囲の音や声から状況をイメージしてプレイしていたのですが、それも上手くいっていないのでしょう。

これからまた鍛え直さないといけなと痛感しました。

白熱する試合

とはいえ、やはり日本一決定戦。各地区の代表が集まる大会なので、レベルの高い白熱した試合が繰り広げられました。それぞれのチームが知恵と技術を絞り、意図をもってプレイしているのが印象に残りました。

試合の様子はYouTubeでライブ配信されていました。A会場(ライトセンター会場)の動画は解説付きです。

僕は上手く解説できる自信がないので、ぜひYouTube動画を見てください。フロアバレーボールを知らない方も、その迫力に圧倒されると思いますよ。

1日目 A会場(神奈川県ライトセンター)

開会式
第一部Aプール予選第1試合
 レアルエボリューション vs OSG
第一部Aプール予選第2試合
 STRIKERS vs 函館FVC
第一部Aプール予選第3試合
 レアルエボリューション vs 函館FVC
第一部Aプール予選第4試合
 STRIKERS vs OSG

1日目 B会場(神奈川県立産業技術短期大学校)

第一部Bプール予選第1試合
 レッドスコーピオン vs Rising Sun
第一部Bプール予選第2試合
 キングシャッチー vs ライトセンター球技クラブ
第一部Bプール予選第3試合
 レッドスコーピオン vs ライトセンター球技クラブ
第一部Bプール予選第4試合
 キングシャッチ ー vs Rising Sun

2日目 A会場(神奈川県ライトセンター)

第一部Bプール予選第5試合
 レッドスコーピオン vs キングシャッチー
第一部Bプール予選第6試合
 Rising Sun  vs ライトセンター球技クラブ
第一部決勝戦
 OSG vs ライトセンター球技クラブ
閉会式

2日目 B会場(神奈川県立産業技術短期大学校)

第一部Aプール予選第5試合
 レアルエボリューション vs STRIKERS
第一部Aプール予選第6試合
 OSG vs 函館FVC
第一部3位決定戦開始
 レアルエボリューション vs Rising Sun

各地の仲間との交流

4年ぶりの大会ということもあり、久しぶりにお会いする方々がたくさんいました。

1日目の夜にはライトセンター球技クラブさんに招待された交流会にも参加させていただきました。どのチームも熱い想いをもった方々が集まり、良い刺激をいただきました。

やはりチームによって考え方や攻撃/守備のスタイルがありますし、戦略も異なります。ただフロアバレーボールはチームスポーツなので前衛・後衛含めた全員が考え方をすり合わせ、協力していくことが必要不可欠だよなぁと話していて改めて実感しました。

スポーツである以上、ミスは必ず出てきます。そこでミスを責めるのではなく、「どうしてほしいのか」「どうしたらよかったのか」「次からどうするか」をきちんと共有して次に繋げることが大事なんでしょうね。うちの監督は厳しいですが笑、その辺りをみんなで共有しているから、ゲーム中も悪い雰囲気になりにくいんでしょうか。

あと4年ぶりにお会いするみなさんには、やはり4年分の年月が流れていました笑。

どのチームも高齢化の問題…というと怒られそうですが、世代交代をどう進めていくのかという課題があるようです。

盲学校の全国大会がグランドソフトボールからフロアバレーボールに代わり、学生間での裾野は広がっているはずです(生徒数は減少していますが…)。盲学校からその先でフロアバレーボールを続ける環境づくりや、フロアバレーボールの指導、特に前衛の指導ができる人の育成が必要なのかなと思います。盲学校側でもコロナ禍でフロアバレーボールを始め視覚障がいスポーツの専門性継承ができないままに人事異動があり、困っているそうですが。

戦術・戦略や練習方法なども含めた情報をもっと広く共有してもいいのかもしれません。あと指導者自信が前衛も後衛もどちらもプレイしておいて欲しいなとも思います。

また僕自身は請願者ですが、青眼・弱視・全盲を問わず楽しめるのがフロアバレーボールの魅力の1つだと思います。

個人的にはゴールボールやブラサカのように体験会や情報発信でより多くの人に認知してもらい、視覚障がいの有無を問わず裾野を広げていければ…なんて考えてしまいました。

J:COMによるTOKYOパラスポーツチャンネル中継

今回は決勝戦の様子がTOKYOパラスポーツチャンネルで編集され解説付きで放送されました。ライトセンター球技クラブ町田さんのインタビューもあります笑。

(画像はTOKYOパラスポーツチャンネルより)

放送に先立ってホームページには動画を含むフロアバレーボールの解説ページがありました。フロアバレーボールをあまりよく知らない方はぜひこちらのページも覗いてみてください。

決勝戦では、試合の解説はもちろん、スロー再生やハイライト、インタビューなど内容盛りだくさんでカット割なんかがめちゃくちゃカッコよかったです。

YouTubeでの放送はこちらから

今回の放送を機に、フロアバレーボールの認知度が高まればいいですね。

決勝戦の結果は…

決勝戦は、OSGとライトセンター球技クラブとの戦いになりました。

2018年の決勝ではOSGが、2019年の決勝ではライトセンター球技クラブがそれぞれ勝利し、優勝しています。

僕が盲学校に転勤してフロアバレーボールを始めた頃からライトセンター球技クラブは絶対王者として君臨していました。

以下は試合とは関係ない、ライトセンター球技クラブについての話です笑。

固い固い前衛のブロックと後衛のレシーブをどう崩すのか…守備型チームのライトセンターのペースに合わせていては終わらないラリーの沼に呑まれてしまいます。

またエース町田さんの攻撃をどう凌ぐのか。対峙してみてわかる強烈なアタックと、見えているんじゃないかと疑いたくなるような正確に前衛の隙間を抜いたり、ブロックの指先に当てたりするアタックには何度も苦渋を飲まされました…かといって町田さんばかりに意識を向けていては、他の前衛や後衛のアタックにやられてしまいます。

