「憧れはやめよう」
最近、大谷選手の「憧れるのはやめましょう」という名言をふと思い出すことがある。
先日、ずっと憧れている風景画家さんの個展に行ってきた。いつも通り、見事なグラデーションで本当に素敵だった。これまでは、「なんて素晴らしい絵なんだろう!いつか自分の部屋に飾りたいけど、今の自分には到底手が出ない。でも、いつか買える日が来たらいいなぁ」と思っていた。
でも今回、少し違う感覚が芽生えた。
「この値段がつくのは妥当だよな」と自然に思えた。
大変おこがましいけれど、「今すぐは無理でも、いつか自分もこれくらいの価値のある絵を描けるかも?」と、根拠はないけど感じた。
その画家さんを超えたいとかではなく、今も変わらず尊敬している。でも、少しずつ憧れの存在が身近に感じられるようになってきた。絵画を購入したいというより、同じ舞台に立ちたいという気持ちが芽生えたし、何十万円もする作品を見てもビビらなくなった。
ここ数年、さまざまなジャンルの展示を見に行って、絵画の大きさやその絵からのエネルギーを感じながら「この絵ならこの価値がある!」となんとなくわかるようになってきた。それは技術的なことだけじゃなく、絵から受けるインパクトや感覚で感じる。
最近、自分のアートに対する方向性もやっと定まってきたし、「アーティスト・画家としてやっていきたい!」という決意が固まったことで、展示を見る感覚も変わったのかもしれない。
以前は、雲の上の存在たちの展示を見ているような感覚だったけど、今は「同じ舞台に立ちたい」と思えるようになった。グループ展にもまだ出したことがないのに、何を言っているんだか…と思う自分もいるけれど。
実際に買ってもらえるかは別として、今の自分なら1万円くらいの価値の絵はもう描けると感じるし、5万円くらいの絵ももう少し先かなと思う。お金が全てじゃないけれど、数千円で絵を売ることは、正直プライドが許さない。その辺にある機械的なオシャレなアートではなくめっちゃ感情こもってるのに数千円なんて悔しいという気持ちもある。
美大出身でもないし、技術的にはプロの方たちには到底及ばない。それでも、技術の向上は大切にしながら、自分の好きなものを自由に、自分らしく表現したいという情熱は、アーティストとして十分に成立しているんじゃないか、と最近は感じるようになった。