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時間

最初に、とても長い時間が経過したのだと思った

あるいは、一瞬だったかもしれないと考え直す

目を開くとそこは知らない場所だった

今は、いったい何時だろうかと考えてみた

しかし、その場所には時刻を推察できるようなものはなかった

真っ白な壁

真っ白な天井

広さは4畳半くらいだろうか

ベッドが一つあるだけ

格子のついた小さな窓があるドアが一つ

ほとんど光が差し込まない小さな窓

窓は外につながっているのだろうか

その窓から、太陽の光らしきものは見えない

今は夜なのかもしれないと思った

そんな部屋で、わたしはベッドに横になっている

体は……

そうだ……

体が動かない……いや、動かせないのだ

どうやら体を固定されているようだ

手足と、腰をバンドのようなもので固定されている

わたしはあきらめるように、目をつぶって考えた

時間……

時間について考えてみた

ここに来る前はどこに居ただろうか

思い出せない

ここに来てどのくらい経っただろうか

把握できない

なにもかもが、全くわからない

そもそも時間とはなんだろうか

ある地点から別の地点への移動の事かもしれない

あるいは、誰かと会う約束の事かもしれない

なにか作業を始める合図かもしれない

今のわたしにとって、それらの定義はすべて無意味だった

やがて、わたしは混乱から一転して安らかな気持ちになった

そうだ

時間について気にする必要は無いのだと

そう理解したとき

わたしは完全な無になった

きっと、ここには時間は存在しないのだろう

もう何も考える必要はないのだから

時間とは考える事そのものであり

考える必要がなくなれば、時間は存在しないのだ


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そろそろ、社長少女の電子書籍が正式リリースになりそうです。正式リリースに伴い無料公開していたnote版は閉鎖されます。この機会にぜひnote版も読んで下さい(電子書籍版とは内容が異なります)



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