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名脇役は突然に

おかげさまでこれまで大きな病気はせずに済んでいるけど、小さいころからあまり身体が頑丈な方ではなく、ちょっとした病院通いはよくしていた。
なので、良くも悪くも病院慣れはしているつもり。「なんとなく病院に行くのが怖い」というのはない(と、思う)。

それでもどうしても慣れないのが、痛みを伴う治療や処置。
下手に病院慣れしているせいもあるのか「次は痛そうだぞ…」というのが何となく予想できてしまって、次回予約を入れた時点から心のどこかが緊張している感覚が続く。

中でも苦手なのが歯科で、大人になってから「痛そうだから行かない」ということこそしなくなったものの、毎回「お金を払ってまでなぜ痛い思いをしなければいけないのか…」と心をざわつかせながら臨んでいるのだった。

ところが先日、そんな私にとてもありがたい存在に出会うことができた。

久しぶりの歯医者さんで臨んだ治療、台の上に横たわって口を開ける直前、目元をやわらかいタオルで覆われた。
治療中の水しぶきなどが顔に当たらないようにという配慮の、おそらくはフェイスタオルのようなもの。その香りがふわっと鼻に届いた瞬間、「これは…」とすっかり気を取られてしまった。

香りがとても良くて、それがどこの柔軟剤なのか、ソフ〇ンなのかダウ〇ーなのかがどうにも気になった。
そこの歯科の雰囲気からするとダウ〇ーを使っていそうだけど、あれってその辺のドラッグストアで手に入るんだっけ。買えないとしたら、レ〇アとかかな…?

そんなことをあれこれ考えているうちに時間がたち、治療は終わっていた。

痛みがないように治療してくれた先生にももちろん感謝しているのだけど、この柔軟剤を採用してくれた関係者の方にも敬意を表したい。
私は普段あまり柔軟剤を使わず、洗剤の香りがほのかに香る程度が好きなのだけど、柔軟剤にこんな名脇役が務まるとは想定外だった。

香水やアクセサリーのような主役ポジションでもなく、ファッションを引き立てる準主役ポジションでもなく、大事なところでさりげなく登場していい味を出してくれる名脇役。
ずいぶんかっこいいじゃないか。

ちなみに、あの時出会った柔軟剤がどこの何だったのか、いまだ聞くことはできていない。
謎に包まれているのもまた、あの人の名脇役らしさかもしれない。

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