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苦手が好きに転じること

昔苦手だった食べ物が、大人になるとなぜか好きになる。そんな経験は大人であれば誰しもがあるのではないだろうか。ある人に言っていたのは、大人になると味覚が鈍くなり、苦手なものが苦手じゃなくなるんだ(ほんとかどうかは知らない)とか。なるほど、と思ってしまった。

では音楽ではどうか?最初に聴いたときは「ん〜・・・自分にはピンとこない」という曲が、時間をおいて聞くと「あれ?なんかいいな!」という経験。僕はかなりある。思い返せば中学時代、ジャケ買い(懐かしい!!)したExtremeの「Waiting For The Punchline」。

当時の自分はアルバムを聴いても「?」という感じだった。唯一「Midnight Express」という、ヌーノ・ベッテンコートの超絶ギターが聞ける曲は「なんか、ええな」というくらいだった。幾度の引越しによるCD棚の整理のたびに、生き残ってきたこのアルバム、通して聴いて「いいアルバムだわ!」と思ったのはもしかしたら30歳近くなってからかもしれない。

他にも、Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」も、リリース当時にCDショップで視聴したが「?」だったし、Third Eye BlindやMatch Box Twentyのアルバムもそうだ。どのバンドも、今では大好きなのだから、好みというものはわからないものだ。

自分の中で、その最たるものはRadioheadかもしれない。最初の出会いは1999年、学生時代に友人がアルバム「OK Computer」を絶賛しており、貸してくれる、ということで聴いてみた。当時はGreen Dayだったり、Yellow Monkey、L'Arc~en~Cielと言ったアップテンポな曲も多いバンドをよく聴いていた。そんな中でOK Computerは、自分にとってはなんともゆったりしすぎるアルバムに聞こえたのかもしれない。とはいえそこまで「?」でもなかったのだが、まあ、ピンとは来なかった。

その後、いろんな音楽を聴く環境に身を置くことになり、自分の中で「あ、いいな〜」と感じる楽曲は色々なタイプに広がっていくことになる。そんなとき、レディオヘッドの新曲が耳に入ってきた。「ピラミッド・ソング」だ。これまた自分の中では響かなかった。

そして2003年、またまたレディオヘッドの新曲登場。「There There」だ。これまた響かないかと思いきや、「あれ、なんだか暗い曲だけど、かっこいいかも・・・」と感じるようになる。そして、その年の夏、サマーソニックに友人と行ったのだが、目的はMANDO DIAO、STEREOPHONICS、THE STROKESで、世間的には大注目のRADIOHEADはスルーしていた。実際、ストロークスを見終わって、自分は大満足。友人宅に行って酒を飲むことくらいしか考えてなかったのだが、一緒に行った友人はどうやらRadioheadに興味があったらしく、ちょっとだけステージを見たのだが、如何せん曲がわからないし、当時はどちらかというと「あまり理解できない音楽」というイメージの方が強く、友人もそのことを知っていたのでなんとなく、2、3曲で切り上げた。のだが、当時の大阪サマソニは、アストラムライン(だったかな?)の駅まで、メインステージの音が届いていた。ステージを後にしてから駅までの間、ざわざわしていたものがあり、駅についたものの、友人と二人でステージを振り返って見入ってしまったのだ。今思えば、ちゃんと見ておけば良かったと思うし、友人にも申し訳ないことをしたなと思う。

それから、改めてRadioheadを聴いてみようと思い、手に取ったのが、「Kid A」だった。

あっという間に聴き終わり、もう一回通して聴く。素直に「いい」と感じたのだ。バンドっぽくない、なんて当時は思っていたのかもしれないが、そもそもジャンルやら固定概念で音楽を聴いていたのだ。バンドなんだからこんな音のはず、というのは関係ない。思えばこの頃から、音楽に対する向き合い方も変わり始めたのかもしれない。(大きく変わるのは2014年以降・・・って最近〜!)。

何が変わったのか?それは自分のアンテナの向きだったり、音楽を聴くフィルターの変化なのだろうと思う。「自分が好きなのはこの”ジャンル”」とか、「やっぱ”ロックはこうでなくちゃ”」といった自分の中での「大前提」が知らないうちにできてしまうことがあるのだ。意外とそういったものは急に全部取っ払うことはできないもの。自分もそうだった。なので、素直に「あ、いい曲だな〜」と感じた曲は、きっといい曲なんだ、と勝手に決めつけることにしたのだ。「いい曲、という感覚は人それぞれなのだから、それでいい。」ここまでたどり着くのに、本当に必要のない遠回りをしてしまったのが、本当に残念で仕方ない。

でも、当時の自分が「??」と感じたことも事実。きっと、当時の自分にはまだまだ早い音楽もたくさんあったのだろう。でも、だからと言って、一度、昔に聴いて感じたことが全てではない、ということは言っておきたい。時間を経ることで、感性というのも変化するはず。なのでジャケ買いしたけど全然聴いてないアルバムがあっても、決して処分せず、勇気を出してもう一回聴いてみてはいかがだろう。もしかしたらどハマりするかもしれない。

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