そして強力な前衛を意識すればするほど、なぜか前衛にサーブやアタックがスパッと入ってしまい、あえなく速攻でやられてしまうのです。

そんなライトセンターに挑むため、OSGのメンバーは練習を重ねてきました。

第1セット序盤は、まさかのあのライトセンターにアタックミスやパスミスなどのミスが重なります。

以前別の記事でフロアバレーボールについて紹介したときに、「フロアバレーボールはミスの少ない方が勝つ」と書きましたが、それはこのライトセンター球技クラブをイメージしてのことです。

そんなライトセンターにこれだけミスがあるのは珍しく、それだけOSGの強烈なアタックや固いブロック、大きな声や音のフェイントのプレッシャーが影響していたのかもしれません。

OSG後衛のアタックとライトセンターのミスとで点差が広がり、13ー7でライトセンターのタイムアウトになります。

ライトセンター交代で阿部さんが入り、町田さんの前衛ブロックの指先をピンポイントで狙うアタックを決められます。まるで前衛のブロックの手がどこにあるのかがわかっているかのようなアタックです。僕自身も何度もこのアタックでのブロックアウトを経験しました。

13ー12でOSGがタイムアウトをとります。タイム時には、このアタックへの対処法を前衛で共有して対策しました。

この間もOSG前衛のブロックは固く、文字通り身体を張って止めにいく姿が印象的でした。ここからOSGが前衛、後衛のアタックで点差を広げていきます。

そのまま21ー14でOSGが第1セットを先取します。

ここで終わらないのもライトセンターの強さです。ライトセンターとの試合で1セット目を取っても、2セット目で終わらないラリーにもつれこみ、気づけば点差を開けられるのです。

2セット目からは、ライトセンターのパスミスもなくなり、パスに合わせて町田選手が捕球する位置をずらしてからのアタックが続きます。

序盤はもっとシーソーゲームになるかと思いましたが、OSGのアタックが続きます。OSGのブロックはとても固かったです。6ー3でライトセンターがタイムアウトを取ります。

そこから6ー6まで追い上げられます。ライタセンターがOSG後衛のアタックに対応し、なかなか得点が決まらなくなってきた印象です。

その後もOSGが特点を重ねても8ー8、11ー11と追いつかれます。また町田さんの位置をずらすスパイクに11ー12と逆転されてしまい、OSGタイムアウトをとります。

苦しい場面でしたが、ベンチからは応援の声を張り上げました。

フロアバレーボールはそのゲームの性質上、サーブの笛が鳴り、その後、アタックポイントやブロックアウト、レシーブミスなどでの主審の笛が鳴るまでの間はベンチからは声を出せません。

なので、限られた間にコート上でプレイできない分、想いを伝えました。追い上げられたり、連続でポイントを取られたり、ミスしたり、チームの雰囲気が悪くなると、ベンチもコート内も声が出なくなってしまいます。そこをベンチからはなんとか盛り上げられればと思ったのです。

12ー13、13ー14、14ー15、16ー16、17ー17、18ー18とシーソーゲームが続きます。

OSG後衛のアタックがなかなか決まらない中、前衛のアタックが決まり、引き離されず粘ることができました。

19点目を決めた端中のブロックアウトのときにはベンチで飛び上がらんばかりでした。川島のアタックも決まり、20ー18でマッチポイントとなります。

そして獅々堀のアタックが決まり、21ー19で第二セットOSG、セットカウント2ー0でOSGが見事優勝を決めました。

と僕の思い出を振り返りつつ試合の流れを紹介してましたが、百聞は一見にしかず、ぜひとも決勝戦の臨場感あふれる動画を見てみてください。

まとめ

特に決勝戦の紹介では個人的な想いが溢れ出てしまいました笑。

思い起こせば2018年はライトセンターに勝って優勝し、2019年には決勝でライトセンターに敗れました。ライトセンターへのリベンジを誓って練習を重ね、東京パラリンピックに合わせたイベントも予定されていた2020年はコロナ禍で嘘のように全てが白紙になってしまいました。

僕自身も盲学校から転勤したこともあり、フロアバレーボールから離れていましたが、今回こうして再び日本一決定戦に参加することができました。

久しぶりのフロアバレーボールの公式戦は、やっぱり最高でした。決勝戦では、ハラハラドキドキ、手に汗握りながら、声援やタイム中のアドバイスなど出来ることをしました。でも決勝戦の舞台でプレイしたかったなという想いもあります。これから練習あるのみですね。

そしてYouTubeライブ中継はもちろん、J:COMによるTOKYOパラスポーツチャンネル中継の迫力はすごかったですね。途中にも書きましたが、フロアバレーボールの認知が高まり、盛んになっていくきっかけになればいいですね。

フロアバレーボールを知らない方、興味を持った方はぜひぜひ動画を覗いてみてください。



表紙の画像はJ:COMによるTOKYOパラスポーツチャンネル中継のサムネイル画像より引用しました。