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イラストレーターは、なぜ納期を守れないのか?

こういった発言を見ると、反AIは対立を煽るばかりで本質的な問題の解決について議論していない事が分かりますね。

流石に大半の絵描きさんが納期を守らないというのは、やや一般化がすぎる言い方だとは思います。

絵描きさんに限らず、世の中には納期を設定する側とされる側が存在します。絵描きさんは主に納期を設定される側ですから、当然ですが「守れない」という状況は発生しやすいかと思います。

※この文章では主に、納期を守れない=失敗(リテイク)として扱っています。そのうえで、最終納期=納品して世に出るものは別で考えていますのでご注意下さい。これらは別のものですが、中間成果物にも納期があるので、納期を守れない=中間納期も含んで話をしています。そのうえで、どうやって最終納期を守るのか…という建設的な文章です。

ここで議論すべきなのは、納期を守れない絵描きを解雇してAIに切り替えていこう!という話ではありません。AI利用者もそんな安易な発想に陥らないように注意しましょう。AI利用者にとって絵描きは敵ではありません!

絵描きがなぜ納期を守れないのか、クリエイター(納期を設定される側)とディレクター(納期を設定する側)の経験から言わせてもらいます。

そもそも、絵を描くという行為は、かなり低い確率でしか納期は守られないのが普通だと言えます。プロとしてそんなことでいいのか?と思うかもしれませんが、これは、プロ野球選手に例えると、ヒットを打てる確率=納期を守れる確率だと思って下さい。

「プロ野球選手は高額の報酬をもらっているから10割ヒットをださないとおかしい、エラーや三振をするのはプロ失格だ!」と言ってるようなものなのです。

クリエイティブな仕事は、7割くらいの確率で、納期もしくは、クオリティでベストと言えない失敗が発生する仕事だと思ったほうがいいです。お笑い芸人がすべらないトークができる確率もおそらく似たようなものです。(確率はあくまで肌感覚です)

クリエイティブにおいては、プロであっても失敗するのが普通なのです!

クリエイティブの現場で納期を守るには理想を諦めるしか無い場合がほとんどです。野球で言えばバントみたいな打ち方の作品でしか100%に近い納期厳守は無理だと考えて下さい。クリエイティブな仕事はそのくらい良いものが必ず作れるとは限らない世界なのです。

そのうえで、AIの活用はそういったトラブルに有効に働きます。


いまの生成AIはランダムに絵を描いてくるので、そこまで安定した絵は出せません。そのままでは商業には使えません。ですがアイデアを出すのには使えます。絵描きにとって、真っ白な紙(スクリーン)が一番恐ろしいはずです。AIを活用すれば、アイデアを出して何を描くか決めることができます。このアイデア出しを絵描きがやらなくてもディレクター側で出すことも出来るのは大きいです。絵が描けなくても大量に出力して選べば、近いイメージは出るものです。

↑1時間ほどで出したデルタもん公式のツイート用イラスト

絵を描けない発注者が、こんな感じで…というサンプルをAIを使って出せるのです。

AIが完成したアートを生み出すツールではなくコミュニケーション促進のためのツールだと言うことが理解できると活用の場所が広がります。AIがなければ文字で指示するしかなかったところが、AIを使って具体的に場面の方向を、発注側が決められのです。

そのうえで、絵描きさんは限られた時間に3割くらいの確率で、ベストを目指した絵を出して、リテイクをもらって、何度も修正しながら絵を完成にもっていくことになります。発注側の失敗の確率は下がりますから、かなりの絵描きが最終の納期を守れるようになると思います。

絵描きだけでなくあらゆるクリエイティブには、100%に近い成功といえる創作物が出来上がる事は3割程度しかない!

これは、発注する人は覚えておきましょう。

プロの現場では完成後にリテイクをださないために、ラフで確認したり複数回やりとりをしてこのエラーを下げているのです。それが仕事というものです。SNSで反AIや反反AIをやってる人達が、おそらくプロではないのだろうと今回は思いました。

この論争の初出の方が精神を病んで絵描きに苦労させられたエピソードは、クリエイティブの世界では、わりと普通の出来事です。工夫してもきれいに仕事がまわることは絶対にありません。けっこう地獄のようなキツさもありますが、素晴らしい作品(ホームラン)が出るとみんな報われます。

そのうえで、コミュニケーション促進ツールとしてのAIの活用は、いまのレベルのAIでも十分に使えることも覚えておきましょう!

商業イラストは芸術と違って発注者の意図をくみとりつつ、発注者だけでなく最終的には「売れる」必要があります。「売れる」=オリジナリティが高く、発注者の意図もくみとりつつ、市場にもうけるものになります。

そんなもん簡単に出来るか!?出来ないからこそ…希少な価値があるからこそ…人は商業アートにお金を出すんじゃないの?

完璧な作品…そんなものが10割の確率で生まれることはありません。だから、コンテンツには売れるものと売れないものがあり、2割くらいのヒット作の売上が他の8割の赤字を支えているのです。

絵描きが社会不適合者なのではなく、商業イラストは、そういった失敗が当然の世界の仕事なのです。だれが悪いかを探すより、どうやって確率を上げていくかを考えて、みんなで協力して作品をつくっていくべきだと思うのですが如何でしょうか?

↑的はずれな例え話で絵描きとAI利用者を分断しようとする反AIの投稿に絶対に騙されないで下さい!万引き等はまったく発生していません。デマの拡散です。

今回も反AIはAIを叩くために、絵かきとAI利用者の分断を工作していますが、ほんとにやめてほしいと思いました!


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