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If you are…#12 Jealousy(志麻・烏羽)
「あ、これコーラ味か…あげる。」
そう言って志麻先輩は空先輩にそのロリポップを与えた。無言でもらって早速舐めるがその顔はどうにも納得のいかない様子である。なぜなら彼の愛する人が他の男とイチャイチャしているからである…そりゃわざとなのだが。
学園内のみならず巷でも有名な吉野八重が主演のドラマを3人で見ているわけだが、そこに出ている吉野の親友役─言ってしまえばチョイ役として出ているのが何を隠そう私、博多智子である。それを彼氏である空先輩がいい顔をしないのは当然と言っても差し支えないであろう。
他の異性と語らい、笑っている私を見るのが耐えきれなくなったのか、ついに空先輩は部屋を出ていってしまった。私と志麻先輩はそれを気にしないままC Mになるまで見ていた。C Mになったあたりで先輩は言ってきた。
「…空の隣にいた方がいいんじゃない?」
「空先輩、今日は特に大丈夫そうですけど。」
「…ああ、そっちの『オーバーヒート』じゃなくて感情の方の話ね。」
志麻先輩は空先輩のてんかんを『オーバーヒート』と呼んでいるけど感情の方っていうのはよくわからない。私が意味を理解できていないことを察したのか、先輩は続ける。
「今頃布団にくるまって大号泣してんじゃない?今泣いちゃうと体力めっちゃ使うから明日遅刻…というか休むかもだよ?」
なるほど、そういうことかと空先輩の自室に行くと、志麻先輩の言った通りベッドの上に白い布団の繭ができていた。でもそれは完全じゃなくてめくったりできるように端がそのままだった。だから私はそれをチラリとめくった。
すると、腕が引っ張られて繭に取り込まれたらしい。少し青暗く、壁は白くてもこもこしていた。しかも彼に抱きしめられているのであろう、身動きが取れない。
「なんで出たの?」と聞かれたので「頼まれたからです。」と答えた。回答者本人である私でも冷たいかもしれないと思ったので本人は相当だったのだろう、私は言い返された。
「僕だけ見てて、僕だけでいいでしょ?たとえ嘘だったとしても耐えられないよ。」
「…私も安易に請け負っちゃダメですよね。先輩に辛い思いさせちゃってごめんなさい。でも、私の好きな人は先輩以外あり得ないんですよ。」
彼の顔がうずくまっていた方の方が濡れて、どのみち泣かせちゃったなと軽く後悔した。でもその涙も彼の体温も温かくて、私たちはそのまま寝落ちてしまった。だからテレビの音はだんだん遠のいていった。
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