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できることで生きていく

僕は小さな頃から絵を描くのが好きでした。しかし僕の両親は「漫画」は全て悪と言う考絵を持っていました。3ヶ月に一度の床屋は嫌いだったけれど、そこに行けば「少年ジャンプ」や「少年マガジン」が読めるのでいつも待ち遠しかった。宿題をやるからと言って友達の家に行って「こち亀」や「ドクタースランプ」「マカロニほうれん荘」「ブラックジャック」なんかを読み漁ったのが僕の少年時代です。しかし好きな漫画があっても、いつもその続きが読めるとは限らなかった。僕はそんな気分になるが嫌だったので、いつしか自分で漫画を描くようになりました。読みたいジャンルは自分で決めればいい。そのストーリーや設定を組み立てるところから、かなり熱心に作っていきました。気がつけば中学に入ると美術部に入って絵画を真剣に勉強するようになり、高校も美術工芸が専攻できる商業高校を選んで進学しました。

いつしか絵を描いて暮らしていきたいと思うようになっていました。漫画雑誌にも投稿していました。しかしいつも二次審査止まりでした。僕は国立芸大を目指して受験しましたが、当時の共通一次試験(センター試験)で落ちてしまい、家に浪人するだけの余裕がなかったので、絶望のまま絵の道を捨て、かと言ってやりたいことがあるわけでもなく、自暴自棄になりながら職を点々として過ごしました。

その後僕は結婚して、家庭を持ち、中央市場から飲食店へと転職をするのですが、僕が料理の世界に魅了されたのは、一枚の皿に作られる料理には「美味しさ」とともに「美しさ」が求められていることでした。それは一つの作品を作るときの心の高揚感に似ていると思いました。色彩感覚や構図のあり方、一瞬で問われるセンスが、料理をまたさらに上のステージに導くものであり、それがまた一期一会で、食べてしまうことで二度とこの世には存在し得ない儚さ。そんな全てが僕の心に火をつけたのです。

僕は幼い頃から絵を描くのが好きでした。しかしいろいろあって、好きなことでは生きていくことが叶いませんでした。そんな僕は、今の僕にできることで生きていくんだ、と腹をくくりました。好きなことで生きていければ最高だと思います。でも出来ることで生きていくこともまた、最高なんです。生きていれば、そんないずれかの最高を目指すことができるんだ。それって最高やん?

最近のニュースを聞きながら、今日はそんなことを書いて見ました。

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