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2022年9月6日/

565ページもあったとは
そんな質量さえ忘れていた「左岸」

寝る前のお供に
3日かけて読み終わりました。

文中のテーマの
一つでもあるのだと思うけど
「不在が存在よりも濃い気配をつくる」
というのは大きく頷くところで
若い頃に読んだ時とは
明らかに違う感情が
込み上げてきて
祖母を想い、涙が溢れました。

日頃から
涙腺が崩壊している故
高校野球も見れないわたしですが
昨今の「泣かせよう」と思って
書いている物語には
「ケッ!」と
後ろ足で砂を蹴るかの如く態度で
一蹴してしまう
性格の悪さが顔を出します。

しかし、
「左岸」のように
露骨に表しはしないのに
深いところに心を揺さぶるものが
秘められている物語には弱いです。

著者の江國香織さん
露骨に言葉に表しはしないものの
お話の前編を通して
深い部分に脈々に
日ごろ見落としがちな大切なことが
「気配」として流れている。

日本を代表する作家のひとり
村上春樹さんのお話には
例え登場人物の誰が死ななくっても
「死」がまとわりついているように。

なんでもかんでも
「わかりやすさ」が重視される
昨今の日本においては
こう言う「気配」を「気配」として
描ける作家が
少ないような気がします。

どっちがいいか。。。と言うわけではなく
わたしは
そう言う「気配」で知らしめる小説が
好きだなっと
改めて思った日でした。

と言うことで
「左岸」を読んだら
「右岸」も読まざるを得ませんな。

「右岸」は、
辻仁成さんが書いているのだけど
実は、お会いしたことがあるんです。

ひょんなことで。

しかも、フランスで。
しかも、中山美穂さんと一緒に。

当時は
まだ辻さんと中山さんはご夫婦で
フランスにお住まいになっていた頃。

たまたま
フランスに渡航し
ひとりで地元の小さな小さな
レストランに入って
食事をしていたら
入ってきたのが
ご夫婦でした。

芸能人に興味はないものの
小説家には興味がありすぎ
中山さんよりも先に
辻さんが目に入り
ぬおーーーーー!と
雄叫びをあげそうになったのを
おぼています。

ご夫婦ともに
とてもいい方々で
気さくに話しかけてくださり
「旅行ですか?」
「おひとりですか?」
「何してるんですか?」と。

小さな小さな
レストランだったので
同じテーブルについている感じで
職業やらなんやらの
バッググラウンドは
関係なしに
たまたまそこに居合わせた
人間同士の会話を楽しめたのが
印象的でした。

現実社会においては
これができる人はなかなかいないので
さすが、作家だな。。。と思ったものです。

そんな縁があったわけで
辻さんの出版物のほとんどは
大方読んでいるのだけど
またしても「うっすら病」のため
読み返してみようと思います。

「右岸」を読んでから
随分と歳をとったから
また、新しい発見があるのでしょうか。

そうこうしていると
「冷静と情熱の間」
読み直す流れになりそうだなっと。。。


読書のチェーンは
一直線ではなく
曲がったり
折り返したり
どのような模様が描かれるか
わからない所もまた
楽しいものです。

そんな読書の楽しみ方に
妙に納得した日でした。


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