それはよろこび

しずかにしずかに
つみかさねられてきた
それは よろこび

うすくうすくのばされ
ほそくほそくつづいてきた
ひそかな よろこび

誰もいない静寂の道を
自分の足音を聞きながら歩いた
深夜二時

人波をかきわけて
必死で走った
午前八時

手にしていたペンを放り出し
腕を頭の後ろで組んだ
午後九時半

すべての時に
あらゆる時に
ほそくほそく
うすくうすく
しずかにしずかに
流れつづける
ひとつのリズム
音のない旋律
からだとこころが生み出す
ひそやかな調べ
単調なようで
その実 複雑で
かつ 美しい

それは よろこび

はたらくひとの
胸の奥深くに響く
くりかえされては
夢幻に揺らめく
強靭 かつ 繊細な
ひとの よろこび

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